Z.aiが2026年8月26日、GLM-5シリーズで初めてネイティブにマルチモーダル対応した「GLM-5.3-Flash」を公開しました。総パラメーターは3,200億、1トークンあたりに動くのは180億で、扱える文脈は100万トークンです。重みはMITライセンスで配布されており、商用利用を含めて制約はほとんどありません。コーディングとエージェント用途を安く回すことに軸足を置いたモデルです。
3,200億のうち180億だけを動かす
GLM-5.3-FlashはMixture-of-Experts(MoE、専門家混合)構成です。総パラメーターは3,200億ですが、1トークンを処理するときに実際に計算されるのは180億分にとどまります。GLM-4.5では活性化が320億だったので、動く量はむしろ半分近くまで絞られました。安く速く回すことを優先した設計だと読めます。
学習には30兆トークン規模のマルチモーダルなコーパスが使われています。注意機構は2種類を組み合わせる形で、近くのトークン同士の関係は線形アテンションで、離れた位置にある必要な文脈はスパースアテンションで拾います。文脈が100万トークンに近づくとインデクサーの鍵ベクトルが増えて遅くなるため、それらをまとめて圧縮するIndexPoolという仕組みも入りました。Z.aiによれば、GLM-5.3と比べて注意計算量は3分の1、KVキャッシュのサイズは4.4分の1になったとしています。
ベンチマークはGLM-5.2から大きく動いた
公表されている数値では、コーディング系のDeepSWE v1.1が63.4で、GLM-5.2の46.2から大きく伸びています。自動化能力を測るAutomationBenchは48.8で、こちらもGLM-5.2の26.2から倍近い数字です。総合指標であるArtificial Analysis Intelligence Index v4.1.1では57を記録し、そのときの割引後コストは1タスクあたり0.045ドル(約7円)だったとされています。
Z.aiは、報告されたコーディングとエージェントのテスト全般でGLM-5.2を上回り、しかも価格は10分の1だと説明しています。社内のコーディングベンチマークではClaude Opus 4.8に0.5ポイント差まで迫ったという主張も出ています。
ただし、この種の比較は評価用のハーネスや文脈長の上限、生成時の設定によって数字が動きます。同じ土俵で測られたものかどうかは、それぞれのテスト条件を確認しないと判断できません。数字の並びをそのまま順位表として読むのは避けたいところです。
※1ドル160円換算(2026年8月31日時点)
自分の描いた画面を見て直す
今回の目玉として説明されているのは、視覚を使った検証の作り込みです。Z.aiはこのモデルに、描画されたインターフェースやゲームの画面、3Dの出力を自分で確認させ、その見た目をもとに評価して直すという訓練を施しています。コードを書いて終わりではなく、実際に画面に出たものを見て手直しするループを回せる、という位置づけです。
同じやり方は文書、表計算、プレゼン資料、ダッシュボード、会議資料といった対象にも広げられています。テキストと画像、そして書式や構造をまたいで推論させる狙いがあり、フロントエンド寄りの作業や資料作りでは効いてきそうです。
「ox-alpha」の正体と国産チップでの提供
このモデルは公開前、OpenCodeとOpenRouterに「ox-alpha」という匿名の名前で置かれていました。素性が明かされないまま話題になり、Z.aiによればその週にこれらのサービスで最も使われたモデルになったとしています。今回の公開で、その正体がGLM-5.3-Flashだったことが正式に認められた形です。
もう1つ触れておきたいのが、推論が中国製のAIチップだけで動いているという点です。Z.aiはSGLangをベースに、エンコード・プリフィル・デコードを分離して処理するスタックを組み、数万基規模の国産アクセラレーターでエンドツーエンドの提供性能を3倍に高めたと説明しています。海外製GPUの調達が読みにくい状況で、この規模の推論を国内の半導体だけで回せると示したことには、モデルの性能とは別の意味があります。
使える場所と価格
GLM-5.3-FlashはGLM Coding Planの利用者全員に開放され、使える枠はGLM-5.3の3倍になりました。マルチモーダル機能はZCodeのBrowser UseとComputer Useから利用できます。
重みはHugging Faceで配布されており、手元で動かす場合はSGLang、vLLM、TokenSpeedが対応します。ライセンスがMITなので、社内利用でも製品への組み込みでも扱いやすい部類です。
まとめ
GLM-5.3-Flashは、総パラメーター3,200億・活性化180億のマルチモーダルMoEで、100万トークンの文脈をMITライセンスで開放したモデルです。GLM-5.2に対してコーディングと自動化のベンチマークが大きく伸びた一方、価格は10分の1という説明が付いています。匿名で先行公開されていた「ox-alpha」の正体がこれだったことも明かされ、推論が中国製チップだけで完結している点も含めて、性能以外の話題も残しました。数字は評価条件に左右されるため、実際の使い勝手は手元で試して確かめるのが確実です。
※サムネイル画像はAI生成のイメージです
