中国の自社設計プロセッサメーカーZhaoxin(兆芯)が、5月28日に上海・張江で開幕した「2026年 第10回集微大会・端側AI峰会」で、エッジAI(端末側で処理するAI)に向けた自社算力(国産の計算基盤)戦略を披露しました[1]。自社で定義した命令セット「ZX86」を核に、サーバー向けからAIPCまでをそろえ、クラウド・エッジ・端末を貫く計算基盤として打ち出した点が特徴です[1]。海外勢に依存しない国産プロセッサで、急拡大するエッジAI市場を取り込む狙いがうかがえます。
エッジAIが「爆発元年」へ 自主算力が土台に
Zhaoxinは、2026年をエッジAIが本格普及する節目の年と位置づけ、AIの計算処理がクラウドからAIPCなどの端末へ大きく下りてきていると説明しました[1]。大会で示された業界予測では、エッジAIの市場規模は2025年の3,219億元(約7兆6,000億円)から、2029年には1兆2,200億元(約29兆円)へと拡大し、年平均の成長率は40パーセントに達するとされています[1]。
※1人民元=約23.6円(2026年6月9日時点)
エッジAIは、応答までの遅延が小さいこと、データを端末内で扱えてプライバシーを守りやすいこと、通信環境に左右されにくいことを強みとし、官公庁や企業のオフィス、教育現場、工場の画像検査など幅広い場面に広がりつつあります[1]。Zhaoxinは、こうした用途を支える土台として、国産で自前の計算基盤がますます重要になると主張しています[1]。
「ZX86」を核にした段階的なAI算力
技術の根幹に置かれているのが、Zhaoxinが自社で定義・拡張した命令セット「ZX86」です[1]。同社は「自主可控(自前で制御できる)でありながら閉じておらず、主流に対応しつつも依存しない」という方針を掲げ、x86を含む主流環境との互換性を保ったまま独自の進化を進めるとしています[1]。
このZX86を中心に、用途ごとに段階を分けた製品群が用意されています[1]。サーバー向けの開勝(KaiSheng)KH-50000は1基あたり96コアで、大規模言語モデルの学習や高密度な推論を想定します[1]。同じく開勝KH-40000は最大32コアで、デュアル構成によりコストを抑えたサーバーやワークステーションを組め、エッジやその手前での高密度な推論を主な狙いとします[1]。PC・組み込み向けの開先(KaiXian)KX-7000系は、AIPCやエッジ機器に向けて、オフィスや教育、産業制御などでの軽量なAI推論に対応します[1]。
サーバーからAIPCまで 端末に応じた製品群
Zhaoxinは産業界のパートナーと組み、自社CPUを採用したAIサーバー、AIワークステーション、AIPCといった完成品を複数そろえました[1]。KH-50000を搭載したAIサーバーでは、192コア規模の計算能力と、PCIe 5.0スロットを多数備える構成により、国内主要ブランドのGPUやAIアクセラレーターと組み合わせて、大規模モデルやAIエージェントのローカル運用に対応するとしています[1]。KH-40000を核にしたAI推論ワークステーションは、並列計算や産業用の画像処理、消費電力を抑えたローカル推論、医療画像の解析、科学計算など、細かく分かれた用途に向けて展示されました[1]。
端末側では、Lenovo(聯想)の「開天」が、開先KX-7000を採用した国産環境向けの初のAIPCをZhaoxinと共同で手がけたとしています[1]。このほかiFLYTEK(科大訊飛)やSeewo(希沃)など複数のパートナーも、開先系プロセッサを使ったAIPCを展開し、官公庁・企業のオフィスやスマート教育といった軽量なAI用途を支えるとしています[1]。
生態系の広がりと導入事例
Zhaoxinの自社CPUはx86命令セットに対応し、主流のAIフレームワークを標準で扱えるほか、銀河麒麟(Galaxy Kylin)や統信UOSといった国産OSにも対応します[1]。さらに同社は、国産のGPUやAIアクセラレーターカード、データベース、クラウド基盤、大規模言語モデル、AIエージェントとの適合作業を進め、企業がエッジAIを導入する際の手間とコストを下げるとしています[1]。ZX86の算力プラットフォームは、オープンソースや国産のAIエージェントへの対応も広げているといいます[1]。
導入事例としては、官公庁・企業のオフィス分野で、人民網(中国の大手ニュースサイト)が関わるAI一体型端末が紹介されました[1]。ZX86プラットフォームの4枚カード構成のAIワークステーションを土台に、専用の大規模言語モデルと大量の専門コーパスを組み合わせ、公文書の作成や内容の自動校正、資料の一元管理までを一台でこなす構成だとしています[1]。教育分野では、KX-7000を搭載したLenovo「開天」のAIPCやSeewoの教育端末が、軽量な教育向けモデルを端末内に展開し、授業準備や授業中のやり取り、学習状況の分析を支えるとしています[1]。北京市内の中学校では、Zhaoxinが手がけた国産環境で固めたAI実践教室の事例も挙げられました[1]。
まとめ
今回の発表は、新しい単体チップの仕様そのものよりも、ZX86という自社命令セットを軸に、サーバーからAIPCまでをひとつの計算基盤としてつなげ、急成長するエッジAI市場で国産勢の存在感を高めようとするZhaoxinの戦略を示すものでした。具体的な製品の性能だけでなく、国産OSやAIエージェントとの適合、官公庁や教育現場での導入事例まで含めて全体像を示した点に、同社の現在地が表れています。
出典:https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=289&id=2044
