Samsung は、最新スマートフォン「Galaxy S26 シリーズ」に搭載した動画機能「Cinematic LUT(Cine LUT)」について、開発を担った技術者 3 名へのインタビューを公式ニュースルームで公開しました[1]。これまで専門家の領域だったプロ仕様のカラーグレーディングを、誰でも手軽に扱えるようにしたこの機能は、新しい動画コーデック「APV」と外部スタジオとの連携によって形になったといいます[1][2]。

プロの色表現を誰でも扱えるように

Cine LUT は、撮影した動画の色合いを狙った雰囲気へと変換する機能です[1]。インタビューに応じた MX 事業本部の Sugon Baek 氏は、一般的なフィルターが色を単純に重ねるのに対し、Cine LUT は Log 撮影した動画をもとに映像を再構築することで、映画のような奥行きのある表現を実現すると説明しています[1]。Log 撮影は対数曲線を用いて明暗の情報を記録する方式で、特に暗部のディテールを豊かに残せる点が特徴です[1]。

Samsung Research の Bomi Kim 氏によると、Cine LUT は Log 動画向けに最適化されており、広い階調表現を生かして色や明るさを精密に組み立て直すことで、従来のフィルターでは失われがちな繊細なトーンを保持できるといいます[1]。Galaxy のスマートフォンはこれまでも Log 撮影に対応していましたが、撮影後のカラーグレーディングは一般の利用者にとってハードルの高い作業でした[1]。Kim 氏は、専門的な編集技術がなくてもプロ並みの映像表現を楽しめる体験を目指したと語っています[1]。

Baek 氏は、撮影中に映画のような仕上がりをプレビューでき、撮影後はギャラリー上で LUT を適用してそのまま共有できる、シームレスな体験を念頭に開発を進めたと述べています[1]。

新コーデック「APV」とカラーリストとの協業

Cine LUT の土台となっているのが、Galaxy S26 Ultra に初めて搭載された動画コーデック「Advanced Professional Video(APV)」です[1]。APV は高い画質を保ちながら編集時の劣化を最小限に抑えるコーデックで、スマートフォンでの映像制作の新たな基盤になると位置づけられています[1]。Samsung はこの APV をオープンソースとして公開しており、開発者向けサイトで仕様や関連資料を提供しています[3]。

色表現の設計には、世界的な映像作品のカラーグレーディングを手がけるスタジオ「U5K Imageworks」が加わりました[1]。同社の Taesik Eom CEO によると、サムスンとの協業は 2 年前、Log 動画向けの「Rec.709 LUT」に関する助言業務から始まったといいます[1]。今回のプロジェクトでは「Neutral」「Soft」「Strong」の 3 段階の強度で複数のバージョンを制作し、さまざまなシーンでテストを重ねたうえで、最終的に 4 つの中核スタイルを選んだと説明しています[1]。

開発体制は社内外にまたがります[1]。MX 事業本部が最終的なカメラ実装を、Samsung Research が映像処理の中核技術を、U5K Imageworks が映像美の設計をそれぞれ担当しました[1]。Kim 氏は、U5K が示した色表現の方向性をもとに、異なる撮影環境でも一貫した性能を発揮できるよう定量的な基準で検証を繰り返し、創造的な意図と技術的な品質が高い水準で一致するまで改良を重ねたとしています[1]。

4 つのスタイルと開発で直面した課題

Galaxy S26 シリーズの Cine LUT には、4 つのスタイルが用意されています[1]。Baek 氏は、人気映画のジャンルに共通する映像表現を分析し、高コントラストな「Blockbuster」、みずみずしい「Coming-of-age」、温かみのある「Romance」、ムーディーな「Thriller」の 4 つを導き出したと述べています[1]。Eom 氏は、屋外や都市風景にはコントラストの強い Blockbuster、カフェや Vlog のような柔らかい場面には Coming-of-age が向くなど、シーンによって適したスタイルが異なると補足しています[1]。

開発で大きな課題となったのは、撮影環境による色のばらつきでした[1]。Kim 氏は、多様な環境での性能を検証するために大規模なデータセットが必要だったとし、自然光や室内照明、昼夜といった実際の条件下でテストを重ねたと振り返ります[1]。Baek 氏も、ライティングや露出が刻々と変わるなかで一貫した自然な色を保つことは難しく、利用者の感覚的な好みと客観的な画質を両立させるために継続的な検証が欠かせなかったと語っています[1]。

利用者の反応について Baek 氏は、当初は単なる動画エフェクトのひとつとして受け取られることを懸念していたものの、実際には予想を上回る反響があり、シーンごとにスタイルを使い分ける利用者も増えていると述べています[1]。

まとめ

Galaxy S26 シリーズの Cine LUT は、APV コーデックという基盤と、社内研究部門・外部スタジオの連携によって生まれた機能です[1]。プロの技術が必要だった動画制作のハードルを下げ、誰もが手軽に映画のような映像表現を楽しめるようにする狙いがうかがえます[1][2]。

出典:https://news.samsung.com/jp/interview-make-every-moment-cinematic-how-cinematic-lut-transforms-video-on-the-galaxy-s26-series-2

出典:https://news.samsung.com/global/interview-make-every-moment-cinematic-how-cinematic-lut-transforms-video-on-the-galaxy-s26-series

出典:https://developer.samsung.com/mobile/apv.html