NTTPCコミュニケーションズ、ゲットワークス、フィックスターズの3社は9月8日、コンテナ型データセンターと水冷のGPUサーバー、統合監視、運用支援までを1つにまとめた「水冷GPUコンテナDC-PKG」の提供を始めました。自社の敷地にAI基盤を置きたいものの、冷却設備と運用体制がそろわないという企業を狙った提案です。
40フィートのコンテナごと届くAI基盤
パッケージの中核になるのは40フィートのコンテナです。内部には水冷GPUを冷やすCDUチラー、天吊り空調とInRow空調、セキュリティ監視用のカメラといったファシリティ設備が収まります。
ここに載るのがNVIDIAのアクセラレーテッド コンピューティング サーバーで、構成例としてNVIDIA HGX B300を搭載したHPE ProLiant Compute XD685が挙げられています。ファイアウォールやUTMなどのセキュリティ機器、ネットワークスイッチも同じパッケージに含まれる形です。
もう1つの柱が監視・運用支援です。コンテナ側の設備からGPUサーバーまでを1つの画面で把握できる統合監視を用意し、パフォーマンスの可視化と運用支援を組み合わせます。止まったことに気づくのが遅れて高価なGPUが遊ぶ、という事態を減らすのが狙いです。
電力は増える、冷やす場所は足りない
3社が前提として挙げているのは、企業のAI活用が検証段階から本番運用へ移りつつあるという変化です。エージェント型AIや生成AIによる推論が実業務に組み込まれる一方、サーバーの高性能化に伴って消費電力そのものは増え続けており、それを冷やせる設備を備えたデータセンターが足りていません。
そこに機密データを外へ出したくないという事情、ネットワークの制約、大容量データの通信コスト、遠隔地に置いた設備の運用負荷が重なります。結果として、AI基盤を自社の敷地内に置きたいという要望が強まっているというわけです。
ただし自前で建てようとすると、水冷サーバーに対応した設計・構築のノウハウ、GPUの性能を引き出せる専門人材、導入後の運用保守という3つの壁が立ちはだかります。この壁を越えられずに検討から本番運用まで長引くケースが少なくない、というのが3社の見立てです。3社は2025年12月に水冷GPUサーバーの運用効率を高めるPoCに成功したと発表しており、今回のパッケージはその検証結果を商品の形に落とし込んだものにあたります。
機密データと製造業のフィジカルAIを想定
想定される使い方として示されているのは2つです。1つは機密データの活用で、データやネットワークに厳格な要件がある業務でも、情報を外部へ持ち出さずにAI分析や生成AIを使えるようにするという用途です。
もう1つは製造業やフィジカルAIの領域です。設計データや生産ラインの映像を使った外観検査、異常検知といったAIを本番運用に乗せる場面が挙げられています。工場であれば土地も電力設備も自社にあることが多く、コンテナを置く前提条件がそろいやすいという事情もあります。
初期3億円から、納期は最短8か月
料金は個別見積もりが基本ですが、参考値が公開されています。GPUサーバー1台のスモール構成で初期費用が3億円から、月額が75万円から(いずれも税別、2026年8月31日時点の概算)。納期は標準的な構成で最短8か月とされており、敷地の条件や機器の調達状況によっては延びる可能性があります。コンテナの設置に必要な建築工事や電源工事はパッケージに含まれず、別途費用がかかる点も明記されています。
コンテナ側を担うゲットワークスは2013年に1台目のコンテナ型データセンターを発表して以来、2026年1月末時点で300台(20フィート270台、40フィート30台)の構築実績があるとしています。サーバー3,000台以上、GPU1万枚以上の設置・運用も手がけてきた会社です。ソフトウェア最適化を担当するフィックスターズは、AIモデルの学習と推論の高速化を専門にしています。
3社は今後、NVIDIA Vera Rubinプラットフォームなど次世代のサーバーへの対応を進めるとともに、分散型のAI基盤やエッジAIの領域にも広げていく方針です。
まとめ
「水冷GPUコンテナDC-PKG」は、コンテナ、水冷GPUサーバー、統合監視、運用支援をひとまとめにして自社敷地内に置けるようにした点が特徴です。初期3億円からという金額はGPUサーバー1台の構成としては軽くありませんが、設計から運用までを別々のベンダーに発注する手間と、そこで生じる調整の時間を丸ごと省けると考えれば、判断材料は価格だけではなさそうです。クラウドに預けられないデータを抱えたまま本番運用に進みたい企業にとって、現実的な選択肢が1つ増えたことになります。
