ベンチマークソフトの定番として知られるGeekbenchが、3年ぶりの大型更新となる「Geekbench 7」を公開しました。開発元のPrimate Labsは、マルチコアテストの考え方を根本から作り直し、GPUテストは機械学習とコンテンツ制作向けの内容へ刷新しています。NVIDIAのCUDAが対応APIに復帰し、スコアの基準となる参照機もAMDのRyzen 7 7700へ切り替わりました。

3年ぶりの世代交代、個人利用は引き続き無料

Geekbench 7は2026年7月23日に公開されました。Geekbench 6の登場から約3年を経ての世代交代で、Android、iOS、Windows、macOS、Linuxの5つのプラットフォーム向けに同時提供されています。個人利用については、これまでと同じく無料のまま使い続けられる方針が示されています。

Geekbenchは、スマートフォンからワークステーションまでを同じ指標で比べられる点が支持されてきたソフトです。それだけに、テスト内容の入れ替えは新しい端末を評価するときの物差しそのものが変わることを意味します。今回の更新は、その物差しを2026年の使い方に合わせ直す作業と捉えると分かりやすいでしょう。

マルチコアの採点方法を作り直した

今回もっとも大きく変わったのがマルチコアテストです。Primate Labsは、現実のアプリケーションでは必ずしもすべての処理が並列化されているわけではないのに、ベンチマーク上で無理に並列実行させるとスコアがゆがみ、端末の実力を正しく示せなくなると説明しています。

そこでGeekbench 7では、実際のアプリで並列動作する処理だけをマルチスレッドで走らせる方式に改めました。分かりやすい例として挙げられているのがHTML5ブラウザーのテストです。Webブラウザーはシングルスレッド寄りの処理が中心であることから、このテストはマルチスレッド側の集計から外されています。コア数の多さがそのままスコアに直結する構図を見直し、実際の作業でどれだけ速いかを反映させる狙いです。

メディア処理とゲーム物理のテストを追加

CPU側には、音声と映像の符号化・復号・処理を測る新しいメディア系ワークロードが加わりました。内容はビデオ会議や画面共有、日常的なコンテンツ視聴といった場面を想定したもので、次の3つが用意されています。

  • AV1コーデックによる画面共有映像のエンコード(ビデオ会議アプリの画面共有機能を想定)
  • Opusコーデックによる音楽と音声の圧縮(ボイスメモやポッドキャストアプリを想定)
  • Whisper音声認識モデルで字幕を生成しながらの映像・音声デコード(自動字幕を有効にした再生を想定)

このほか、ゲームでよく使われる物理演算エンジンJolt Physicsを用いた「Game Physics」ワークロードが新設されました。写真編集のテストは実際の編集操作に近い内容へ拡張され、写真ライブラリー系のテストはJPEG XLやDNGといった比較的新しい画像形式の取り込みと処理に対応しています。

扱うデータそのものも重くなりました。ファイル圧縮のテストではソースコードやオブジェクトコード、テキスト文書など内容の異なるアーカイブが増え、PDFビューアーのテストでは公園の地図から技術文書、学術論文まで種類の幅が広がっています。開発者向けや画像処理のテストでも素材の数と形式が増やされ、Geekbench 6より負荷の高い構成になっています。

GPUテストは機械学習と制作向けへ、CUDAが復帰

GPUベンチマークは、いまGPUの性能を左右している機械学習とコンテンツ制作に軸足を移しました。機械学習側では、映像から顔を追跡してリアルタイムでフィルター効果をかける処理、機械学習による画像の高解像度化、ビデオ会議の映像で背景をぼかす処理が測定対象になります。SNSアプリの顔フィルターや制作ツールの超解像、仮想背景といった機能をそのまま模した構成です。

制作向けには、RAW画像の現像、LUTを使った映像のカラーグレーディング、パストレーシング、流体シミュレーションといった画像編集・生成系のワークロードが新たに加わりました。

対応APIの面で目を引くのは、要望の多かったCUDAの復帰です。OpenCL、Vulkan、Metalに並んでCUDAが選べるようになり、NVIDIA製GPUを実際の重い用途で使われているAPIのまま計測できます。GPUをAI用途で回す人が増えた現状を踏まえると、実態に近い数字が取りやすくなる変更と言えそうです。

基準機はRyzen 7 7700に、旧バージョンとスコアは比べられない

スコアの土台となる参照機も入れ替わりました。Geekbench 6ではIntelのCore i7-12700が基準でしたが、Geekbench 7ではAMDのRyzen 7 7700を搭載したシステムが2,500点になるよう校正されています。基準点が2,500点であるため、たとえば5,000点は参照機のおよそ2倍の性能という読み方になります。

注意したいのは、この基準機のスコアはあくまで校正用の値であり、手元のRyzen 7 7700搭載機が必ず同じ点数を出すという意味ではない点です。そしてテスト内容と校正が同時に変わったことで、Geekbench 6とGeekbench 7のスコアを直接比べることはできません。過去のレビュー記事や端末データベースの数字と並べて語ると誤った結論を導きやすいため、世代をまたいだ比較は避ける必要があります。

Pro版は8月6日まで20パーセント引き

Geekbench 7本体は個人利用なら無料で、公開を記念して上位版のGeekbench 7 Proが8月6日まで20パーセント引きで販売されています。macOS、Windows、Linuxに対応する1ユーザー向けの商用ライセンスで、通常99ドル(約1万6000円)が79ドル(約1万3000円)になります。複数台の端末をまとめて管理する立場の人や、計測を業務で使う人向けの選択肢です。

※1ドル163円換算(2026年7月25日時点)

まとめ

Geekbench 7は、マルチコアの採点方法を実際のアプリの挙動に合わせて作り直し、AV1やOpus、Whisperを使ったメディア系ワークロードとJolt PhysicsによるGame Physicsを追加した大型更新です。GPU側は機械学習と制作向けの処理へ内容を寄せ、CUDAが対応APIに復帰しました。基準機はRyzen 7 7700搭載システムの2,500点へ切り替わり、Geekbench 6とのスコア比較はできません。新しい端末の評価軸が変わる更新であり、今後しばらくは公開されるスコアがどのバージョンで測られたものかを確かめる習慣が必要になりそうです。