TCL傘下のRayNeoが、映像視聴に振り切ったARグラス「RayNeo GT Max」を9月4日から販売しています。視野角59度で267インチ相当の大画面を目の前に置き、頭の動きに画面を追従させる3DoFを本体だけで処理します。価格は399ドル(約6万2,000円)。上位のGT Maxと下位のGTの2機種構成で、専用ストリーミング端末と組み合わせたときだけDolby Visionが有効になる点が、この製品のいちばん変わったところです。
Dolby Visionは単体では有効にならない
RayNeoはGT Maxを「世界初のDolby Vision対応ARグラスシステム」と表現していますが、正確に読むと条件が付いています。Dolby Visionが使えるのは、同社の携帯型ストリーミング端末「Pocket TV Pro」と組み合わせたときだけです。グラス単体のHDR処理は、SDR映像をリアルタイムでHDR風に持ち上げるAI HDRという別の仕組みになります。
Pocket TV ProはGoogle TVを積んだ小型の再生機で、RayNeoの公式ストアでは199ドル(約3万1,000円)で扱われています。ストレージの拡張にも対応し、グラス側の映像ソースとして働きます。同社はFAQで、GT Maxを使うためにPocket TV Proが必須ではないと明記しています。スマートフォンやノートPCを直接つないでも映像は映り、Dolby Visionという1機能だけが追加購入の先にある、という整理です。
「世界初」という言葉に引かれて買うと、追加でおよそ3万円かかる構図なので、そこは押さえておいたほうがよさそうです。
59度と267インチを支える二つのチップ
表示部は0.6型のマイクロ有機ELで、解像度は1920×1080ドット。2D表示で120Hz、3D表示で60Hzに対応します。視野角は59度で、RayNeoは従来の47度から70パーセント広い表示面積になったと説明しています。仮想画面の大きさは227インチ、267インチ、307インチから選べる仕様で、標準的な案内では267インチが使われています。
明るさは、画面を空間に固定するピン留めモードで336ニト、それ以外のモードで1,200ニトとされています。コントラスト比は20万対1、色域はDCI-P3を98パーセント、sRGBを145パーセントカバーし、色差はデルタEが2未満です。角度あたりの画素密度は38PPD。目の負担に関わる調光は3840Hzの高周波方式を採用しています。
処理は2つのチップで分担します。映像処理を担う「Vision 4000」と、頭の向きを追う3DoF専用の「Zone 360」です。空間の扱い方は、視線に画面が付いてくるFollow、揺れを吸収するSteady、空間に画面を固定するPinnedの3種類。単純に映像を目の前に貼り付けるだけのグラスとは、ここが分かれます。2D映像を3Dに変換する機能も入っています。
Bang & Olufsenが詰めた4スピーカー
音まわりは、Bang & Olufsenと共同で調整したレーストラック型の4スピーカー構成です。背中合わせに配置する構造を業界初としており、頭の動きに連動する立体音響に対応します。
面白いのは、音を大きく出すことより漏らさないことに力を入れている点です。Whisper Mode 2.0という機能があり、RayNeoの説明では、およそ1.5メートル離れると音の内容が聞き取りにくくなる設計だとしています。音量ロッカーの長押しで、標準、Whisper、立体音響の3モードを切り替えます。逆に音を耳へ届けたい場面向けには、Sound Tubeという別売アクセサリーが用意されています。
76グラムの本体と、視力補正の考え方
本体重量は仕様表で76グラム。ただし同じ製品ページの紹介文では78グラムと書かれており、公式サイト内でも数字が揃っていません。実重量は実機レビューを待つ必要があります。素材はNCVM複合仕上げにサンドブラスト加工を組み合わせたユニボディで、ノーズパッドは高さを調整できます。
目の幅への対応が細かく、瞳孔間距離に応じてS(64ミリ未満)、M(64から67ミリ)、L(67ミリ超)の3サイズが用意されています。RayNeoはスマートフォンで瞳孔間距離を測るためのウェブツールを公開しており、購入前にそこで測って選ぶ流れです。
一方で、近視の度数を本体側のダイヤルで調整する仕組みは持ちません。視力補正は度付きインサートレンズで対応する方式で、RayNeoは提携先のLensologyでの作製を案内しています。本体にジオプター調整を内蔵する競合製品と比べると、追加の手間と費用が発生します。
つなぐ機器と、GTとの違い
接続はUSB-CのDisplayPort Alt Mode経由です。対応機器として、iPhone 15から17シリーズ(16e、17e、Airは非対応)、Galaxy S8からS25シリーズ、USB-C対応の第10世代以降のiPad、2015年以降のMacBook、USB-C対応の携帯ゲーム機やノートPCが挙げられています。PS4、PS5、Xbox、Nintendo SwitchはHDMIアダプター経由、SwitchとSwitch 2はバッククリップが必要です。Lightning端子の機器はApple純正の変換アダプターが別途要ります。
同時発売の下位モデルGTは、視野角46度、仮想画面201インチ、瞳孔間距離は64ミリ固定で、価格は299ドル(約4万7,000円)です。リフレッシュレート120Hz、明るさ1,200ニト、Bang & Olufsenの音響調整、3DoF、そしてPocket TV Pro併用時のDolby Vision再生は2機種で共通します。差は視野の広さと画面サイズ、それに目の幅への合わせ込みができるかどうかに集約されます。
なお、GT Maxの通常価格は429ドル(約6万7,000円)で、現在は30ドル引きの399ドルという扱いです。日本での取り扱いについて、現時点で個別の案内は出ていません。
まとめ
RayNeo GT Maxは、視野角59度と267インチ相当の表示、20万対1のコントラスト、Bang & Olufsen監修の4スピーカーを76グラムにまとめた映像視聴向けARグラスです。Vision 4000とZone 360の2チップで3DoFを本体処理し、Follow、Steady、Pinnedの3モードを使い分けられます。ただし目玉のDolby Visionは199ドルのPocket TV Proとの併用が前提で、単体ではAI HDRにとどまります。399ドルという価格をどう見るかは、この追加投資まで含めて考えるかどうかで変わってきそうです。
※1ドル=156円換算(2026年9月6日時点)
