Midea Groupのスマートホーム事業に属するMideaが、家全体を1つのAIで束ねる仕組み「SMART MASTER」を公開しました。9月5日にベルリンで開幕したIFA 2026で、同社ブースの中心に据えられています。単体で賢い家電を並べるのではなく、エアコンや冷蔵庫、オーブンを共通のAIエージェントの下にぶら下げて、住まい全体を1つの相手として扱わせるという発想です。
話しかける場所を家電そのものにした
SMART MASTERの中核はAI Agentと呼ばれる対話部分です。対応言語は140、音声を拾う距離は8メートル、応答までは0.4秒とされています。会話を続けるたびにウェイクワードを言い直す必要がなく、そのまま指示を重ねられる点が特徴です。
注目したいのは、声の入り口をスマートスピーカーではなく家電の側に置いたことです。エアコン、冷蔵庫、ビルトインオーブンにマイクと応答機能が組み込まれており、その部屋にいるまま話しかけられます。もちろん専用アプリや車載システム、スマートスピーカー、スマートフォンの音声アシスタントからも同じエージェントを呼び出せるため、外出先と自宅で会話の続きが途切れにくい構成になっています。
ハブ機器を1台買い足す方式では、その1台の設置場所が使い勝手を決めてしまいます。冷蔵庫やエアコンのように各部屋に散っている機器を入り口にすれば、家の中を移動しても取りこぼしが減るという狙いが見えます。
4つのエージェントが役割を分担する
SMART MASTERは用途ごとに4つのエージェントを用意しています。
Efficiency Agentは電気の使い方を受け持ちます。消費の推移、太陽光発電の寄与、電気代、削減できた排出量を1つのダッシュボードにまとめ、発電量が多い時間帯には洗濯機やロボット掃除機を自動で回します。発電が落ちる時間帯は、電力料金が安い時間へ作業をずらします。欧州では電気料金の上昇と排出削減の圧力が重なっているため、この機能を前面に出したのは市場の事情に沿った判断と言えます。
Comfort Agentは帰宅時の環境づくりを担当します。車が近づくとWelcome Homeモードが動き、エアコン、加湿器、洗濯乾燥機がまとめて準備に入ります。エアコンはミリ波レーダーで人の位置を追い、風の向きを合わせます。加湿器は湿度のバランスを取り、洗濯側は洗剤量の自動調整とセンサーによる乾燥制御を行います。
Health Agentは食事側です。声で頼むと冷蔵庫が中身を読み取り、鮮度を踏まえて献立を提案し、その内容が調理家電へ引き継がれます。ビルトインオーブンはSmart AI Vision Systemで食材を認識し、加熱中の温度を見張ります。加熱の開始や停止、温度変更、モード選択は声で操作できます。IHクッキングヒーターとレンジフードは調理の状況に合わせて連動し、2室構造のエアフライヤーは2品を同時に仕上げます。
写真とビデオ通話で不具合を見てもらう
4つ目のService Agentは、家電の困りごとを引き受ける窓口です。コーヒーメーカーがエラーを出したときは、写真かリアルタイムのビデオ通話で状態を見せると、図解付きの手順が返ってきます。買い物のあとにレシートを撮れば食材が読み取られ、鮮度の管理と冷蔵庫の在庫が更新されます。衣類の洗濯表示をスキャンすれば、適した洗濯コースが設定されます。
Mideaはリアルタイムのビデオ通話に対応したAIアシスタントは業界初だとしています。取扱説明書を探し回る時間を減らす方向の機能で、文章で症状を説明しにくい不具合ほど効いてくる仕組みです。
EAGLESで動くロボットも同じ枠組みに入る
SMART MASTERの展示には、Midea Robotの実演も含まれます。会場では食器や食器かごを扱うロボット、ポップコーンを作って来場者に手渡すロボット、そして観客に手を振って踊る二足歩行ロボットが動いています。
これらはEAGLESと呼ばれるシステムアーキテクチャの上に構築され、4つのマルチモーダル基盤モデルで動きます。想定用途は洗濯、キッチン作業、掃除に加えて、見守りやケア、家全体の制御まで含まれます。家電を賢くする話と、身体を持ったロボットの話を1つの枠組みに置いている点が、他社のスマートホーム構想との違いになりそうです。
一方で、公開されているのは機能と展示内容が中心で、欧州での提供時期や対応機種の範囲、既存製品がどこまで恩恵を受けるのかは明らかにされていません。ブースはメッセベルリンのホール5.1に置かれています。
まとめ
MideaのSMART MASTERは、140言語・8メートル・0.4秒応答のAI Agentを土台に、電力、快適性、食事、サポートの4領域をエージェントに分けた家全体の制御構想です。声の入り口をエアコンや冷蔵庫に埋め込んだ設計と、リアルタイムのビデオ通話でサポートまで踏み込んだ点が実用面での見どころになります。EAGLESで動くロボットまで同じ構想に含めている一方、提供時期や対応範囲は今後の発表を待つ段階です。
