オープンソースのAIエージェント「OpenClaw」が、通称OpenClaw 2.0となるバージョンv2026.8.1を公開しました。7週間ぶりのリリースにもかかわらず、取り込まれた変更は1万6,000件を超えるプルリクエスト。インストールから会話画面、記憶、スキル、セキュリティまで、ほぼ全域が手を入れられています。既存環境を更新する人にとっては、移行手順を確認してから作業したい内容です。

沈黙の7週間は、土台の作り直しに使われていた

OpenClawはこれまで230日間で106回のリリースを重ね、多くは前回から1、2日以内という短い間隔で更新されてきました。その基準からすると、7週間の空白は明らかに異常です。開発が止まっていたわけではなく、貢献者の増加に開発基盤とリリース手順が追いつかなくなり、その両方を同時に作り直していたと説明されています。

結果として積み上がった規模が、これまでにマージされたプルリクエスト全体の約半分という比率です。今回のリリースは933人の貢献者によって構築され、うち569人が初めての参加でした。リリースノート側の集計では1万6,304件の変更を分析対象としており、その内訳は機能追加や改善が27件、不具合とセキュリティの修正が196件、ドキュメント関連が67件、そして残る5,514件が内部的な保守作業となっています。

会話画面はチャット中心に組み替えられた

ブラウザから使うコントロールUIは、会話を画面の中心に据える構成へ刷新されました。従来は起動時にOverviewという別ページが開いていましたが、これは廃止され、サイドバーに会話一覧、中央に作業中の会話という、一般的なAIチャットサービスに近い形になっています。

作業の脱線を防ぐ仕組みも入りました。/btwと入力すると別の会話が開き、本題の履歴を汚さずに横道の質問ができます。ファイルパネルからワークスペースのファイルを直接編集でき、Gitの差分やPRの状態を見るChangesパネル、ページを操作してスクリーンショットに書き込みを入れてから会話へ添付できるブラウザパネルも同居しました。ただしファイル編集は新規作成と削除に対応せず、Changesは読み取り専用のままです。

体感面の改善も数字で示されています。応答遅延を50ミリ秒に固定した模擬環境での既定チャット画面の計測では、JavaScriptのリクエスト数が140件から45件へ、起動時間が約1.6秒から575ミリ秒へ短縮されました。テーマは7種類が内蔵され、英語以外のUI言語も20ロケールが維持対象になっています。

会話を巻き戻せる記憶と、他人を呼べるセッション

記憶まわりでは、同じエージェントの別の会話から関連する文脈を引き出せるようになりました。対象は本人のプライベートな会話に限られ、グループやチャンネル、他のエージェント、削除済みの履歴は除外されます。個別チャットを隔離する設定がある場合は、その設定が優先されます。

保存先がSQLiteになったことで、任意のユーザー発言まで会話を巻き戻し、そこから分岐させて複数の枝を行き来できるようにもなりました。Web、macOS、iOS、Androidが対象です。巻き戻せるのは会話の枝であって、書き換えたファイルや送信済みのメッセージが元に戻るわけではない点は押さえておく必要があります。

そしてクラウドセッションの共有により、同じ作業に別のメンバーを呼び込めるようになりました。開発チーム自身がこの機能を使って今回のリリースを作ったとされており、文脈を保ったまま作業を引き渡せることが狙いです。

スキルの自動学習には、はっきりした歯止めがある

スキルの提案、検査、判断、適用履歴を1つの流れにまとめるSkill Workshopが加わりました。提案された指示とファイルを確認し、プラグインが提供する検査や採点の結果を見たうえで、適用、却下、隔離のいずれかを選べます。深刻なプロンプトインジェクションが検出された提案は、そもそも適用がブロックされます。

自動学習の動作は3段階です。offは自動修復を行わず、proposeは変更を確認待ちに積み、autoはWorkshopが管理するスキルを自動で作成・更新します。新規インストールはautoで始まりますが、既存環境を更新した場合はそれまでの設定が維持されます。

セキュリティ側では、チーム単位で使うSecret Storeが新設されました。ただし保存された値は暗号化されておらず、OpenClawの状態ディレクトリのファイル権限に依存すると明記されています。取り扱いには注意が必要です。

更新前に確認しておきたい移行の落とし穴

今回の最大の非互換は、セッションとトランスクリプトの保存先がSQLiteへ移った点です。古いファイルベースのリリースへ戻す場合、現行のCLIで旧形式のトランスクリプトを復元する作業が必要になり、移行後に作られたセッションは古いリリースからは見えません。更新前のバックアップが推奨されています。

期限が切られた作業も2つあります。廃止された設定キーが残っている場合は2026年9月18日までに次のコマンドを実行するよう案内されています。

openclaw doctor --fix

もう1つ、beta.5のセッションストア移行用ブリッジは2026年10月12日まで提供されます。

このほか、pnpm 11で2026.7.1を使っている場合はpnpm add -g openclaw@latestを一度実行する必要があり、Node自体はOpenClawが更新してくれません。新規CLIインストールはNode 22.22.2を使います。脆弱性が判明しているNodeとSQLiteの組み合わせは、状態ファイルを開く前に停止するようになりました。

まとめ

OpenClaw 2.0は、新機能を並べるより先に土台を整え直したリリースです。会話中心のUI、巻き戻せる記憶、共有セッションといった目に見える変化の裏で、保存形式の変更と期限付きの移行作業が同時に走っている点が実務上は重要になります。新規に始めるなら手順は明らかに軽くなりましたが、既存環境の更新はバックアップとdoctorコマンドを済ませてから臨むのが無難です。

※サムネイル画像はAI生成のイメージです