AnthropicがClaude Enterprise向けに、チームのClaude利用をまとめて読み解く「スマートレポート」をベータ機能として公開しました。管理画面に並ぶ利用回数や支出の数字ではなく、実際の会話ログをClaudeが読み、どんな仕事に使われ、いくらかかり、どこでつまずいているかを文章と図で示す仕組みです。ベータ期間中は1組織あたり月10本まで無料で作成できます。

会話ログそのものを読ませて束ねる

レポートを作れるのは、Primary Owner、Owner、Admin、または分析の閲覧権限を持つカスタムロールの利用者です。作成時には、対象となるチームや部門、最長28日ぶんの期間、含める製品(チャット、Claude Code、Claude Cowork)、分析の重点、そしてClaudeに答えさせたい独自の質問を指定します。

そのうえでClaudeが対象範囲の会話ログを標本として読み、内容の近いものを作業の束(ワークストリーム)と成果物の種類にまとめ、それぞれに支出を紐付けて所見を書き起こします。図はすべて操作でき、ワークストリームをクリックすると、その中のセッションが費用の高い順に並びます。各セッションには1段落の要約、使った製品、日付、成果物の種類が添えられます。レポートはドリルダウンを保ったままHTMLとして書き出せます。

生成にかかる時間は数時間で、完成するとメールで通知が届きます。

費用と摩擦を切り分けて並べる

レポートの構成は決まっています。何に最も使われたかをセッション数と支出の両面から示すワークストリーム、分析・文書・原稿・コードといった成果物別の分類、成果物の種類ごとの1セッションあたり平均支出、各セッションが何を生んだかという結果の一覧が並びます。

特徴的なのは、うまくいかなかった側も同じ粒度で扱う点です。設定されていないコネクター、指示と噛み合わない出力、承認やサインインによる中断、ツールの失敗、やり直しの繰り返しといった摩擦が分類され、件数とともに示されます。使える成果を何も生まなかったセッションや、業務と関係のない私的なセッションは、要約も個別の閲覧も伴わない集計値としてのみ数えられます。

さらに、同じ手順が繰り返されている箇所を見つけ、共有スキルとして束ねる候補を提案する項目があります。通話メモを次のアクションに変換する、取引先の要点資料を作る、四半期レビューの構成案を書くといった例が挙げられ、それぞれにスキルを設定するための下書きプロンプトが添えられます。支出が集中しているセッションの一覧や、複雑さ・削減できた時間・Claudeが自律的に動いた長さ・必要な専門性で高く評価されたセッションの一覧も含まれます。作成時に独自の質問を足していれば、その回答と根拠になったセッションが専用の節にまとまります。

個人の評価には使わせないという線引き

Anthropicは、この機能を個人の勤務評価や雇用の判断に使うためのものではないと明記しています。設計にもそれが表れており、組織設定にある「スマートレポート(ベータ)」の切り替えは初期状態でオフです。個人を特定できる形での表示を許す切り替えも別に用意され、こちらも初期状態ではオフになっています。

オフのままなら、ドリルダウンの表示は一律で「User」となり、セッションIDも隠されます。オンにした場合でも既定の表示は「User」のままで、閲覧者が明示的に操作して名前を表示させたときにだけ実名が出ます。そしてその操作は記録に残ります。私的な会話は集計値にしか現れず、要約も個別セッションも名前も表示されません。

利用できない構成もあります。顧客管理の暗号鍵(CMEK)、HIPAA構成、Access Transparencyを使っている組織は対象外です。データを保持しない設定でClaude Codeを使っているEnterprise組織も同様です。

数字の可視化から、中身の読み解きへ

Anthropicは2026年7月2日に、Claude Enterpriseの管理画面へ利用状況と支出の分析機能を追加しています。グループ別・利用者別の使用量と費用を、作成された成果物や使われたスキル・コネクターと並べて表示する作りで、Claude Code向けの指標や、自然言語で問い合わせられる分析チャット、外部ツールへ取り込むためのAPIも用意されました。

今回のスマートレポートは、その延長線上で扱う対象を変えたものと言えます。前者が何回使い、いくら払ったかを数える仕組みだとすれば、後者は会話の中身を読んで何をしていたかを言葉にする仕組みです。導入はしたものの効果を説明できないという悩みは多くの企業に共通しており、契約更新の場に持ち込める材料をベンダー側が用意し始めた、という見方もできます。

レポートは組織内の特定の相手にだけ共有でき、共有リンクを渡された人と、もともと閲覧権限を持つ管理者だけが開けます。生成中の段階で共有先を決めておくこともでき、不要になったレポートはアーカイブしてから削除する流れです。

まとめ

スマートレポートは、Claude Enterprise向けに公開されたベータ機能で、最長28日ぶんの会話ログをClaudeが読み、作業の束・成果物・費用・摩擦・共有スキルの候補としてまとめます。生成には数時間かかり、ベータ期間中は1組織あたり月10本まで無料です。個人の特定は初期状態で無効、私的な会話は集計のみという線引きが最初から引かれている点も、導入を検討するうえでの判断材料になります。

※サムネイル画像はAI生成のイメージです