Adobeが世界8カ国の新興クリエイター16,000人以上を対象に実施した「クリエイターツールキットレポート」で、回答者の86パーセントがクリエイティブ生成AIを積極的に活用していることが明らかになりました[1]。かつては実験的な試みだった生成AIが、いまや制作のワークフロー全体に組み込まれ、クリエイターエコノミーを押し上げる存在になっています。一方で、無断学習への懸念や出力品質といった課題も根強く残っており、AI活用の次の段階が見えてきました。

生成AIは「実験」から「必須ツール」へ

今回の調査で最も目を引くのは、生成AIがクリエイターの収益や成長に直結し始めている点です。回答者の76パーセントが、クリエイティブ生成AIによって自身のビジネスやフォロワー数の成長が加速したと報告しています[1]。さらに81パーセントが「生成AIなしでは制作できなかったコンテンツ」の作成に役立っていると回答し、表現の幅そのものを広げる道具になっていることがうかがえます[1]

活用の範囲も一部の作業にとどまりません。現在クリエイターの86パーセントが生成AIを積極的に使っており、その用途は編集・画質向上が55パーセント、画像や動画など新規アセットの生成が52パーセント、アイデア創出やブレインストーミングが48パーセントと、制作過程全体に浸透しています[1]。Adobeの製品マーケティング兼クリエイター部門担当バイスプレジデントであるMike Polner氏は、現代のクリエイターは生成AIに受け身ではなく、信頼できるツールを率先して選んで使っていると指摘しています[1]

複数ツールの併用と、根強い信頼性への懸念

注目すべきは、クリエイターが特定の1つのツールに依存していないことです。回答者の80パーセントが、過去3カ月間に複数のクリエイティブ生成AIを使い分けたと答えています[1]。成果物の品質を高めたり、タスクごとに最適な組み合わせを探したりと、目的に応じて道具を選ぶ姿勢が定着しつつあります。

その一方で、信頼性と透明性は依然として重要な検討事項です。69パーセントのクリエイターが、自身のコンテンツが許可なくAIの学習に利用されることを懸念しています[1]。新しいツールを試すきっかけは、個人的なリサーチが58パーセント、SNSのトレンドが57パーセント、他のクリエイターからの推薦が41パーセントと多様ですが、すべてのツールが定着するわけではありません[1]。導入の主な障壁としては、高コストが38パーセント、出力品質の低さが34パーセント、AIモデルの学習方法に関する不確実性が28パーセントと続きます[1]。コストと信頼性が、普及の最後のハードルになっていると言えるでしょう。

エージェント型AIへの期待と「人間が関与する」一線

調査ではさらに、複数ステップの作業を自動で実行する「エージェント型AI」への関心も浮き彫りになりました。70パーセントのクリエイターがその可能性に楽観的または期待を寄せており、85パーセントは自身の創作スタイルを学習するAIの利用を検討していると回答しています[1]

ただし、クリエイターは適用範囲に明確な線を引いています。求められている使い方は、反復作業の自動化が51パーセント、コンテンツのアイデア出しが50パーセント、コンテンツのパフォーマンス分析が44パーセントが上位です[1]。AIに作業を高速化させつつ、創作の意思決定は自分の手に残す。Adobeはこれを、人間が判断に積極的に関わる「Human in the loop」体験と表現しています[1]。スピードと創造性のコントロールを両立させたいという、現場のリアルな要望が読み取れます。

スマートフォンが「制作スタジオ」になる

もう1つの変化が、モバイルデバイスの位置づけです。簡単な撮影や編集のためだけの道具という見方はすでに過去のものになりつつあります。72パーセントのクリエイターが、現在はモバイルで頻繁にコンテンツを制作していると回答しました[1]

ツールの性能向上と操作性の改善を背景に、75パーセントのクリエイターが今後1年間でモバイルでの制作量が増えると見込んでいます[1]。企画から撮影、編集、公開までを1台で完結させる、文字どおりの「ポケットの中の制作スタジオ」が現実になりつつあります。

まとめ

今回のAdobeの調査は、2025年9月に調査会社Harris Pollと提携し、日本を含む8カ国の16,000人以上のクリエイターを対象に実施されたものです[1]。対象は主にZ世代とミレニアル世代の新興クリエイターで、生成AIが彼らの制作と収益の双方を支える基盤になっている実態が示されました。実験段階を抜け、複数ツールの使い分けやエージェント型AIへと向かう一方、無断学習やコスト、出力品質といった課題への答えが、次の普及を左右することになりそうです。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000529.000041087.html