AIソフトウェアエンジニア「Devin」を開発するCognitionが、10億ドル(約1,530億円)規模の資金調達を最終段階に進めていると報じられました。想定される評価額はおよそ470億ドル(約7兆2,000億円)で、5月に付いた260億ドル(約4兆円)から4か月ほどでほぼ倍になります。投資家からの引き合いは100億ドル(約1兆5,300億円)近くに達したとされ、調達額はさらに膨らむ可能性があります。
※1ドル153円換算(2026年9月8日時点)
4か月で評価額がほぼ倍になる計算
今回の話は9月2日付で、複数の関係者の話として伝えられたものです。Cognition自身はコメントを控えており、調達額も評価額も条件も、交渉次第で変わり得る段階にあります。確定した取引ではない点は押さえておく必要があります。
それでも数字の並びは目を引きます。同社は2025年にAI向け開発環境を手がけるWindsurfを取得し、その直後に5億ドル(約770億円)を評価額98億ドル(約1兆5,000億円)で調達しました。翌月にはFounders Fund主導で4億ドル(約610億円)を追加し、評価額は102億ドル(約1兆5,600億円)に上がっています。2026年5月にはLux Capital、General Catalyst、8VCが主導するシリーズDで10億ドルを集め、260億ドルの値付けを受けました。1年余りで100億ドル台から470億ドル規模まで来たことになります。
売上も同じような角度で伸びている
評価額の膨らみ方だけを見ると過熱を疑いたくなりますが、売上の伸び方もそれに近い角度です。年換算の経常収益は5月時点の4億9,200万ドル(約750億円)から9億ドル(約1,380億円)超まで、4か月ほどで倍近くに増えたとされます。
Cognitionの創業は2023年後半です。国際情報オリンピックで3度金メダルを獲得しHarvard Universityを中退したScott Wu氏を筆頭に、競技プログラミング出身の3人が立ち上げました。2024年3月に公開されたDevinは、指示を受けてコードを書き、テストし、デプロイまで自律的に進めるエージェントとして設計されています。当初は開発者向け製品の色が濃かったものの、現在は金融サービス、自動車、企業向けITといった領域へ導入が広がりました。コーディング支援ツールというより、既存システムの移行や保守を任せる作業者として売り込む形です。
自社コードの89パーセントをDevinが書いている
5月の調達時、Cognitionは自社のコードのうち89パーセントをDevinが書いていると公表しました。2025年12月時点では13パーセントだったので、半年足らずで比率が入れ替わったことになります。
導入例として同社が挙げているのが、Mercedes-Benzでのレガシーシステム移行です。社内では8か月かかると見積もっていた作業が、Devinを投入したところ8日で終わったと説明されています。この種の数字は対象システムの条件に大きく左右されるため、そのまま一般化はできません。ただ、人手をかけても成果が見えにくい移行作業に自律エージェントを当てるという使い方は、企業に売り込むうえでわかりやすい訴求ではあります。
独立系の大型プレイヤーが1社減った
投資家の関心が急に高まった背景として指摘されているのが、競合の再編です。AIコーディングの分野でCognitionの最大のライバルだったCursorは、開発元のAnysphereごとSpaceXに600億ドル(約9兆2,000億円)で買収され、2026年8月14日に取引が完了しました。Cursorは現在、SpaceXのAI部門に組み込まれています。
伝えられているところでは、SpaceXはCognitionにも買収を打診し、断られたとされます。結果として、AIネイティブなソフトウェア開発に賭けたい投資家にとって、独立して残っている大型の選択肢はCognitionにほぼ限られる状況になりました。引き合いが100億ドル近くまで積み上がったのは、この希少性が効いているという見方です。
ノーコード寄りの陣営も伸びています。スウェーデンのLovableは8月に4億ドルを評価額133億ドル(約2兆円)で調達し、話し言葉でアプリを組み上げる方向を狙っています。Replitも3月に4億ドルを評価額90億ドル(約1兆4,000億円)で集めました。開発者に自律エージェントを売るCognitionと、開発者以外にソフトウェアを作らせようとする2社とでは、狙っている市場が違います。
まとめ
Cognitionは10億ドル規模の調達を評価額470億ドルで進めていると報じられ、5月の260億ドルから4か月ほどでほぼ倍の水準に達しました。年換算売上も4億9,200万ドルから9億ドル超へ伸びています。競合のCursorがSpaceX傘下に入って独立系の大型プレイヤーが減り、資金が1社に集中しやすい状況も追い風です。ただし今回のラウンドはまだ完了しておらず、金額も条件も動く余地が残っています。Devinがコードを書けることは示されましたが、その先に470億ドルを支える事業をどう組み立てるかは、これからの数字で確かめるほかありません。
