JVCケンウッドがVictorブランドから、オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤホン「HA-NP80T」を9月上旬に発売します。耳をふさがない“ながら聴き”シリーズ「nearphones」の第4弾で、逆位相音波技術、内部チャンバー構造、新搭載の音漏れ低減モードという3つの仕組みで周囲への音漏れを抑えたのが最大の特徴です。市場推定価格は19,800円前後、本体カラーは4色展開となります。

音漏れ対策を3つ重ねてきた

オープンイヤー型は耳をふさがない代わりに、スピーカー部が耳穴から離れます。周囲の音が自然に聞こえる安心感と引き換えに、音が外へ漏れやすいという弱点を抱えた構造です。電車の中やオフィスで使いにくいという評価がつきまとってきたのは、ここが理由でした。

HA-NP80Tは、この弱点に3方向から手を入れています。1つ目が逆位相音波技術で、再生する音に対して180度反対の位相の音波を発生させ、外へ漏れる音を打ち消します。2つ目が、その効果を高めるために最適化したイヤホン内部のチャンバー(仕切り)構造で、こちらは特許出願中とされています。

3つ目が「音漏れ低減モード」です。音漏れしやすい特定の帯域を抑えるチューニングを施したサウンドモードで、右側の物理ボタンを約1秒間押し続けるだけで切り替えられます。JVCケンウッドによれば、同社のワイヤレスイヤホンでは初搭載の機能で、出荷時はオフに設定されています。

音響設計、筐体構造、ソフトウェアのモードという層の違う3つを重ねてきたところに、この製品の狙いが表れています。オープンイヤーの快適さは手放さないまま、使える場所を増やしにいった設計です。

17mm×12mmの大型楕円ドライバーとマルチバンドDRC

音質面では、17mm×12mmの大型楕円形ドライバーを新たに採用しました。装着したときにスピーカー部が耳穴へ近づくよう本体を設計し、開放型で逃げやすい音を耳へ届けやすくしています。

あわせて新採用となったのが「マルチバンドDRC(ダイナミックレンジコントロール)」です。音の強弱を帯域ごとに調整し、騒音下でかき消されがちな低音域を自然に持ち上げます。屋外や電車内では、まず低音から先に聞こえなくなります。開放型でその帯域を補うのは理にかなった選択です。

サウンドモードはNORMAL、HIGH、BASSの3種類を用意し、楽曲や気分に応じて切り替えられます。対応コーデックはSBCとAACで、通信方式はBluetooth 6.0となっています。

金属芯を入れたリキッドシリコンのイヤーフック

装着感については、イヤーフックにリキッド(液状)シリコン素材を採用し、その内部に金属芯を組み込みました。柔らかい肌ざわりと、運動中でもズレにくいホールド感を両立させる構造です。本体のフォルムには“ねじれ形状”を採用し、耳のラインに沿いやすくしています。

イヤホン1個の質量は約9.2g、充電ケースは約56gです。イヤーフック型は耳に掛ける分だけ安定しますが、長時間つけていると当たる場所が痛くなりやすい形式でもあります。素材の柔らかさと芯の硬さを部位で使い分けた作りは、その両立を狙ったものと読み取れます。

IP55の防水防塵と、通気スリット付きの充電ケース

防水防塵性能はIP55相当です。ジョギング中の急な雨や、砂埃の舞う環境でも使えるとしています。音漏れ対策で入れた内部のチャンバー構造が、電気部品への水の浸入を防ぐ役割も兼ねている点は、設計として無駄がありません。

充電ケースには通気スリットを設けました。上下の蓋にあえて隙間を空け、底面の2つのスリットからケース内部の湿気を逃がす構造で、こちらも特許出願中です。汗や雨で濡れたまま収納したくなる場面は運動用途では避けられないため、密閉しない方向に振ったのは実用的な判断です。

電池持続時間はイヤホン単体で最大9.5時間、充電ケースとの合計で最大28.5時間です。10分の充電で最大60分再生できるクイック充電にも対応します。このほか、PCとスマートフォンなど2台を同時に接続できるマルチポイント、低遅延モード、物理ボタンによる操作、スマートフォンの音声アシスタント起動にも対応しています。

nearphonesシリーズ第4弾という位置づけ

nearphonesは、耳をふさがないリスニングスタイルを提案するシリーズです。イヤーフック型の「HA-NP35T」が2022年6月、「HA-NP50T」が2023年11月、イヤーカフ型の「HA-NP1T」が2024年11月に発売されており、HA-NP80Tは4製品目にあたります。

系譜としてはイヤーフック型の系統に戻る格好ですが、シリーズが積み残していた「低音域の向上」「運動時などでもズレない安定性」「周囲への音漏れ対策」という3つの課題を正面から挙げて開発したと説明されています。イヤーカフ型でアクセサリー方向へ広げたあと、実用面を固め直すモデルという整理になります。

本体カラーはモスグリーン、モーヴピンク、エクリュベージュ、スリムブラックの4色です。トップハウジングとケース外装には粒状の見た目とさらっとした触り心地の塗装を施しています。価格はオープン価格で、市場推定価格は19,800円前後です。

まとめ

HA-NP80Tは、逆位相音波技術、内部チャンバー構造、音漏れ低減モードの3つを重ねて、オープンイヤー最大の弱点である音漏れに正面から取り組んだモデルです。17mm×12mmの大型楕円ドライバーとマルチバンドDRCで低音域を補い、IP55と通気スリット付きケースで運動時の使いやすさも押さえています。発売は9月上旬、市場推定価格は19,800円前後です。ながら聴きをオフィスや電車内まで広げたい人にとっては、確認する価値のある1台になりそうです。