AI企業のAnthropicは、コンテンツ配信・クラウドインフラ大手のAkamai Technologiesとの間で、7年間・116億ドル(約1兆8,400億円)規模のコンピュート調達契約を締結したと発表しました。契約には最大90億ドル(約1兆4,300億円)の拡張オプションが付いており、両社が示した総潜在額は約200億ドル(約3兆1,800億円)に達します。Akamaiにとっては単独案件として過去最大級の受注で、発表直後に同社株価は20パーセント超上昇しました。
Akamaiの分散インフラでCPU需要の急増に対応
今回の契約は、米マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするAkamaiが2026年9月24日に発表したものです。基本契約は7年間で116億ドル(約1兆8,400億円)、これに加えて最大90億ドル(約1兆4,300億円)の拡張オプションが設定されており、達成されれば総額は約200億ドル(約3兆1,800億円)規模に膨らみます。
提供されるのはAkamai Cloudが持つ、コアからネットワークの末端(エッジ)まで広がる分散型のコンピュートインフラとソフトウェアです。AnthropicはこのインフラをAIモデルの稼働に伴うCPUワークロードの需要拡大に充てる方針で、Akamaiのトム・レイトン最高経営責任者(CEO)は、AI革新をけん引するAnthropicから自社のインフラ構築力を選んでもらえたことを光栄に思う、との趣旨のコメントを発表文で示しています。
「思考」はGPU、「作業」はCPU AIエージェント特有の需要構造
今回の契約で注目されているのは、GPUではなくCPUに焦点を当てている点です。半導体大手AMDの幹部は、実際に業務をこなすAIエージェントの処理工程のうち、8段階中7段階はCPUが担っていると指摘しています。AIエージェントはユーザーの依頼に対して回答を「思考」するだけでなく、外部ツールの呼び出しやWeb検索の実行、情報の整理といった「作業」を大量にこなす必要があり、こうした作業の多くはGPUではなくCPUの処理能力に依存します。
AIインフラ投資はこれまでGPUを中心とした大規模言語モデルの学習・推論に注目が集まってきましたが、AIエージェントが実際のタスクを自律的にこなす場面が増えるにつれて、CPUベースの分散コンピュート需要が新たな争点として浮上していることを、今回の契約はうかがわせます。
Akamaiの収益構造を塗り替える大型契約
Akamaiにとって、この契約が持つ経営面へのインパクトも小さくありません。同社の2025年の年間総売上高は42億800万ドル(約6,680億円)でしたが、Anthropicとの契約は2028年末までに年間17億ドル(約2,700億円)ペースの売上に達すると見込まれており、これは現在の総売上高の4割に迫る規模です。売上の本格的な計上は2027年後半以降からを見込んでいます。
契約の遂行に向けてAkamaiは、関連する設備投資として約55億ドル(約8,730億円)を見込むほか、供給網の確保を目的に2026年中にさらに17億ドル(約2,700億円)の追加投資を計画しています。同社は2026年の売上高見通し自体への影響はないとしています。あわせてAkamaiは、発行済み普通株式の最大5パーセントに相当するワラント(新株予約権)をAnthropicへ発行する契約となっており、このうち約2パーセント分は初回の支払い時に権利確定(ベスト)するとしています。
一方で、単一の取引先への依存度がきわめて高い契約であることから、業界の観測筋からは収益の集中リスクを懸念する声も出ています。Akamaiの将来の業績がAnthropic一社の事業展開に大きく左右される構図となる点は、今後の注目点といえそうです。
※1米ドル=158.76円換算(2026年9月25日時点)
まとめ
Anthropicは2026年9月24日、Akamaiとの間で7年・116億ドル規模のコンピュート調達契約を締結したと発表しました。拡張オプションを含めれば総額は約200億ドルに達する見込みで、Akamaiにとっては過去最大級の受注となります。契約の焦点はGPUではなくCPUにあり、AIエージェントが実務をこなす「作業」の部分を支える分散インフラの需要拡大を映し出しています。Akamaiの株価は発表後に20パーセント超上昇した一方、単一顧客への依存度の高さという新たなリスクも浮かび上がっており、今後の契約履行の進捗が注視されます。
