LG Electronicsが、9月4日からベルリンで開かれる家電見本市IFA 2026に合わせて、スマートホーム基盤「LG AI Home」の新しい姿を公開しました。中心にあるのは「ThinQ Claw」というテキストチャット型のAIエージェントです。家電を1台ずつ操作する道具ではなく、利用者が今何をしようとしているのかを文脈ごと理解し、関係する家電やサービスをまとめて動かす役割を担います。あわせて、2024年に買収したAthomのスマートホーム基盤「Homey」を軸にしたエコシステムの拡大や、集合住宅・商業施設向けの「ThinQ Pro」の欧州初展開も発表されています。
命令ではなく「予定」を話しかける
これまでのスマートホームでは、家電を思いどおりに動かすために「この時間にこの動作を」という自動化のルールを自分で組む必要がありました。ルールを作るのは手間がかかるうえ、日々の予定が少し変わるだけで意図と合わなくなります。
ThinQ Clawが目指しているのは、この作業をなくすことです。利用者は「週末に友人を招く」「これから帰る」といった予定や状況を、チャットで普段の言葉のまま伝えます。エージェントはその一文を単発の命令としてではなく、暮らしの流れの中にある出来事として解釈し、必要な手順を自分で組み立てます。
LG Electronicsが挙げている例は次のようなものです。来客の準備であれば調理家電をあらかじめ整えておく。帰宅前であれば室内の空気の質や温度を確認し、その時の状態に合わせて快適な環境を作っておく。くつろぎたい時間には、気分に合った体験を提案する。公開された紹介画像では、最近の食材の購入履歴をもとにラザニアを提案し、レシピまで示す様子が描かれています。
カレンダーとつながり、好みを覚えていく
ThinQ Clawは家電の制御にとどまらず、カレンダーなど日常的に使うサービスとも連携します。予定表に入っている情報をもとに動けるので、利用者がいちいち状況を説明しなくても、次に何が必要かを先回りしやすくなります。
もう1つの特徴が記憶です。利用者の好みや苦手なものを覚えておき、時間がたつほど提案が本人に合ったものになっていくと説明されています。家の中にいる時だけでなく、外出先からのやり取りも想定されており、スマートフォンのチャット画面が家全体の窓口になる格好です。
技術面では、オープンソースのAIエージェントとして知られる「OpenClaw」のコンセプトを土台に、LG AI Home向けに最適化したと説明されています。ただし、どの言語モデルを使うのか、提供開始の時期や対応地域、利用料金といった具体的な情報は今回の発表には含まれていません。IFA 2026の会期中、会場内の「AI Home Zone」でデモが行われる予定です。
Homeyを軸にした他社製品との連携とエネルギー管理
AI Home Zoneでは、Homeyを中核にした開放型のエコシステムも紹介されます。HomeyはオランダのAthomが開発してきたスマートホーム基盤で、LG Electronicsは2024年に同社を買収しました。メーカーや通信規格の違いを吸収して、さまざまな機器を1か所で管理できるのが強みです。
展示の目玉になるのが、家庭のエネルギー管理システム(HEMS)のデモです。スマートメーター、太陽光パネル、家庭用蓄電池、EV充電器をLGの家電とつなぎ、電気を作る・ためる・使うタイミングを状況に応じて調整します。時間帯によって電気料金が変わる契約に対応している地域では、安い時間に充電や運転を寄せることで電気代を抑える狙いがあります。もっとも、効果は使い方や料金プラン、地域の条件によって変わるという注記も付いています。
集合住宅・商業施設向けの「ThinQ Pro」も欧州へ
個人の住まい向けだけでなく、IFA 2026では業務用の管理基盤「LG ThinQ Pro」が欧州で初めて披露されます。対象は集合住宅や商業施設で、建物内の機器や設備をまとめて効率よく管理するためのものです。AI Homeの考え方を、家庭から共用空間や職場へ広げる位置づけになります。
セキュリティについては、家電、サービス、利用者データを保護する枠組み「LG Shield」がエコシステム全体に適用されます。生活の予定や好みをエージェントに預ける仕組みである以上、この部分がどこまで信頼できるかは、実際の提供開始後に注目したいところです。
LG Home Appliance Solution Companyの社長を務めるBaek Seung-tae氏は、ThinQ ClawはAIが利用者の意図と生活の文脈を理解し、より個人に合った日常を支える、LG AI Homeの次の段階を示すものだとコメントしています。
まとめ
ThinQ Clawは、家電に命令する代わりに予定や状況をチャットで伝えると、意図をくみ取って家電とサービスをまとめて動かすAIエージェントです。カレンダー連携と好みの記憶によって、使うほど提案が本人に寄っていく設計が売りになっています。Homeyによる他社製品との連携、HEMSによるエネルギー管理、業務用のThinQ Proまで含めて、LG Electronicsは「家がこちらの事情を理解する」方向へ舵を切ったと言えます。提供時期や料金、対応地域はまだ明らかになっておらず、まずはIFA 2026の会場でどこまで実用的なデモが見られるかが最初の判断材料になりそうです。
※サムネイル画像はAI生成のイメージです
