ASUS はドイツ・ベルリンで開かれる IFA 2026 に合わせ、NVIDIA の新型スーパーチップ「RTX Spark」を搭載したクリエイター向け PC として、ノート PC「ProArt P16」「ProArt P14」と手のひらサイズのミニ PC「ProArt GR1X」を9月2日に発表しました。最大128GB のユニファイドメモリと最大1ペタフロップスの AI 性能を備え、クラウドに頼らず手元の PC で大きな AI モデルやエージェントを動かすことを狙った製品群です。ProArt P16 は厚さ12.9mm・重さ1.77kg と、16インチの ProArt として歴代最薄をうたいます。
「AI エージェントを手元で動かす」ための Windows PC
RTX Spark は、NVIDIA が2026年5月末の COMPUTEX で公開した PC 向けのスーパーチップです。Blackwell 世代の RTX GPU(6,144コア)と最大20コアの Grace CPU を NVLink-C2C で直結し、FP4 精度に対応する第5世代 Tensor コアを載せています。ASUS はこの RTX Spark を積んだ ProArt シリーズを「パーソナルエージェントのために作られた世界初の Windows PC」と位置づけています。
ASUS が挙げる利点は3つです。1つ目はコストで、従量課金のクラウドと違い、手元の PC なら AI エージェントを何度でもトークン制限なしに走らせられること。2つ目はプライバシーで、プロンプトやファイル、制作素材を端末の外に出さずに済み、オフラインでもローカルモデルが動き続けること。3つ目はカスタマイズで、用途ごとにモデルを選び、プロンプトや微調整で振る舞いを変え、自分専用のスキルやツールをそろえられることです。
性能面では、最大1ペタフロップスの AI 演算と最大128GB の広帯域ユニファイドメモリにより、1,200億パラメーター級の LLM の実行、90GB を超える 3D シーンのレンダリング、4K の AI 動画生成をローカルで扱えるとしています。従来の PC で制約になりがちだったメモリー容量の壁を、CPU と GPU でメモリーを共有する構成で乗り越える考え方です。
ProArt P16/P14 は「歴代最薄・最軽量」の ProArt ノート
ノート PC の2機種は、RTX Spark の統合度の高さを活かして薄さと軽さを追求しています。16インチの ProArt P16 は厚さ12.9mm、重さ1.77kg で、前世代より14パーセント薄く、9パーセント軽くなりました。ASUS によれば RTX Spark 搭載の16インチ機として最薄で、ProArt の16インチとしても歴代最薄です。14インチの ProArt P14 は厚さ13.9mm、重さ1.48kg で、こちらは ProArt ノートとして歴代最軽量になります。バッテリーは P16 が99Wh、P14 が90Wh と大容量で、外出先での長時間の制作作業を想定しています。
ディスプレイは ASUS 独自の「Lumina Pro OLED」で、色差 Delta E が1未満という色精度を確保しています。P16 は最大4K・120Hz の可変リフレッシュレートに対応し、NVIDIA G-SYNC も利用できます。P14 は最大3K 解像度です。いずれも最大輝度1,600ニトで、反射を抑えるコーティングを施しています。
筐体は CNC 加工で仕上げられ、カラーは Nano Black と Neo White の2色です。変換アダプターに頼らずに済むよう端子類をひととおり備えるほか、タッチパッドはハプティック(触覚フィードバック)式で、薄型でも押し心地を確保しています。
ProArt GR1X は150mm 角・24時間稼働前提のミニ PC
ProArt GR1X は、RTX Spark の性能を150 x 150 x 51mm の小さな筐体に収めたミニ PC です。ASUS は「常時オンの AI エージェント」を動かす用途を前面に出しており、24時間連続稼働を前提に冷却を設計しています。デュアルファンのブレード数は合計218枚で、従来比最大1.6倍の冷却範囲を確保し、7段階のファン制御で静音性と性能を両立させるとしています。
カラーは Black に加えて新色の Silver を用意しました。有線 LAN は10GbE、無線は Wi-Fi 7 と Bluetooth 5.4 に対応し、4K ディスプレイを最大4台まで接続できます。3D レンダリングやコンテンツ制作、ローカルでの AI 開発まで、デスクの片隅に置いた1台でこなすことを想定した仕様です。
MuseTree や StoryCube、ComfyUI 連携でエージェント型の制作フローへ
ハードウェアだけでなく、ASUS は自社アプリと外部ツールを組み合わせた制作環境も打ち出しています。プリインストールの「MuseTree」はローカル画像生成モデルの FLUX と WAN を統合し、トークン課金なしで画像を生成できます。「StoryCube」は AI によるシーン認識でメディアを整理し、素材管理を助けるアプリです。
クラウド側では Adobe Creative Cloud のバンドルが付属し、対象のノート PC では Google の AI サービスのバンドルも利用できます。さらに IFA では、オープンソースの生成 AI ワークフロー基盤「ComfyUI」や、ASUS 独自のエージェント「Zenni Claw」と MuseTree の連携を通じて、生成・編集・素材管理を AI エージェントがまたいで進めるデモを披露します。ツールを個別に使うのではなく、エージェントが工程をつなぐ形を ProArt の標準にしたい考えです。
ベルリンの専用ショールームで実機を展示
ASUS は IFA の会期に先立ち、9月2日から5日までベルリンの ABION Spreebogen Waterside Hotel に招待制の「ASUS IFA Media Showroom」を設けます。ASUS がグローバルのメディア向けに AI エージェントと実際の AI ワークフローを主題に据えた展示会はこれが初めてで、7つの体験ゾーンと基調講演で構成されます。
会場では ProArt の3機種のほか、ProArt Z890-CREATOR WIFI マザーボードと ProArt GeForce RTX 5070 Ti OC Edition を軸にした自作 PC、6016 x 3384の 31.5インチ 6K モニター「ProArt Display PA32QCV」、Snapdragon X/Intel Core Ultra シリーズ3/AMD Ryzen AI 300 から選べる「Zenbook 14」、0.99kg からの法人向け「ExpertBook Ultra」も展示されます。
なお、今回の発表では ProArt P16/P14 と GR1X の価格や発売日は示されていません。COMPUTEX に合わせた6月1日付の発表で ASUS は、一部地域で2026年秋から販売を始めると説明しており、日本での展開は続報を待つ必要があります。
まとめ
ASUS の新しい ProArt P16/P14 と ProArt GR1X は、NVIDIA RTX Spark を核に、最大128GB のユニファイドメモリと1ペタフロップスの AI 性能で「AI エージェントを手元で動かす」ことを狙ったクリエイター向け PC です。P16 は12.9mm・1.77kg で16インチ ProArt の歴代最薄、P14 は1.48kg で歴代最軽量、GR1X は150mm 角で24時間稼働を前提にした設計と、それぞれ形は違っても方向性は共通しています。価格や発売日は未発表で、IFA 2026 の会場で実機が公開されます。
