インドを中心に中古車の売買を手がけるCars24が、OpenAIの音声・チャット型AIエージェントを顧客対応に組み込み、その成果を公開しました[1]。電話や書類確認、追客が何日も続く中古車取引で、AIはどこまで会話をさばき、離脱した見込み客を呼び戻せるのか。公開された数字とともに、購入・売却の各段階での使いどころを整理します。

Cars24とはどんな企業か

Cars24は、インドを主戦場に中古車の購入・売却を手がける、世界最大級の「AIネイティブ」な自動車取引プラットフォームです。UAEやオーストラリアでも事業を展開し、車探しやローン、下取り、購入後のサービスまで、クルマの所有にまつわる一連の流れを支えています[1]。中古車の流通を効率化することで、車両の使用期間を延ばす役割も担っています。

インドの中古車取引の多くは、いまも手作業が中心で、規制も多く、プロセスが分断されがちです。一般的なEC(ネット通販)と違い、車の売買は1回のやり取りで完結することがほとんどありません。取引の大半はアプリの外側で進み、電話や書類確認、その後のフォローに数日から数週間かかることも珍しくありません[1]。両社の協業は2026年3月に公表されており、Cars24はこの複雑さを、運用チームを際限なく増やさずにさばく方法を模索してきました[2]。

購入・売却の各段階を担う音声・チャットAI

Cars24はOpenAIのAPIを使い、購入・売却・ローン・追客・サポートに対応する音声・チャットのエージェントを構築しました。手を付けたのは、会話が成約を左右する営業ファネルの中盤から終盤という、最も難しい部分です[1]。

購入希望者がCars24に電話をかけると、AIエージェントが予算や家族構成、通勤の事情、好みの車種を尋ね、在庫の中から車を提案し、試乗を予約し、ローンの検討まで手伝います。試乗の前には来店の確認や、希望が変わっていれば別の車の提案、ローン用の追加情報の収集を行い、試乗後には購入を進めるか、別の車を見るかといった意向を確認します。購入後も、フィードバックや保証、返品、アフターサービスの対応を続けます[1]。

売り手側の流れもよく似ています。AIエージェントが車両の情報を集め、査定を予約し、リマインドを送り、逃した予約の再調整を助け、他社で売却済みの場合には競合の状況を聞き取ります。これまで10日ほどで脱落していた見込み客に対しては、AIが改めて連絡を取って購入意欲を確かめ直し、Cars24が希望価格に応えられる段階で再びファネルへ戻します[1]。

成果は数字にも表れている

Cars24によれば、AIエージェントが処理する会話は月に100万分を超えます。カスタマーサポートの解決率は50パーセント向上し、主要な業務の対応時間は80パーセント短縮されました。かつては失われていた売り手の見込み客のうち、12パーセントをAIによる再アプローチで回復できたとしています[1]。

同社の担当者は「インドで車を買うのは取引ではなく旅のようなもので、長年その体験は電話に出た担当者次第だった。AIがそれを変える。いまや月に100万分を超える会話をAIで扱い、どんな規模でもすべての顧客に質の高い体験を届けられる」と語っています[1]。

Codexが開発以外の業務にも広がる

Cars24は、AIコーディング支援エージェント「Codex」をソフトウエア開発の工程全体に導入し、単なるコーディングツールではなく日々の業務に加わる一員として扱っています[1]。

プロダクトマネージャーはCodexを使ってタスク管理ツール「Linear」のチケットを作成・整理し、エンジニアはバグ報告にCodexを割り当てて定義済みの作業を任せます。CodexはGitHub上の作業を要約してチームに共有し、進捗確認のための会議を減らしています。用途は開発部門にとどまりません。財務や投資家向け広報のチームは、社内システムから数値を引き出して分析し、報告資料を用意する作業にCodexを使っています。一定額を超える購買申請や発注を点検し、異常がなければ自動で承認するといった使い方も生まれています[1]。

社内では、SlackやGmail、WhatsAppなどをつないでやり取りや日程調整、採用の流れを管理する「参謀役(chief of staff)」のようなAIを、各チームが自分たちで作り始めています。Cars24は中枢部門の約600人にChatGPT EnterpriseとCodexを展開しており、日次のアクティブ利用率は85〜90パーセントに達します。エンジニアリングだけでなく、財務、法務、マーケティング、オペレーションの各チームが、AIを使って業務の仕組みを自分たちで組み立てています[1]。

まとめ

Cars24は、電話や書類確認が何日も続くインドの中古車取引に、OpenAIの音声・チャットエージェントを組み込み、月100万分超の会話の自動化、サポート解決率の50パーセント向上、失注した見込み客の12パーセント回復といった成果を報告しました。加えて、Codexが開発以外の財務や広報にまで広がり、社員が自らAIの仕組みを作る「AIネイティブ」な働き方が社内に根づきつつあります。AIを試験導入から実運用へ移すには、特定の業務の流れに具体的に結びつけることが鍵になる、という示唆を含む事例です。

出典:https://openai.com/index/cars24

出典:https://knowstartup.com/news/cars24-partners-openai-ai-automotive/