Microsoftが、Windows 11のメモリ消費を抑える取り組みを正式な優先課題に位置づけました。対象は搭載メモリ8GB以上のPCで、OS自体が確保する領域を削り、標準的な構成でも軽快に動く状態を目指します。改善はWindows Insider向けの先行提供を経て、今秋から順次配られる見込みです。

品質改善の重点領域に「8GB以上のメモリ最適化」が入った

MicrosoftでWindowsとデバイス部門を率いるPavan Davuluri氏が7月31日、3月に表明したWindowsの品質改善に関する進捗を公開しました。そこで新たに示された重点領域は4つです。初期セットアップの高速化、8GB以上を対象にしたメモリ最適化、ファミリー設定と保護者向け機能の簡素化、そして音声操作をより自然にすることが並びます。

このうちメモリ最適化については、Windowsが占有するメモリ量そのものを減らし、利用者が日常的に使うPCで応答性の高い体験を届ける、と説明されています。周辺アプリの問題としてではなく、OS側の課題として扱った点がこれまでとの違いです。

なお3月の表明は、パフォーマンス・信頼性・体験という3つの柱を掲げたものでした。今回はその続報にあたります。Microsoftの決算説明でも、Satya Nadella氏がWindowsの品質と基礎部分への投資に触れており、社内での優先度が上がっていることがうかがえます。

アイドル状態で6GB近くを使う構造

Windows 11のメモリ使用量は以前から指摘されてきました。Microsoft自身の過去の説明によれば、8GBのPCではアプリを何も開いていない状態で6GB近くが埋まり、16GBのPCでは10GBを超えます。最小要件である4GB構成でも、各種の実測ではOSだけで約3GBを消費します。

要因として大きいのがWebView2です。これはChromiumをベースにした描画エンジンで、Windowsの一部機能や標準アプリの土台になっています。WebView2を使う画面はそれぞれが小さなブラウザのタブに近い存在ですので、ウィジェット、設定、検索、スタートメニューといった箇所で並行して動けば、その分だけメモリが積み上がります。

同じ作り方は他社製アプリにも広がりました。ElectronやWebView2でくるんだデスクトップアプリは、それぞれが自前のブラウザエンジンを抱え込みます。1本ずつでは小さな差でも、常駐するアプリが増えるほど効いてきます。

メモリ確保の仕組みを入れ替え、標準アプリはWinUIへ

具体策として挙がっているのは3点です。1つ目はメモリアロケータ(メモリの確保と解放を管理する仕組み)を、より効率の良い新しい方式へ入れ替えることです。OSの土台にあたる部分ですので、ここを改めると、その上で動くアプリやシステム構成要素の全体にわたって無駄が減ります。

2つ目がWinUI 3の調整です。WinUIはWindows向けのネイティブUI基盤で、ダイアログ1枚を描くためにブラウザエンジンを起動する必要がありません。Microsoftはすでにエクスプローラーのプロパティ画面をWinUIで作り直しており、他の古いダイアログも同じ方向へ移す計画を示しています。開発者に対しても、Webをくるんだ形ではなくWinUIを使ったネイティブアプリを勧める姿勢に転じました。

もっとも、WinUI自体にもメモリと動作速度の課題が残っており、Microsoftはその改善を先に進めています。スタートメニューのような大きな部品を載せ替えるのは、その後になります。

3つ目は、OSの中に残るChromiumおよびWebView2の部分そのものを効率化することです。すべてをWinUIへ置き換えられるわけではないため、残る箇所については、インスタンス間で資源を共有させたり、使われていない背後の処理を止めたりして、1つあたりの消費を抑える方針が示されています。

展開は今秋から、年末まで続く作業

改善はWindows Insider向けのプレビュービルドで先行して試されており、広く配られ始めるのは今秋の予定です。1回の更新でまとめて解決する形ではなく、年末に向けて少しずつ積み上げる進め方が示されています。

背景にはメモリ価格の高騰があります。AI向けデータセンターへ供給が振り向けられた結果、増設という選択肢が取りづらくなりました。加えて、端末側で動かすAIモデルは相応のメモリを要求します。買い足して済ませてきた領域を、ソフトウェア側の作り込みで吸収せざるをえない状況です。

対象が8GBに限らず「8GB以上」とされている点も見逃せません。16GBや32GBのPCでも、OSが手放したぶんはアプリやゲームに回ります。手元の1台を買い替えずに使い続けたい人にとっては、実利のある話といえます。

まとめ

MicrosoftはWindows 11の品質改善における重点領域の1つとして、8GB以上のPCを対象にしたメモリ最適化を掲げました。メモリアロケータの刷新、標準アプリのWinUIへの移行、そしてOS内に残るChromium/WebView2部分の効率化が柱です。Windows Insiderでの検証を経て今秋から段階的に展開し、2026年末まで作業を続けるとしています。