Lenovoは2026年9月3日、ベルリンで開催中のIFA 2026に合わせた自社イベント「Lenovo Innovation World」で、LenovoとMotorolaの端末に組み込む個人向けAI「Lenovo & Motorola Qira」の対応範囲を広げると発表しました。メモリ16GBのLenovo製PCへの対応、Android 17に更新されたMotorola端末への展開、初のウェアラブル対応となる「moto watch ultra」への搭載、そしてGmailやSlackといった日常のアプリとの連携が柱です。現時点で日本語は対応言語に含まれていません。
Qiraとは:アプリではなく端末そのものに組み込むAI
Qiraは、Lenovoが2026年1月にCES 2026に合わせて開いたTech Worldで初めて公開した個人向けAIです。単体のアプリとして後から載せるのではなく、PC、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルにシステムレベルで組み込み、端末をまたいで作業の続きを引き継ぐことを狙っています。3月のMWC 2026ではYoga、IdeaPad、Legion、ThinkPadなど20機種超のPCを対象に配信が始まり、タブレットではIdea Tab Pro Gen 2が最初の対応機種になりました。
Lenovoによると、その後の半年で対応するPCの構成は法人向けと個人向けを合わせて80を超え、一部のタブレットとMotorola製スマートフォンにも広がっています。対応言語は現在6言語で、3月時点の内訳は英語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ポルトガル語でした。今後さらに言語を増やすとしていますが、日本語の時期は示されていません。
Qiraの中核にあるのは、利用者が共有を選んだ情報から作られる個人用のナレッジベースです。通知の要約や端末をまたいだ記憶をひとつの画面にまとめ、見逃したことを後から追いつき、前に何をしていたかを思い出して続きから再開できるようにする、というのがLenovoの説明です。AIエコシステム担当バイスプレジデントのDan Dery氏は、個人向けAIは「プロンプトを待つだけの、もうひとつのアプリであってはならない」と述べ、何が大事かを理解し、端末をまたいで一緒に動き、利用者が選んだエージェントやアプリの次の一手を取りまとめる存在にしたいと語っています。
対応機種の拡大:16GBメモリのPCとAndroid 17のMotorola端末へ
今回の発表で最も間口が広がるのがPCです。これまでQiraは大容量メモリを積んだ構成が対象でしたが、メモリ16GBのLenovo製PCまで対応が広がります。ローカルで動かすモデルの最適化を続けたことで、標準的な構成でも端末内の処理を土台にできるようになったとしています。対象となる利用者はLenovoのサイトからQiraをダウンロードでき、対応機種への出荷時プリインストールは後日始まる予定です。
Motorola側では、Android 17への更新に合わせてedge、signature、razrの各シリーズの対象機種にQiraが届きます。現在「moto ai」を備えるスマートフォンや「AI Now」を備えるタブレットでは、Android 17への更新でMotorola Qiraに世代交代する形です。配信は段階的で、時期は機種と市場によって異なります。Lenovoは2026年末までにさらに別の製品ファミリーや形状の端末へ広げる計画も示しました。
moto watch ultra:初めてQiraを積んだウェアラブル
ウェアラブルでの最初の対応機種は、同じくIFA 2026で発表されたMotorolaの「moto watch ultra」です。手首を上げるか「Hey Qira」と話しかけるだけで、一般的な質問をしたり、LenovoとMotorolaの端末をまたいで蓄えた記憶から情報を引き出したりできます。利用にはMotorolaアカウントと、Qira対応端末との接続が必要です。
時計そのものはWear OSを採用し、Google Gemini、Google マップ、Google ウォレットといったGoogleのアプリも使えます。46mmのステンレス製ボディに1.5インチ、最大2,700ニトの有機ELを載せ、Motorolaの時計として初めてLTE(eSIM)に対応しました。処理はSnapdragon W5+ Gen 1が担い、2周波GPS、IP68と5気圧防水、Corning Gorilla Glass 3を備えます。健康面ではPolarのアルゴリズムによる睡眠と回復の分析に加えてランニングコーチ機能も搭載し、電池は常時表示をオフにした状態で最長2日、15分の充電で最長24時間使えます。米国では9月10日にMotorola.comで349.99ドル(約5万4,000円)で発売され、Verizonでは9月24日から扱われます。日本での発売は発表されていません。
※1ドル155円換算
Workatoとの協業でGmailやSlackにつながる
もうひとつの柱がアプリ連携です。Lenovoは業務アプリ同士をつなぐ自動化基盤を手がけるWorkatoと組み、対応端末上のQiraからGmail、Google カレンダー、Google コンタクト、Slack、Outlook メール、Outlook 予定表に接続できるようにします。メール、予定表、チャットツールをそれぞれ開いて探し回らなくても、Qiraに尋ねれば必要な情報を見つけ、そのまま操作まで進められる設計です。
具体例としてLenovoが挙げるのは、予定が変わったときや、メールやグループチャットに重要な更新が届いたときです。利用者は「Catch Me Up」機能で見逃した内容を追いつき、同じ画面から返信や予定の調整といった行動に移れます。連携は利用者の許可と管理のもとで動くとしており、アプリ連携の内容は市場、サービス、アカウントの種類によって変わります。
NotionとPerplexityも:メモと調べものを行き来する
アプリ連携はNotionとPerplexityにも広がります。Notionアカウントを接続すると、Qiraからプロジェクトの情報を呼び出したり編集したりできます。Perplexityとの連携は以前から提供されていましたが、今回の拡張で深い調べものに対応し、関心のあるテーマについて視覚的な参考資料まで得られる場面が増えるとしています。ムードボードや文書、調査といった作業を、アプリや端末を切り替えずに進めることが狙いです。
ローカル優先の設計と今後の見通し
プライバシー面でLenovoが強調するのは、ローカル優先のハイブリッド構成です。対応する端末では処理を端末内で優先し、個人用ナレッジベースに追加した情報は暗号化して端末内に保存します。クラウド処理が必要な場合も、その要求に必要なプロンプトと関連する文脈だけを暗号化した経路で送る仕組みです。端末間の同期は任意で、利用者が制御できます。
なお、IFAで披露された機能の提供時期や内容は、端末、市場、構成、プラットフォームによって異なります。一部の機能はソフトウェア更新、利用者の許可、対応アプリやサービス、アカウントのサインイン、インターネット接続を必要とします。
まとめ
Lenovoは、PC、スマートフォン、タブレット、時計にまたがるひとつのAIという構想を、IFA 2026でひと回り現実に近づけました。16GBメモリのPCへの対応と、Android 17のMotorola端末への展開で対象が広がり、moto watch ultraで手首からも呼び出せるようになります。Workatoを介したGmailやSlackとの連携は、調べる段階から実際に行動する段階へQiraを押し出す一手です。一方で対応言語は6言語にとどまり、日本のユーザーが日本語で使える時期はまだ見えていません。
