中国の工業情報化部が、2026年から2030年までの情報通信産業の5か年計画を公表しました。2030年時点の知能計算能力(AI向けの計算資源)を9,800EFLOPSまで引き上げ、情報インフラへの累計投資を3.8兆元(約86兆円)とする数値目標が並びます。直近の実測値からは4倍以上の積み増しが必要になる計算です。
13の数値目標で2030年の姿を固定する
今回の計画は、2030年までに新世代の通信網を全面的に作り上げることを掲げ、13項目の主要指標を置いています。目立つのは次の4つです。
情報通信産業の売上を4.1兆元(約93兆円)に伸ばすこと。情報インフラへの累計投資を3.8兆元(約86兆円)とすること。知能計算能力を9,800EFLOPSに到達させること。そして5Gの利用者普及率を95パーセントに引き上げることです。基地局は人口1万人あたり50局(5G-Aを含む)、電気通信事業の取扱量は年平均7パーセント成長という数字も添えられています。
※1人民元=22.8円換算(2026年9月8日時点)
EFLOPSは1秒あたり100京回の浮動小数点演算を表す単位です。数字だけでは規模がつかみにくいのですが、後述する現状値と並べると、この5年で何をしようとしているのかが見えてきます。
現状は2,185EFLOPS、1年で2.8倍に膨らんだ
工業情報化部によると、中国の知能計算能力は2026年6月末時点で2,185EFLOPSでした。前年同期比では177パーセント増、つまり1年で2.8倍近くまで膨らんだ計算になります。加速カードを1万枚以上そろえた知能計算施設は52か所に達しています。
国家データ局の集計では、7月末には約2,450EFLOPSまで伸びていました。それでも9,800EFLOPSという目標に届かせるには、6月末の水準を4倍以上に積み増す必要があります。伸び率だけを見れば射程内にも見えますが、成長率は規模が大きくなるほど鈍るのが普通です。ここからの5年は、これまでとは違う難度になります。
1万枚と10万枚、2種類のクラスタを使い分ける
計画は、加速カードを1万枚規模で束ねたクラスタと、10万枚以上を束ねたクラスタを秩序立てて配備する方針を示しました。あわせて、用途ごとに設計した推論向けの計算設備も整えるとしています。学習と推論で求められる性質が違うことを前提に、施設の側を作り分けるという発想です。
もう1つ明記されたのが、国産の計算チップに合わせてインフラを適応させる取り組みを強めることです。輸出規制が続くなかで、手に入る半導体を前提に運用まで含めて最適化していく方向がはっきりと示された形になります。
計画全体では、情報インフラ整備やネットワーク・データセキュリティなど6つの領域にまたがる26の重点任務を並べています。適切な時期に6Gの商用サービスを始めること、全国一体の計算力ネットワークの構築を加速することが、そのなかでも名指しで強調されました。産業向けの詐欺対策研究拠点の設置や、AIと製造業の融合を企業に促す施策も含まれます。
「東数西算」の延長線上にある
こうした計算資源の集約は、2022年に始まった「東数西算」の続きにあたります。電力を大量に食う処理を、人口が密集する東部から、土地が安く電力に余裕のある西部へ移すという構想です。中国はその後、8つの国家計算ハブ、10のデータセンター群、計算設備と電力供給の連携に取り組む3つの地域からなる網を組み上げてきました。
土台となる通信網はすでにかなりの水準にあります。ギガビット級の光ネットワークは全ての県で利用でき、5Gは全ての鎮と、行政村の95パーセント超をカバーしています。今回の計画は、この上に計算資源をどう積むかという話だと読めます。デジタル中国の枠組みでは、デジタル経済の中核産業が生む付加価値をGDPの12.5パーセントまで引き上げる目標も置かれています。
まとめ
工業情報化部の5か年計画は、AI向けの計算能力を国の情報インフラの主要指標として明確に位置づけました。9,800EFLOPSという数字は、2026年6月末の実測値の4倍以上にあたります。1万枚級と10万枚級のクラスタを作り分け、国産チップに合わせて運用を詰め、電力の都合で立地を選ぶ。掲げられた項目を並べると、計算資源の確保が半導体だけの問題ではなくなっていることがよく分かります。3.8兆元という投資額をどこまで実際に流し込めるかが、5年後の到達点を左右しそうです。
※サムネイル画像はAI生成のイメージです
