Googleが5月のGoogle I/Oで披露した最上位AIモデル「Gemini 3.5 Pro」が、6月中の一般提供を目指して最終段階に入っています。200万トークンという桁違いの文脈長と、じっくり考える新モード「Deep Think」を看板に、推論とマルチモーダルの最前線で勝負するモデルです。ただし正式公開はまだ先で、現時点では限定プレビューにとどまっています。

最上位に位置づけられる「Gemini 3.5 Pro」

Gemini 3.5 Proは、Googleの最新モデル群「Gemini 3.5」の最上位ティアにあたります。これまで一部の最難関タスクを担っていた「Ultra」級の用途、つまり最も難しい推論や高度なマルチモーダル処理、長大な文脈の読み込みを、このProが引き受ける位置づけです。

看板となる仕様が200万トークンの文脈window(コンテキストウィンドウ)です。文脈長はモデルが一度に扱える情報量を左右する要素で、これは下位のFlashが持つ100万トークンの2倍にあたります。長い資料や大規模なソースコード、長時間に及ぶ会話をまるごと作業メモリに収められる計算で、扱える素材の幅が大きく広がります。

もう1つの目玉が「Deep Think」と呼ばれる推論モードです。すばやく答えるよりも、時間をかけて複雑な問題を考え抜くことに重きを置いた仕組みで、画像やテキストをまたいで理解するマルチモーダル能力とあわせ、難度の高い作業での実力を狙います。

FlashとProの二段構え、気になる料金

Googleはすでに春先に、高速で安価な「Gemini 3.5 Flash」を投入済みです。Flashは前世代のProを上回るコーディング性能やエージェント性能を見せた一方で、最も難しい推論では一歩譲るとされていました。今回のProは、まさにその穴を埋める役割を担います。高頻度の作業はFlash、骨の折れる作業はProという二段構えは、各社に共通する設計です。

料金面では、まず個人向けのサブスクリプションから提供される見込みです。月額20ドル(約3,200円)のProプランと、月額250ドル(約4万円)のUltraプランが入り口になり、Deep ThinkはUltraプラン限定の機能として案内されています。API経由の従量課金は、過去の世代と同じくFlashの約10倍が見込まれ、入力100万トークンあたり約15ドル(約2,400円)、出力100万トークンあたり約60ドル(約9,700円)前後になると予想されています。この水準なら、AnthropicやOpenAIの最前線モデルとも十分に張り合える価格帯です。

※1ドル=161円換算(2026年6月24日時点)。従量課金の価格は予想値です。

競争激化のなか、まだ「予告」の段階

注意したいのは、6月下旬の時点でもGemini 3.5 Proがまだ広くは出荷されていない点です。I/OでGoogleのSundar Pichai最高経営責任者は、観客に向けて「あと1か月ほど待ってほしい」と述べ、即時提供を期待していた会場からはため息も漏れたと伝えられています。モデルは社内利用と企業向けの限定プレビューで動いているものの、一般提供はなお準備中です。

正式に公開され、第三者が検証できるようになるまでは、ここで挙げた性能はあくまでGoogleの主張にとどまります。発表のスケジュールはずれ込むこともあるため、「6月」は確約ではなく目標と読むのが堅実でしょう。最前線のAI競争は激しさを増しており、ライバル各社が高性能モデルを相次いで投入し、低価格を打ち出す中国勢も加わって値下げ圧力が強まっています。Googleは単一の最強モデルに賭けるより、価格帯ごとにモデルをそろえて自社製品やクラウドに組み込む、幅と流通を重視する戦略を取ってきました。Gemini 3.5 Proは、その布陣で市場の最上位を狙う一枚といえます。

まとめ

Gemini 3.5 Proは、200万トークンの文脈と「Deep Think」を武器に、Geminiシリーズの頂点を担うモデルとして6月中の一般提供を目指しています。まず注目すべきは、予定どおり出荷されるか、そして第三者の検証で実力がどう評価されるかです。仕様が約束どおりなら、Googleは競合の最上位に対抗できる旗艦を手にすることになります。発表が先行しがちという見方を返上できるか、これからの数週間が試金石になりそうです。