NVIDIAは、機械学習分野のトップ国際会議「ICML 2026」で自社の論文74本が採択されたことを明らかにしました。採択論文全体のうち約2,000本がNVIDIA製GPUを、145本が同社のオープンモデル群「Nemotron」を研究基盤として引用しており、オープンなモデルとインフラが現代のAI研究を支える土台になりつつある実態が浮かび上がっています[1]。ICML 2026は7月6日から11日まで韓国・ソウルで開催されています[2]。

採択論文の約2,000本がNVIDIA GPUを引用

ICML(International Conference on Machine Learning)は、世界中のAI研究者が最新成果を持ち寄る機械学習分野の最高峰会議のひとつです。NVIDIAによると、今年の採択論文にはっきりと表れたのは、オープンなフロンティアモデルとオープンなAIインフラが研究の前提になったという傾向です[1]。

数字を見るとその存在感は明白です。NVIDIA自身の採択論文は74本ですが、採択論文の約2,000本がNVIDIA GPUを引用し、145本はオープンモデルファミリーのNemotronを新しい研究の基盤として挙げています。さらに数百本の論文が、フィジカルAI向けの「NVIDIA Cosmos」、ロボット向けの「NVIDIA Isaac GR00T」、創薬・生命科学向けの「BioNeMo」といったオープンモデル群を活用しており、対象領域はロボティクス、自動運転、バイオ医療研究にまで広がっています[1]。

ロボットの「世界モデル」と生命科学が新潮流に

研究テーマの傾向としては、映像・動画生成、大規模言語モデル(LLM)やエージェント学習向けの強化学習、AI推論といった定番領域が引き続き主流を占めた一方、新しい分野の台頭も目立ちました[1]。

特に注目を集めたのがロボットの「世界モデル」です。代表例として挙げられた「DreamDojo」は、人間の動画から物理世界の振る舞いを学習し、Cosmosのオープンフロンティアモデルを基盤に、学習していない環境でもロボットがどう物体を扱うかを予測します。仮想ロボットの制御方針の評価や行動計画、遠隔操作までを仮想空間内で完結できるため、実機を使う際のコストやリスクを避けながら開発を加速できるとしています[1]。

生命科学分野も活況です。タンパク質の変異が機能に与える影響をAIがどれだけ正確に予測できるかを測る公開ベンチマーク「FLIP2」や、創薬に重要な分子特性を予測するBioNeMoの新しいオープンモデル「KERMT」などが発表されました。また、人手によるラベル付けデータに頼らず学習規模を拡大する手段として、合成データ生成(SDG)への関心の高まりも今年の特徴だといいます[1]。

単発のモデル公開から「研究スタック」へ

NVIDIAは、Nemotronが単発のモデルリリースではなく「研究スタック」として使われるようになったと分析しています。評価の比較対象となるオープンウェイト、学習や適応に使えるオープンデータセット、推論・ツール利用・安全性・データキュレーション・効率的な推論のためのオープンなレシピという3層がセットで提供されているためです[1]。

モデル以外の周辺ツールも充実してきました。学習データの整備を再現可能な形で行える「NeMo Curator」に加え、オープンなフロンティア・オムニモデル群「Cosmos 3」は、物理世界を認識・推論・計画・行動できるロボットや自動運転車、ビジョンAIの開発を支えます。このほか自動運転開発向けの「Alpamayo」、ロボティクス向けのIsaac GR00T、バイオ医療向けのBioNeMoといったオープンモデルファミリーが各産業の研究開発を後押ししています[1]。

Sakana AIやNAVERも オープンモデル活用の広がり

エコシステムの動きはNVIDIAの研究室の外にも広がっています。Basecamp Researchは遺伝子配列の解釈と設計を支援するDNA基盤モデル「EDEN」を開発しました。製薬大手のMerck & Co.は、創薬候補の分子が体内でどう振る舞うかの予測にKERMTを利用しています[1]。

日本のAIスタートアップであるSakana AIは、自社モデル「Fugu」と「Fugu-Ultra」を「Nemotron 3 Ultra」の上に直接構築し、AI研究の自動化に取り組んでいます。コーディング支援のKiloCodeはNemotronをコードルーティング(処理内容に応じたモデルの振り分け)に組み込み、トークンコストを最大90パーセント削減したと報告しました。韓国のNAVERはNemotronアーキテクチャーを使って韓国語AI研究向けの独自モデルを開発し、Together AIは自社プラットフォームでNemotronモデルのホスティングを提供しています[1]。

ヒューマノイドロボットの分野でも、HumanoidやLG Electronics、NEURA Robotics、Noble MachinesがIsaac GR00Tを産業用途への展開に採用したほか、1XやAgility、Boston Dynamicsなどは、Cosmosの世界モデルとシミュレーション環境の「Isaac Sim」「Isaac Lab」を使って次世代機の開発と検証を進めています[1]。

まとめ

ICML 2026の採択論文からは、オープンモデルとオープンデータセットがAI研究の共通言語になりつつある流れがはっきりと読み取れます。NVIDIAはGPUというハードウェアだけでなく、Nemotron、Cosmos 3、BioNeMoといったオープンな研究スタックの供給元としても学術コミュニティーへの浸透を深めており、この基盤の上でSakana AIのような企業の応用研究も進んでいます。研究の再現性と開発スピードを両立させる手段として、オープンモデルの存在感は今後さらに増していきそうです。

出典:https://blogs.nvidia.com/blog/open-models-icml-2026/

出典:https://icml.cc/