Metaが、ターミナル上で動くコーディングエージェント「Muse Code」をベータから正式版へ移行しました。ベータ公開からひと月も経たない切り替えで、目玉は月5ドルから始まる定額プラン3種と、開発者プレビューとして公開されたSDKです。先行するAnthropicのClaude CodeやOpenAIのCodexに対し、価格で真正面から勝負を挑む格好になっています。

月5ドル、15ドル、50ドルの3段構え

新しく用意されたのは、Everyday Usage、High Usage、Power Usageの3プランです。Everyday Usageが月5ドル(約800円)、High Usageが月15ドル(約2,400円)でEveryday Usageの3倍、Power Usageが月50ドル(約8,000円)で10倍の利用量という並びになります。

※1ドル160円換算(2026年9月1日時点)

最下位プランの目安として、Metaは5時間あたり10〜50リクエスト程度としています。ただし作業の複雑さによって上下する、という但し書きが付きます。

比較対象を並べると価格差の大きさが見えてきます。Claude CodeはPro(月20ドル、約3,200円)が入口で、Max 5xが月100ドル(約1万6,000円)、Max 20xが月200ドル(約3万2,000円)。Codexも月20ドルのPlusに含まれ、上位のProは月100ドルと月200ドルでそれぞれPlusの5倍と20倍という構成です。つまりMuse Codeの入口は、競合の4分の1の価格帯に置かれています。

もっとも、この数字をそのまま比べるのは危険です。Anthropicは絶対的なリクエスト数を公表しておらず、Proを基準にした倍率と、5時間単位・週単位の上限で表現しています。OpenAIはGPT-5.6 Solの場合でPlusが5時間あたり10〜100メッセージ、Pro 5xが50〜500、Pro 20xが200〜2,000という幅を示していますが、モデルやタスクの複雑さ、文脈量、推論やツール利用で変動するとしています。Metaの「10〜50リクエスト」も同じ性質の数字で、横並びの比較にはなりません。

従量課金と、安さの裏側

定額プランの登場後も、ベータ期からの従量課金は残ります。標準の単価は100万入力トークンあたり1.25ドル、100万出力トークンあたり4.25ドルです。

ここに、もう1段安い「Contributor」という階層があります。単価は入力0.10ドル、出力0.20ドルと桁が変わりますが、条件として、自分のプロンプトと生成結果をMetaの製品改善に使うことへ同意する必要があります。自社の非公開コードを扱う現場では、この時点で選択肢から外れます。安さの原資が何なのかが、価格表に書かれている形です。

Muse Code自体の懐疑論も、この一点に集中しています。Metaの収益の柱は広告であり、破格の価格設定は開発データを集めるための入口ではないか、という見方です。ベータ時点の議論がそのまま持ち越されました。

エージェントを束ねる3つの新機能

正式版では機能面でも手が入りました。動かしているのはMeta自社のMuse Spark 1.2です。

セッション間メッセージングは、複数のMuse Codeセッションが同じ領域に手を出しているとき、互いに文脈と状態を直接受け渡せるようにします。片方の端末で出た警告を、もう片方へ手で打ち直す必要がなくなります。

Workflowsは、ベータ時点からあった複数エージェント機能を一段組み上げたものです。役割の異なるエージェントを大きな仕事に沿って編成し、途中の成果物を段階間で引き継ぎながら、最後に1つの結果として返します。専用のコントロールルームから進行を監視し、途中で方向を修正することもできます。

Rewindは、セッション内の会話とコード変更をまとめて過去の時点へ巻き戻す機能です。エージェントが長時間走る前提の道具では、どこまで戻すかを選べること自体が安全装置になります。

SDKで「CLIの外」へ出る

もう1つの目玉が、開発者プレビューとして公開されたSDKです。これを使うと、Muse Codeをプログラムから制御できます。セッションの開始と再開、指示の送信、応答の処理、エージェントの挙動に対する反応まで、人がターミナルに張り付かなくても回せるようになります。IDE連携や社内の開発ツール、あるいはMuse Codeを土台にした独立したエージェント製品まで、応用の幅が一気に広がります。

土台にあるのはMuse Session Protocol(MSP)で、外部のクライアントがMuse Codeのセッションと通信するための規約です。MetaはTypeScript向けSDKを提供していますが、MSPを直接実装すれば他の言語からでも接続できます。

この方向性自体は目新しいものではありません。AnthropicのClaude Agent SDKも、OpenAIのCodex SDKも、コーディングエージェントを他のツールへ埋め込むための仕組みです。注目すべきは速度で、CLIをベータ公開してからひと月足らずで、Metaは埋め込み用の入り口まで出してきました。

まとめ

Muse Codeの正式版は、月5ドルから50ドルの3プランと、開発者プレビューのSDKを軸にした発表です。従量課金では100万入力トークン1.25ドル、出力4.25ドルが標準単価で、データ提供に同意すると入力0.10ドル、出力0.20ドルまで下がります。機能面ではセッション間メッセージング、Workflows、Rewindが加わりました。Claude CodeとCodexが先行するなかで、価格と機能追加の速さで押し切ろうとする姿勢がはっきり出ています。実際に選ぶ側は、単価だけでなく、自分のコードとプロンプトがどこへ行くのかを含めて見ることになりそうです。