中国の半導体企業 Zhaoxin(兆芯)は2026年5月20日、自社の独自CPUプラットフォーム上で動作する重点製品群について、新たに適合認証を完了したと発表しました[1]。サーバー向けプロセッサー「KaiSheng KH-50000」やデスクトップ・組み込み向けの高性能プロセッサー「KaiXian KX-7000」を基盤に、企業向けSSD、スマートNIC、各種データベース、サーバーOSなど幅広い製品が対象となっています[1]。Zhaoxinはこうした取り組みを通じ、独自命令セット「ZX86」を中核とするソフトウェア・ハードウェアの生態系を広げようとしています[1]。
「ZX86」エコシステムとは何か
Zhaoxinは上海に本社を置くCPU設計企業で、もとは台湾の VIA Technologies と上海市政府系の合弁として設立され、x86命令セット互換のプロセッサーを手がけてきました[3]。同社は近年、自社で「ZX86」と呼ぶ命令セットの定義と拡張を進め、「自主創新不封閉、兼容主流不依附」(独自に革新しつつ閉鎖的にならず、主流と互換でありながら依存しない)という方針を掲げています[1]。同社の説明によると、これまでに11種類のCPU中核技術を自社で保有するに至ったといいます[1]。
中国では、官公庁や金融、電力といった重要分野の情報システムを国産の半導体・ソフトウェアへ置き換える「信創(信息技術応用創新)」と呼ばれる動きが続いています。CPUがその基盤となるため、Zhaoxinにとっては自社プロセッサー上で動く周辺ハードウェアやソフトウェアをどれだけ揃えられるかが普及の鍵を握ります。今回の適合認証は、その生態系づくりの一環という位置づけです[1]。
ハードウェアからストレージまで広がる適合製品
今回 Zhaoxin が公表した適合製品には、まずネットワークカードやストレージといったハードウェアが並びます[1]。ネットワーク分野では、PCIe接続のNIC(ネットワークインターフェースカード)が認証対象となり、SR-IOVによる仮想化やRDMA、DPDKといったデータセンター向けの機能に対応するとされています[1]。
ストレージでは、複数の企業向けSSDが認証されました[1]。「DapuStor R6X01」シリーズはPCIe 5.0接続で、3D eTLC NANDフラッシュを採用し、NVMe 2.0規格に対応します[1]。「SP5000」シリーズも自社開発のコントローラーを搭載したPCIe 5.0対応の企業向けSSDで、最大容量は30.72TB、シーケンシャル読み出し最大14,000MB/秒・書き込み最大8,500MB/秒をうたいます[1]。SATA接続の「TWSC TS3160」シリーズも認証対象に含まれ、シーケンシャル読み書きは最大540/510MB/秒とされています[1]。これらはいずれも、AIの普及で高まる企業システムのストレージ需要を見据えた製品です[1]。
OS・データベースなど基盤ソフトの認証も進む
ハードウェアと並んで、サーバーOSやデータベースといった基盤ソフトウェアの適合認証も進んでいます[1]。サーバーOSでは、複数の国産企業向けOSが Zhaoxin プラットフォームでの動作確認を済ませました[1]。データベースでは、分散型データベース「OceanBase」V4をはじめ、グラフデータベース、MPP(超並列処理)構成に対応した製品、HTAP(トランザクション処理と分析処理の融合)型データベースなど、用途の異なる複数の製品が認証対象に挙がっています[1]。このほか、データ統合基盤、運用管理システム、企業向けAI能力プラットフォーム、Webセキュリティ製品なども適合製品に含まれます[1]。
こうした生態系拡大の土台となるのが、サーバー向けの「KaiSheng KH-50000」とデスクトップ向けの「KaiXian KX-7000」です。海外の報道によれば、KH-50000は最大96コア、384MBのL3キャッシュ、12チャネルのDDR5メモリ、128レーンのPCIe 5.0に対応するサーバー向けプロセッサーとされています[2]。一方の KX-7000 は8コアのx86互換デスクトップ向けプロセッサーで、最大動作周波数はおおむね3.7GHz程度とされ、Zhaoxinは2025年にはNPUを統合した派生版「KX-7000N」も公表しています[3][4]。ただし単体の処理性能については、IntelやAMDの最新世代との差を指摘する評価もあり、Zhaoxinにとっては性能向上と生態系拡大の両輪が課題となります[5]。
まとめ
今回の発表は、Zhaoxinが独自CPU「ZX86」を中心としたソフトウェア・ハードウェアの生態系を、地道に広げていることを示すものです[1]。SSDやネットワークカードからサーバーOS、データベース、AI基盤までを一通り揃えることは、国産システムへの置き換えを進めたい利用者にとって重要な条件になります。性能面で海外大手を追う立場は変わりませんが、対応製品の幅をどれだけ早く広げられるかが、今後の普及の行方を左右しそうです[1][5]。
出典:https://www.zhaoxin.com/news_view.aspx?nid=2&typeid=291&id=2037
