vivo が完全ワイヤレスイヤホン「TWS 5 Pro」を2026年7月1日に発表しました。折りたたみスマートフォン「X Fold 6」と同時のお披露目で、最大の特徴はBluetoothに加えてWi-Fiでも音声を飛ばせる点です。しかも他社の既存方式をそのまま採用したのではなく、自社開発のWi-Fiコーデックを載せてきました。中国での価格は999人民元(約2万4000円)で、Wi-Fi伝送を使えるのは今のところ中国国内の一部のvivo製スマートフォンに限られます。

Bluetoothの帯域を超えるWi-Fi伝送

TWS 5 Pro が押し出しているのは、音声データをWi-Fi経由で送る仕組みです。vivo の説明によると、このWi-Fiコーデックの帯域は4.6Mbpsに達します。スマートフォンがWi-Fiに接続していない場合でも、あるいは2.4GHz/5.8GHzのWi-Fiに接続している場合でも、左右両方のイヤホンで有効になるとしています。

ポイントは、スマートフォンとイヤホンをWi-Fiのプロトコルで1対1に直接つなぐ方式を採っていることです。vivo はこの方式について、従来のBluetoothによる伝送のおよそ3倍を超えるデータ量を運べると説明しており、これにより96kHz/24bitのハイレゾ級再生に対応するとしています。

数字で比べると差は分かりやすくなります。同社の前世代モデル「TWS 5」では、高音質コーデックのLDACで最大990kbps、LHDCのロスレス伝送でも最大1.4Mbpsが上限でした。4.6Mbpsという帯域は、これらを大きく上回る水準です。音楽ファイルの情報量をできるだけ削らずに耳へ届けたい、という狙いがうかがえます。

Qualcomm方式との違い

Wi-Fiで音声を送るという発想自体は、目新しいものではありません。Qualcomm は数年前に、Wi-Fiを使って音声を伝送する「XPAN」という技術を発表しています。ただ、XPANを採用した知名度の高い製品はこれまで「Xiaomi Buds 5 Pro」くらいで、広く普及するには至っていませんでした。

vivo はこのXPANを使わず、独自のコーデックを選びました。両者は同じ「Wi-Fiで音声を送る」という枠でも、接続の考え方が異なります。XPANはWi-Fiルーターに接続する方式で、Qualcomm は「Wi-Fiネットワークの圏内にいる限りイヤホンの接続が保たれる」と説明していました。一方でvivo の方式は、ルーターを介さずにスマートフォンとイヤホンを直接つなぐWi-Fi Directに近い形とみられます。

この違いは、通信距離のアピールにも表れています。vivo は接続範囲の広さについて明確な主張をしておらず、さまざまな環境に合わせる「堅牢なリンク適応技術」を使うと述べるにとどめています。つまりvivo のWi-Fi伝送は、通信距離を伸ばすためというより、あくまで高音質再生に的を絞った機能と受け止めるのが妥当です。

消費電力と再生時間

Wi-Fi伝送には弱点もあります。Bluetoothよりも電力を多く消費する点です。TWS 5 Pro のスペックでは、Wi-Fi再生時の駆動時間はノイズキャンセリング(ANC)オフで5時間、ANCオンで4時間とされています。

これに対してBluetoothのAACで再生した場合は、ANCオフで11時間、ANCオンで6時間と案内されています。Wi-Fi再生のほうが持ちは短く、ロスレス級の音を取るか、長時間の連続再生を取るかという選択になりそうです。なお、LDACのような高音質Bluetoothコーデックを使ったときの駆動時間は公表されていません。ロスレスを売りにするWi-Fiコーデックと比べるなら、本来はこの条件での比較が知りたいところで、情報が出そろっていないのは惜しい点です。

基本スペックと価格、対応機種

Wi-Fi伝送以外の基本仕様も、価格を考えれば充実しています。高音質コーデックのLDACに対応し、マイクは4基を搭載します。ノイズキャンセリングは最大60dB、遅延は42ミリ秒とされ、5分の充電で2時間再生できる急速充電にも対応します。防塵防水はIP54相当です。

価格は中国で999人民元(約2万4000円)です。ただし注意したいのは、目玉であるWi-Fi伝送が使える対応機種です。現時点で機能するのは、中国国内で販売されるvivo X Fold 6、X300、X300s、X300 Proに限られます。グローバル版やvivo以外のスマートフォンでの対応について、同社は「より多くのユーザーに最良の体験を届ける方法を常に検討している」としつつも、具体的な計画は示していません。日本を含む海外での展開が読みにくい点は、購入を検討する際に押さえておきたいところです。

※1人民元=約24円(2026年7月4日時点)

まとめ

vivo「TWS 5 Pro」は、Bluetoothに加えて自社開発のWi-Fiコーデックによる音声伝送に対応した完全ワイヤレスイヤホンです。4.6Mbpsの帯域で96kHz/24bitのハイレゾ級再生を狙う一方、Wi-Fi再生時は駆動時間が短くなり、対応機種も中国向けの一部vivo端末に限られます。高音質を無線でどこまで突き詰められるかを占う、意欲的な一歩と言える製品です。