ゲーミングマウスのクリック感は、工場で決まった1種類を受け入れるしかない部品でした。カリフォルニアの周辺機器メーカーPwnageが予約を始めたワイヤレスマウス「Vanta」は、そこに小さなネジを差し込みます。スイッチを交換するのではなく、ボタンがスイッチを押す形そのものを機械的に組み替えるという発想です。重量は約49グラム、価格は159ドル(約2万5000円)からで、出荷は2026年9月28日に始まります。

ネジ1本でクリックの性格が変わる

Vantaの中心にあるのは、Pwnageが「VANTAGE Click System」と呼ぶ仕組みです。マウス上面の穴からドライバーを差し込み、ボタンとスイッチの間の力の伝わり方を物理的に調整します。動かせるのはクリック荷重、押し始めの抵抗、荷重カーブ、作動の感触、押し切る境目、戻りの感触の6項目で、左右のボタンは独立して詰められます。

ここで面白いのは、スイッチ自体は最後まで同じものだという点です。使われているのは接点を2つ持つSPDTスイッチで、寿命は7,000万クリック。同じスイッチのまま、力の通り道だけを変えて別の押し心地を作り出します。

磁気センサーで作動点を変える方式とは考え方が違います。センサー式は設定画面で数値をいじれる代わりに、検出のための回路が常に動きます。Vantaの調整は完全に機構側で完結するため、電池の持ちにも遅延にも影響しません。その代わり、設定を変えるたびに工具を握る必要があります。付属品にドライバーが入っているのはそのためです。

49グラムを支えるマグネシウム合金

筐体にはマグネシウム合金が使われています。マグネシウムは構造用金属としては最も軽く、アルミより33パーセント、チタンより50パーセント、鋼より75パーセント軽いとPwnageは説明しています。軽量化のために穴を開けて樹脂を削る手法と違い、素材そのものの密度で軽さを稼ぐ考え方です。

数字で見ると、本体容積は288立方センチメートルで重量は約49グラム。密度に直すと0.17グラム毎立方センチメートルとなり、Pwnageが挙げる一般的なゲーミングマウスの0.30と比べて半分近い水準です。同じ重さでも体積が大きいほど軽く感じられるという主張が、このスペックの背景にあります。

サイズは120×61×39ミリの左右対称形状で、表面はマット仕上げ。カラーはブラック、プラチナ、ナチョ、ホワイトの4色が用意されます。

センサーの位置まで動かせる

Vantaはセンサーの前後位置も変えられます。搭載するのはPixArtとPwnageが共同で調整したPAW3950ベースの「XERO」センサーで、指先で操作するフィンガーグリップ、指を立てるクロウグリップ、手のひらを乗せるパームグリップのそれぞれで、手の回転の中心にセンサーを合わせられるという狙いです。

Pwnageはこの機能の根拠として、アールト大学が公開しているマウスのセンサー位置に関する研究を挙げ、最大14パーセントのスループット向上と最大23パーセントの軌道のぶれ低減が見込めると説明しています。手の大きさや持ち方は人によって違うため、最適な位置も本来は人ごとに異なるという理屈です。

無線側はNordic SemiconductorのnRF54L15を採用し、有線・無線のどちらでも8,000Hzのポーリングレートに対応します。追加のハードウェアは要りません。センサーの最大解像度は36,000DPI、追従速度は750IPS、耐加速度は50Gです。電池は事務作業で最大160時間、満充電まで約2時間とされています。

主な仕様と価格

項目 内容
重量 約49グラム
筐体 マグネシウム合金
サイズ 120×61×39ミリ
センサー XERO(PixArt PAW3950カスタム)/36,000DPI
ポーリングレート 8,000Hz(有線・無線とも)
無線チップ Nordic nRF54L15
スイッチ SPDT/7,000万クリック
電池 最大160時間、満充電約2時間
価格 159ドル(ナチョのみ169ドル)
出荷開始 2026年9月28日

ブラック、プラチナ、ホワイトが159ドル(約2万5000円)、限定色のナチョが169ドル(約2万7000円)です。ソールは100パーセントPTFEのものが標準で付属し、ガラス製ソールを選ぶ場合は約20ドル(約3,100円)が上乗せされます。

※1ドル157円換算(2026年8月4日時点)

同梱物は本体のほか、予備のPTFEソール、ドット型ソール、グリップテープ、8K対応のUSBレシーバーと延長台座、USB Type-Cのパラコードケーブル、そして調整用のドライバーです。保証期間は1年で、30日間の返金保証が付きます。

まとめ

Pwnage Vantaは、クリックの感触を工具で機械的に調整できるという点で、これまでのゲーミングマウスとは異なる方向に踏み込んだ製品です。マグネシウム合金による約49グラムの軽さ、8,000Hzのポーリング、位置を動かせるセンサーと、競技向けの要素も一通り揃っています。価格は159ドルからで、出荷は2026年9月28日から。設定をソフトウェアで完結させたい人には向きませんが、押し心地に強いこだわりがある人にとっては試す価値のある1台になりそうです。