Googleは開発者向けイベント「Google I/O」で、新しいAIモデル群「Gemini 3.5」を発表しました[1]。第1弾として、高速性と高い処理能力を両立させた「3.5 Flash」を全世界に提供開始しています[1]。Geminiアプリや検索のAIモードから誰でも利用でき、自律的に作業を進めるエージェントとしての性能を大きく引き上げたとされる、注目のアップデートです。

まず投入された「3.5 Flash」

Gemini 3.5は、Googleが「フロンティアの知性と実行力を組み合わせた」と位置づける最新のモデル群です[1]。シリーズの第1弾として公開されたのが、軽量・高速路線の「Flash」系にあたる3.5 Flashです[1]。同社によると、3.5 FlashはGeminiアプリとGoogle検索のAIモードを通じて世界中の数十億人がすでに利用でき、開発者向けにはエージェント開発基盤「Google Antigravity」やGoogle AI Studio・Android Studio経由のGemini API、企業向けにはGemini Enterprise Agent PlatformおよびGemini Enterpriseから使えるとしています[1]。

上位版にあたる「3.5 Pro」も開発が進んでおり、すでに社内で使われていて、翌月に提供を始める予定だと説明されています[1]。

ベンチマークが示す「速さと賢さの両立」

Googleは、3.5 Flashが大型のフラッグシップモデルに匹敵する知性を、Flashシリーズらしい速度で提供すると説明しています[1]。同社の公表値では、コーディングやエージェント性能を測る指標で上位モデルのGemini 3.1 Proを上回り、Terminal-Bench 2.1で76.2パーセント、MCP Atlasで83.6パーセント、マルチモーダル理解を測るCharXiv Reasoningで84.2パーセントを記録したとしています[1]。エージェント能力を評価するGDPval-AAでは1656 Eloに達したとのことです[1]。

さらに、1秒あたりの出力トークン数では他のフロンティアモデルの4倍にあたる速度を実現したとし、品質と応答速度のどちらかを諦める必要がなくなったと強調しています[1]。これらの数値はいずれもGoogle自身が公表したものである点は、念のため押さえておきたいところです。

長時間タスクをこなすエージェント機能

3.5 Flashが特に力を発揮するのは、数日から数週間かかるような「長い手順を要する作業(long-horizon task)」だとされています[1]。Googleは、開発者が数日、監査担当者が数週間かけていた作業を、他のフロンティアモデルの半分以下のコストで、短時間のうちに進められる例を挙げています[1]。

エージェント開発基盤Antigravityと組み合わせると、複数の補助エージェント(サブエージェント)を連携させて大規模な課題に取り組めるといいます[1]。公開されたデモでは、2つのエージェントがAlphaZeroの論文を読み解いて6時間で実際に遊べるゲームを作り上げた例や、雑然としたレガシーなコードベースをNext.jsへ作り変えた例などが示されました[1]。

企業導入と個人向けエージェント「Gemini Spark」

実際の導入も始まっています。Googleによると、Shopifyは複数のサブエージェントを並行して動かし、世界規模の販売事業者向けに精度の高い成長予測を行っているとのことです[1]。Macquarie Bankは100ページを超える書類を読み解いて顧客の手続きを高速化する実証を進め、SalesforceはAgentforceに3.5 Flashを組み込み、複雑な企業向け作業の自動化に活用しているとしています[1]。このほかRamp、Xero、Databricksなども、請求書の読み取りや税務書類の作成、データ分析といった業務でエージェントを使い始めていると紹介されました[1]。

個人向けには、新しいパーソナルAIエージェント「Gemini Spark」が3.5 Flashを採用します[1]。24時間体制で利用者のデジタル生活を支え、本人の指示のもとで代わりに作業を実行するとされます[1]。Googleは信頼できるテスター向けに提供を始め、翌週には米国のGoogle AI Ultra契約者へベータ版を届ける予定だとしています[1]。なお3.5 Flashは、GeminiアプリとGoogle検索のAIモードの既定モデルとして、世界中で使われるようになりました[1]。

安全性への取り組み

Gemini 3.5は、Googleの「フロンティア・セーフティ・フレームワーク」に沿って開発されたとされています[1]。同社は、サイバー攻撃やCBRN(化学・生物・放射性物質・核)に関する安全対策を強化し、有害な内容を生成しにくくする一方で、安全な質問への過剰な回答拒否も減らしたと説明しています[1]。回答を返す前にAI内部の推論を確認・理解するための「解釈可能性(interpretability)」ツールなどを取り入れたとのことです[1]。

まとめ

Gemini 3.5は、速度と知性の両立を掲げ、エージェントとしての実用性を前面に押し出した世代といえます。まず公開された3.5 Flashは、Geminiアプリや検索からすぐに使えるうえ、企業や開発者向けにも幅広く展開されました。提示された性能値の多くはGoogle自身の公表によるものですが、翌月に控える3.5 Proの登場も含め、今後の実力が注目されます。

出典:https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-5/