Apple と Intel が、Apple 製品向けの一部チップを Intel が製造する内容で暫定合意に達したと米 The Wall Street Journal が報じました[1]。両社は 1 年以上にわたる集中的な交渉の末、ここ数か月で正式な合意内容を詰めたとされ、Apple Silicon の脱 TSMC・米国回帰を象徴する動きとして市場が大きく反応しています。
WSJ が報じた合意の中身
The Wall Street Journal は 2026 年 5 月 8 日付で、関係者の話として「Apple と Intel は、Apple 製品を駆動する一部チップを Intel が製造する暫定合意に達した」と伝えました[1]。Apple は年間 2 億台以上の iPhone のほか、iPad と Mac も大量に出荷しており、Intel が具体的にどの製品向けのチップを担当するかは現時点で明らかにされていません[1]。先行する Bloomberg の 5 月 5 日報道では、Apple は Intel と SAMSUNG の双方に主要デバイス用チップの米国内生産を打診していると報じられていました[2]。
合意の前段階としては、アナリストの Ming-Chi Kuo 氏が 2025 年 11 月に Mac と iPad 向けの将来 M シリーズ チップで Intel と提携する可能性を、Jeff Pu 氏が 12 月には iPhone 向けチップへの拡張可能性を指摘していました[1]。市況調査会社 TrendForce は 4 月 29 日のレポートで、Apple がエントリー クラスの M シリーズ向けに Intel 18A プロセスを評価する段階に入り、すでに NDA を締結のうえ 18AP PDK 0.9.1GA を受領していると伝えており、量産シリコンの出荷は 2027 年第 2〜第 3 四半期になる可能性があると分析しています[3]。
株式市場と政治の動き
報道直後の米国市場では Intel 株が一時 15 パーセント上昇し、Apple 株も 1.7 パーセント程度の上昇を見せました[4]。Intel は 2026 年に入ってから株価が 175 パーセント超の上昇を記録しており、Apple との交渉観測がさらに上昇を後押しした格好です[5]。
合意の背景には米政府の強い関与があります。WSJ は「トランプ大統領自らがホワイトハウスでの会談で Tim Cook 氏に Intel を提案した」と報じ、商務長官の Howard Lutnick 氏が過去 1 年にわたり Cook 氏や SpaceX の Elon Musk 氏、NVIDIA の Jensen Huang 氏と繰り返し会合を持ち、Intel との取引を働きかけてきたと伝えています[1][6]。Intel は 2025 年に米政府が筆頭株主となる資本再編を経ており、CEO の Lip-Bu Tan 氏は Foundry 事業で 2027 年の損益分岐点到達を掲げています[7]。Amazon、Microsoft、Tesla、米政府などとの契約に Apple が加われば、その目標に大きく近づくことになります[7]。
Apple にとっての意味と読み解き方
Apple にとって今回の合意は、Apple Silicon 移行以降ほぼ TSMC 一社に依存していたチップ生産網を分散させる第一歩となります。TSMC の最先端ラインは AI 半導体で NVIDIA や AMD とも奪い合いになっており、生産能力を確保すること自体が経営課題でした[6]。Intel の 18A は米アリゾナ州を中心に展開される最新プロセスで、米国内での製造比率を高めれば米政府との関係改善や関税リスク軽減にもつながります[1][6]。
ただし WSJ・9to5Mac とも「どの製品が対象か」「どの世代の Apple Silicon に採用されるか」については未確定としており、初回投入は 2027 年のエントリー クラス M シリーズが本命視されています[1][3]。Intel の Lip-Bu Tan CEO は次世代 14A プロセスについても「成熟度と性能が同時期の 18A を上回るペースで進んでおり、2026 年後半には外部顧客の 14A 設計コミットが出始める」と発言しており、Apple との関係も 18A だけでなく 14A 世代まで継続する可能性が指摘されています[5][8]。
なお、Apple が Mac から Intel CPU を切り離して自社設計の Apple Silicon に移行したのは 2020 年のことで、それから 6 年弱を経て両社は「設計者と製造者」という新しい関係で再び結びつくことになります[6]。
まとめ
WSJ が報じた Apple と Intel の暫定合意は、Apple Silicon の生産を TSMC 以外に広げる初の本格的な動きであり、Intel Foundry にとっても顧客リストに Apple を加えることで再建シナリオを補強する一手となります。製品名や量産時期は依然として未公表ですが、米政府の強い後押しと Intel 18A の準備状況を踏まえると、2027 年のエントリー クラス Mac 向けチップが最初のターゲットとなる公算が大きいといえそうです。今後の正式発表に注目が集まります。
※1 米ドル = 約 157 円換算(2026 年 5 月 4 日時点)
出典:https://9to5mac.com/2026/05/08/apple-and-intel-have-reached-a-deal-to-produce-future-chips-report/
出典:https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-05-05/apple-explores-using-intel-and-samsung-to-build-main-device-chips-in-the-us
出典:https://www.trendforce.com/news/2026/04/29/news-intel-foundry-gains-momentum-apple-reportedly-eyes-18a-p-as-google-explores-advanced-packaging/
出典:https://www.cnbc.com/2026/05/08/intel-stock-apple-chip-deal.html
出典:https://www.fool.com/investing/2026/05/05/intel-is-rocketing-higher-on-reports-that-it-may-p/
出典:https://www.tomshardware.com/tech-industry/semiconductors/apple-reportedly-strikes-deal-for-intel-to-make-some-of-its-chips-two-tech-giants-reached-a-preliminary-agreement-for-intel-to-make-processors-for-cupertino
出典:https://wccftech.com/intel-foundry-breakeven-target-for-2027-now-looks-a-lot-more-real/
出典:https://www.tomshardware.com/tech-industry/semiconductors/intel-is-going-big-time-into-14a-says-ceo-lip-bu-tan-serve-the-customer-well-remark-hints-at-external-client
