無料の動画編集ソフト「OpenShot」がバージョン4.0になりました。2026年8月30日に公開されたもので、4月の3.5.1以来のメジャー更新にあたります。画面やWebカメラの録画をソフト内で完結できるようになり、色調整の専用画面と、被写体を自動で切り抜くマスク機能も加わりました。ライセンスはこれまで通りGPLv3で、Windows、macOS、Linuxのいずれでも無料で使えます。

撮る・編集する・仕上げるが1本にまとまった

これまでのOpenShotは、素材を用意してから読み込む前提の作りでした。4.0で追加された録画用の画面では、マイク、デスクトップ、Webカメラ、システム音声を選んで、そのままプロジェクトに取り込めます。

面白いのは、有効にした音源や映像がそれぞれ別のファイルとして保存される点です。マイクの声とシステム音声、画面とWebカメラは分かれたクリップになるので、録り終わってから「Webカメラの位置だけずらす」「自分の声だけ音量を下げる」といった調整が効きます。画面とWebカメラを同時に録れば、角丸のワイプ配置を自動で組んでくれます。

録音中はマイクのレベルメーターやWebカメラのプレビューを確認でき、仮のクリップがタイムラインに伸びていく様子も見えます。既存のプロジェクトを再生しながらマイクを録れるため、ナレーションや実況の収録にも向きます。クリップを右クリックして音声の録音を選べば、そのクリップの先頭に再生位置を合わせて録音の準備までしてくれます。

録画の経路はOSごとに用意されており、Windows、macOS、LinuxのX11に加えて、LinuxのWaylandではPipeWire経由で動きます。選べる範囲や画面、システム音声の扱いは環境と権限によって変わります。

色の作り込みがソフト内で完結する

新しく用意されたカラー用の画面には、大きめのプレビューとクリップのプロパティ、カラーホイール、そしてビデオスコープが並びます。入口は分かりやすく、クリップを右クリックしてルックから色の調整を選ぶだけで、必要なパネルが一式開きます。

中心になるのが新エフェクトのColor Gradeです。露出、コントラスト、色温度、ティント、ハイライト、シャドウ、彩度、自然な彩度といった補正項目に加えて、全体、シャドウ、中間調、ハイライトそれぞれに独立したカラーホイールを持ちます。カーブは全体とR、G、Bの4本を編集でき、ハンドルを動かしてベジェで滑らかにつなぐこともできます。業界で標準的に使われる.cube形式のLUTも読み込め、強度を調整して部分的に混ぜる使い方ができます。これらのパラメーターはすべてキーフレーム化できるので、撮影中に光が変わったカットを追いかけて補正する、といった処理も可能です。

スコープは輝度波形、ヒストグラム、RGBパレード、ベクトルスコープの4種類。それぞれに領域指定のツールが付いていて、顔や空、製品といった一部分だけを解析できます。ベクトルスコープには肌色の基準線が引かれており、色かぶりの発見に役立ちます。手早く始めたい場合は、自動コントラストやシャドウ持ち上げ、ウォームアップといったプリセットから入る手もあります。これらは同じColor Gradeを呼び出すだけなので、後から中身を細かく詰められます。

被写体マスクは手元のPCだけで動く

動く被写体を切り抜く作業は、本来ならフレームごとにマスクを描く根気仕事です。4.0のObject Maskは、被写体の上に数点、その周囲に数点を打つだけで選択範囲を作り、そのままクリップ全体を追跡します。形が大きく変わる場面では、そのフレームで点を足して補正します。

注目したいのは処理の場所です。使われるのはYOLO、EfficientSAM、Cutieといった機械学習モデルをONNX形式に変換したもので、必要になった時点でダウンロードして自分のPC上で実行します。クラウドへの送信も、AIサービスのアカウントも、追加のサブスクリプションも必要ありません。素材を外部にアップロードせずに済むという意味では、扱いに気を使う映像を編集する人にとって現実的な選択肢になります。

生成したマスクは、そのままエフェクトとして表示するほか、ぼかしやモザイク、Color Gradeなど他のエフェクトの適用範囲としても使い回せます。反転すれば背景側だけを加工できます。物体検出の機能も併せて更新され、ダウンロード可能なYOLOv5のONNXモデルやセグメンテーションマスクに対応しました。

新エフェクトは10種類、処理速度にも手が入った

追加されたエフェクトは10種類です。音を波形やバー、放射状のパターン、スペクトル、VUメーター風の表示などに変換するAudio Visualization、音の強さに反応して色を重ねるBeat Sync、35mmや16mm、Super 8といった質感を再現するFilm Grain、ノイズを抑えるDenoise Image、ドロップシャドウのShadow、光のにじみを足すGlow、別の映像で歪ませるDisplacement Map、カウントアップとカウントダウンを作るTimer、そして前述のColor GradeとObject Maskです。

速度面では、3.5.1との比較でぼかしが61.8パーセント速くなり、シャープが12.8パーセント、タイムラインの描画が3.4パーセント、変形を含むタイムラインのテストでは5.1パーセント改善したと報告されています。ぼかしの数字が目立ちますが、タイムラインの描画はクリップの編集からプレビュー更新、サムネイル表示、拡大縮小まで編集中のほぼ全ての操作が通る経路なので、数パーセントでも体感に効いてきます。音の可視化についても、10種類すべてが一般的な24、30、60fpsのプロジェクトを上回る速度で処理され、負荷の高いモードでも毎秒170フレームを超えたとしています。

土台の作り替えも同時に進んだ

見た目に現れにくい部分では、タイムラインが完全にネイティブのQt実装へ移行しました。以前のWeb技術ベースの部品が外れたことで、拡大縮小の引っかかりが減り、クリップやキーフレームの見え方も整理されています。ルーラーのタイムコードは直接クリックして数値を打ち込めるようになりました。

Qt 6とPySide6への対応も広がり、新しめのLinuxディストリビューションになじみやすくなっています。土台となるライブラリのlibopenshotとlibopenshot-audioはいずれもバージョン1.0.0に到達しました。さらにファイルアクセスや描画、ARM64の大きなメモリ空間に関わるAndroid向けの互換対応もコードベースに入っています。ただしAndroid版は4.0の対応プラットフォームとして発表されたわけではなく、時期の公表もありません。

まとめ

OpenShot 4.0は、録画、色の作り込み、被写体の切り抜きという、これまで別のソフトに任せがちだった工程を1本のアプリに引き込んだ更新です。特にマスク生成が手元のPCで完結し、アカウントも課金も不要という設計は、無料の動画編集ソフトとしては珍しい立ち位置になります。同時にタイムラインの土台も入れ替わっており、機能追加と足回りの整備が同じタイミングで進んだ形です。