Appleは2026年5月、公式ニュースルームで、インドの映画祭団体Mumbai Academy of Moving Image(MAMI)と取り組む映像制作プログラム「MAMI Select: Filmed on iPhone」の最新の成果を紹介する記事を公開しました[1]。今年は4人の新進気鋭の映像制作者がiPhone 17 Pro Maxを使って短編作品を制作し、完成した作品はいずれもMAMIのYouTubeチャンネルで公開されています[1]。スマートフォンのカメラがどこまでプロの映像制作に踏み込めるのかを示す事例です。

iPhoneで短編映画を撮る「MAMI Select」プログラム

「MAMI Select: Filmed on iPhone」は、MAMIが主催する映像制作プログラムです[1]。今年は映像制作者のシュリーラ・アグラワル、リテシュ・シャルマ、ロビン・ジョイ、ドリティスリー・サルカールの4人が参加し、それぞれが独自のテーマで短編作品を手がけました[1]。

メンターには、インド映画「盲目のメロディ〜インド式殺人狂騒曲〜」(2018年)の脚本家兼監督であるシュリラーム・ラガヴァンをはじめ、チャイタニヤ・タームハネー、ディバーカル・バナルジー、ギートゥ・モーハンダースが名を連ねます[1]。いずれもヴェネツィア国際映画祭やサンダンス映画祭などで評価されてきた監督です[1]。

MAMI Mumbai Film Festivalのディレクターであるシヴェンドラ・シン・ドゥンガルプルは、昨年の参加作「Seeing Red」がYouTubeで100万回を超える再生を記録し、「Kovarty」がバンガロール国際短編映画祭で最優秀短編映画賞を受賞したことを挙げ、プログラムには新しい世代の映像制作者を生み出す波及効果があると説明しています[1]。

ProRes RAWや8倍光学ズームが映像表現を広げる

制作に使われたのは、Appleの最上位スマートフォンであるiPhone 17 Pro Maxです[1]。各作品では、この機種が備えるプロ向けの映像機能が場面に応じて使い分けられています。

アグラワルの「11.11」は、街灯の下や薄暗い浜辺など、撮影が難しい光の環境が中心となる作品です[1]。チームはProRes RAW(編集時に階調や色を大きく追い込める高品質な収録形式)でデータを記録し、後処理でISO感度を引き上げることで、暗いシーンの細部を残しながら明るくくっきりとした映像に仕上げました[1]。内蔵の手ぶれ補正を生かし、俳優のすぐ横を滑るように移動したり、浜辺の岩を登りながら撮影したりする動きも実現しています[1]。

シャルマの「She Sells Seashells」では、現実と登場人物の心情を行き来する場面で、背景のぼけ方を切り替えられるシネマティックモードを活用しました[1]。さらに、必要な音に焦点を合わせて風や雑音を抑えるオーディオミックス機能で、海辺やカーニバルの喧騒の中でも狙った音を残しています[1]。

ジョイの「Pathanam」は、湖上のボートなど揺れの大きい環境での撮影が多い作品です[1]。手持ちでも安定した映像が得られるアクションモードを使い、過酷な撮影スケジュールの中でも、本体内部の熱を逃がすベイパーチャンバー(蒸気を使う冷却構造)のおかげで動作が安定していたといいます[1]。サルカールの「Kathar Katha」では、200mm相当の8倍光学ズームを使い、登場人物の表情や細部に深く寄った映像で感情を描き出しました[1]。

MacやiPad Proと組み合わせた制作の流れ

今回のプログラムでは、撮影だけでなく編集や仕上げの工程でもAppleの製品が使われました[1]。映像制作者たちは、M5チップを搭載したMacBook ProやiPad Proを併用し、現場で撮った素材をその場で編集する流れを取り入れています[1]。

シャルマは、内蔵マイクで周囲の音を録音してすぐにファイルを転送し、MacBook Proで編集する様子を「移動スタジオのよう」と表現しました[1]。現場では、Macの画面をiPadに拡張するSidecar機能を使い、iPad Proを2台目のモニターとして編集内容を確認する場面もありました[1]。

ジョイの作品では、Adobe Premiere ProのAIを使ったマスクトラッキング(対象を自動で追って切り抜く機能)を活用し、約3か月かかると見込まれた仕上げ作業を3週間に短縮できたといいます[1]。MacBook ProのGPUに搭載されたNeural Acceleratorsにより、こうしたAI処理を手元の端末で高速に実行できた点が背景にあります[1]。

大がかりな照明機材を用意しにくいインディーズの制作現場でも、日常的に使えるiPhoneとMacだけで撮影から仕上げまでをこなせる点は、参加した制作者が共通して挙げた利点です[1]。

まとめ

「MAMI Select: Filmed on iPhone」は、iPhone 17 Pro MaxとMacを組み合わせることで、限られた予算や機材でもプロの映像制作に踏み込めることを示すプログラムです。ProRes RAWやアクションモード、8倍光学ズームといった機能が表現の幅と現場の自由度をどこまで広げられるのかを、4本の短編作品が具体的に伝えています。完成した作品は、いずれもMAMIのYouTubeチャンネルで視聴できます。

出典:https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/05/how-filmmakers-are-redefining-the-art-form-with-mami-select-filmed-on-iphone/