中国のロボットメーカーであるUnitreeが、人型ロボット「Superman」を公開しました。立った状態から2メートルの高さまで跳び上がり、最高速度は12.66メートル毎秒に達すると同社は説明しています。いずれも人間の記録を上回る数字ですが、第三者による検証は行われておらず、製品化の予定も示されていません。開発期間はわずか3か月あまりだったとされています。
2メートルのジャンプと45.6km/hの走行
Unitreeが示した数値は2つです。1つは静止した状態からの跳躍で、到達高さは2メートル。もう1つは走行時の最高速度で、12.66メートル毎秒、時速に直すとおよそ45.6キロメートルになります。脚の長さは0.85メートルと説明されており、人間の脚より短い構造でこの速度を出している計算です。
跳躍と走行はどちらも脚の出力と着地時の姿勢制御にかかる負荷が大きく、人型ロボットが苦手としてきた領域です。二足で立つ機体は重心が高く、片脚しか接地していない時間が長いほど転倒しやすくなります。それを承知のうえで、あえて限界に近い動きを見せたデモンストレーションだといえます。
人間の記録との比較
比較対象として挙げられているのは、立ち幅跳びならぬ立位からの跳躍で1.8メートル、走行速度で12.4メートル毎秒という人間側の記録です。Supermanの数字はどちらもこれをわずかに上回ります。走行速度の12.4メートル毎秒は、短距離走の頂点にある選手が瞬間的に出す速度に相当します。
もっとも、この比較は条件をそろえたものではありません。人間の記録は公式競技の場で計測されたものであるのに対し、Supermanの数値は同社のデモ映像を根拠としています。両者を同じ土俵に乗せて語ることには無理があり、あくまで到達水準の目安として受け取るのが妥当です。
検証されていない数字という前提
今回の発表で押さえておきたいのは、公開された数値が現時点では同社の主張にとどまるという点です。積載重量、走行面の状態、再現性といった試験条件は明らかにされていません。同じ数字が別の環境で再現できるのか、何回試して1回出た記録なのかは分からないままです。
ロボットの運動性能は、床面の摩擦や気温、バッテリーの残量といった条件で簡単に変わります。跳躍高さや最高速度のような単発の記録は特に条件の影響を受けやすく、外部機関の計測やベンチマークが伴わない限り、比較可能な性能指標としては扱いにくいのが実情です。
製品ではなく、運動性能を伸ばすための機体
Supermanは商用製品として発表されたわけではありません。運動性能の限界を押し広げることに主眼を置いた機体で、作業用のハンドやグリッパーは備えていないと伝えられています。物をつかんで運ぶ、工具を扱うといった用途は、少なくとも現時点では想定されていない形です。
Unitree自身も、ハードウェアには改善の余地が大きく残っていると述べています。開発に要した期間が3か月あまりという短さであることを踏まえると、完成度を高めた最終形というより、到達可能な運動性能を確かめるための試作機と理解するのが自然でしょう。
出荷実績と、公開のタイミング
Unitreeは杭州に拠点を置く企業で、走行や踊り、武術の型を実演する人型ロボットで知られています。同社の説明では、7月末時点で人型ロボット各種モデルを合わせておよそ1万8,000台を出荷しています。研究機関や開発者向けの機体を含めた数字ですが、人型ロボットとしては量産の入口に立っている水準です。
今回の公開は、同社が上海証券取引所の科創板に上場する数日前というタイミングで行われました。上場に際して調達した資金は61億元(約1,450億円)です。北京で開かれるロボット関連の大型展示会の開幕とも時期が重なっており、注目が集まりやすい時期を選んだ公開だったことは確かです。
※1人民元=23.7円換算(2026年8月18日時点)
まとめ
Unitreeが公開した「Superman」は、2メートルの跳躍と12.66メートル毎秒の走行を主張する人型ロボットです。数字だけを見れば人間の記録を上回りますが、試験条件は公開されておらず、第三者の検証も入っていません。作業用のハンドを持たず、製品化の予定も示されていない試作機であり、現段階では人型ロボットの運動性能がどこまで届くかを示したデモンストレーションとして見るのが適切です。それでも、3か月あまりでこの水準に到達したという事実そのものが、この分野の開発速度を物語っています。
