Appleが8月18日、EU域内で配信されるアプリの取引条件を変更すると発表しました。大規模デベロッパ向けのインストールごとの課金だった「コア テクノロジー フィー」を廃止し、App Store外で配信されるアプリのデジタル取引に一律5パーセントを課す方式へ切り替えます。欧州委員会との協議を経た内容で、実施は10月1日からです[1]。
インストールごとの課金から、取引ごとの手数料へ
これまでEU域内では、一定規模を超えたデベロッパに対してインストール1件ごとに料金が発生する「コア テクノロジー フィー」(CTF)が適用されていました。今回これが「コアテクノロジー手数料」(CTC)に置き換わり、App Store以外で配信されるアプリでのデジタル取引に対して一律5パーセントが課される形になります[1]。
課金の単位がインストール数から売上へ移る点が、この変更の芯にあたります。ダウンロードされただけで費用が積み上がる構造は、無料配布を前提としたアプリや利用者数が急に伸びたアプリにとって読みにくい負担でした。売上に対する定率であれば、少なくとも収益が立たない限り請求額も膨らみません。あわせて、新規ユーザーの獲得手数料とApp Storeのサービス手数料は廃止されます[1]。
EU域内でアプリを配信するデベロッパは、全員が同じ取引条件を使うことになります。デベロッパは発表当日から新条件に署名でき、実施は10月1日からです[1]。
App Store経由の料率も引き下げ
App Store側の手数料も見直されました。Appleのアプリ内購入を使う場合は26パーセントで、従来の一般的な条件である30パーセントから4ポイント下がります[2]。ただしSmall Business Program、Mini Apps Partner Program、Video Partner Programの参加者、および2年目以降に自動更新されるサブスクリプションは15パーセントが適用され、Appleはこれが大多数のデベロッパに当てはまるとしています[1]。
アプリ内で代替の決済処理を使う場合は20パーセント、上記プログラムの参加者は10パーセントです。決済のためにアプリの外へリンクする場合は15パーセント、同じくプログラム参加者は10パーセントになります。代替マーケットプレイスやウェブ経由で配信するアプリには、前述の5パーセントのコアテクノロジー手数料が適用されます[1]。
代替決済とアプリ内購入の併用が可能に
これまでEU域内では認められていなかった、代替決済オプションとAppleのアプリ内購入の併用が可能になります。決済手段の提示方法については、利用者から見て一貫性のある表示になるよう要件が定められています[1]。
一方で、選んだ決済方法は1年間変更できません。アプリ内購入、アプリ内の代替決済、ウェブへのリンク、あるいはそれらの組み合わせのいずれを選ぶにせよ、12か月は固定されます[1][2]。手数料率の差が小さくない以上、どの組み合わせで運用するかの判断は10月までに詰めておく必要がありそうです。
子ども向けアプリには例外を設定
代替決済の導入にあわせて、年齢に応じた制限も加えられます。App Storeの「子ども向け」カテゴリのアプリには、決済取引を実行するウェブサイトへのリンクを含められません。18歳未満の利用者に対しては、代替決済処理や外部サイトへのリンクを使うすべてのApp Storeアプリで、購入前に保護者の関与を求めるペアレンタルゲートの実装が必要になります[1]。
13歳未満の利用者については、外部サイトへのリンク自体が使えません。13歳以上の子どものデジタル利用に保護者の同意を求めているEU加盟国では、この保護がさらに強化されます[1]。
代替マーケットプレイスの資格条件も緩和
代替アプリマーケットプレイスを運営したり、ウェブ経由でアプリを配信したりするための資格条件も広がりました。従来は十分な資金的裏付けを示すか、Apple Developer Programに2年以上在籍したうえで前年のEU域内での初回インストールが100万件を超えるアプリを持つことが求められていました[2]。
新しい条件では、大規模なiOSデベロッパであることの要件が外れ、Dun & Bradstreetによる財務安定性のスコアを満たすこと、株式が公開されているか公開企業に所有されていること、実績のある投資会社からベンチャーキャピタル資金を調達していること、認可会計士による財務監査を完了していること、政府機関・教育機関・非営利団体であることのいずれかで資格を得られます[1][2]。
ただしApple自身は、ウェブ配信には自社が提供しているような継続的な監視体制がないと注意を促しています。悪意ある配信が長期間見過ごされる可能性を挙げ、代替配信されるすべてのアプリに対しては引き続き「公証」と呼ぶ基本審査を求める方針です[1]。
規制当局との往復の末に
一連の見直しは、デジタル市場法(DMA)をめぐる欧州委員会とのやり取りが背景にあります。Appleは2025年4月にDMA違反で5億ユーロ(約920億円)の制裁金を科され、同年6月に手数料体系を改定しましたが、その内容は複雑で、批判的な立場からは形だけの遵守だという指摘も出ていました[2]。
今回の変更は、その複雑さを削ぎ落とす方向に働いています。取得手数料とサービス手数料が消え、条件がEU域内で1本化されたことで、少なくとも料率表としては読み解きやすくなりました。実際にどう受け止められるかは、10月1日以降のデベロッパの動きを見てからということになります。
※1ユーロ=184.6円換算(2026年8月18日時点)
まとめ
AppleはEU域内のアプリ取引条件を刷新し、インストール課金だったコア テクノロジー フィーを、App Store外配信のデジタル取引に対する一律5パーセントのコアテクノロジー手数料へ置き換えます。アプリ内購入は26パーセント、プログラム参加者や2年目以降のサブスクリプションは15パーセントとなり、新規ユーザーの獲得手数料とサービス手数料は廃止されます。代替決済とアプリ内購入の併用も可能になりますが、決済方法は1年間変更できません。代替マーケットプレイスの資格条件も緩和され、実施は10月1日からです。
出典[1]:https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/08/apple-announces-changes-for-apps-in-the-european-union/
