Appleは6月18日、ブラジルのiOSアプリに関する一連の変更を発表しました。同国の競争規制当局CADEとの合意を反映したもので、デベロッパは代替アプリマーケットプレイスでの配信や、Apple以外の決済処理といった新しい選択肢を得ます[1]。変更はiOS 26.5から有効になり、手数料の体系も大きく見直されました。一方でAppleは、マルウェアや詐欺など新たに生じるリスクに備える保護策も併せて導入しています。ここでは、何がどう変わるのかを整理します。

規制当局CADEとの合意が出発点

今回の変更は、ブラジルの競争規制当局CADE(Conselho Administrativo de Defesa Econômica)との合意にもとづくものです[1]。この合意は2025年12月に成立しており、2022年に中南米の電子商取引大手MercadoLibreがAppleのApp Store運用を問題視して申し立てた紛争を解決する形になりました[2]。一連の変更はiOS 26.5以降を対象に有効となり、デベロッパは発表に合わせて自身のアプリへ新機能を組み込めるようになりました[1]。昨年12月に日本で導入された仕組みと似た内容で、Appleは欧州のデジタル市場法(DMA)よりも、特に子どもに対するプライバシーとセキュリティの保護が手厚いと説明しています[2]。

代替アプリマーケットプレイスが利用可能に

最大の変更は、App Store以外の代替アプリマーケットプレイスでのアプリ配信が認められた点です。デベロッパはApp Storeに加えて、1つ以上の代替マーケットプレイスでアプリを配信できるようになります[2]。ただし、ウェブから直接アプリを入れる、いわゆるサイドロードは認められていません。App Store以外で配信されるアプリも、必ずいずれかの代替マーケットプレイスを経由する必要があります[2]。

代替マーケットプレイスはAppleの認証を受ける必要があり、そこで配信されるアプリには「公証」と呼ばれる基本審査が適用されます。公証は自動チェックと人による審査を組み合わせ、既知のマルウェアがないか、提示どおりにアプリが動作するかを確認する仕組みです[1]。ただし、App Storeのすべてのアプリに課されるApp Reviewよりも限定的な審査にとどまります[1]。なお、App Store以外で配信されるアプリにも年齢制限の設定は引き続き必要で、スクリーンタイムやダウンロード承認、コンテンツ制限といったペアレンタルコントロールの対象になります[1]。iOS 26.5以降では、利用者が設定からインストール先の既定を代替マーケットプレイスに切り替えることもできます[2]。

決済にも新しい選択肢

決済処理についても選択肢が広がります。これまでブラジルのユーザーはAppleのアプリ内購入(IAP)でデジタル商品やサービスを購入してきましたが、今後はデベロッパが、アプリ内に代替の決済処理を組み込む、あるいはユーザーをウェブ上の決済ページへ誘導するリンクを置く、という方法を選べます[1]。代替の決済手段は常にAppleのIAPと並べて提示されるため、ユーザーはApple経由で支払っているかどうかをはっきり区別できます[1]。

ただし注意点もあります。代替決済や外部リンクを通じた購入には、Appleによる返金や、サブスクリプション管理、購入履歴、カスタマーサポートといった保護が及びません[1]。利便性と引き換えに、トラブル時の安全網が薄くなる面があるといえます。

手数料体系を全面的に見直し

配信方法と決済方法に応じて、手数料の体系も改定されました。App Storeで配信しAppleのIAPを使う場合、デベロッパは決済処理に対する5パーセントの料金に加え、App Store手数料を支払います[1]。App Store手数料は原則21パーセントですが、Small Business Programなどのプログラム参加者や、2年目以降のサブスクリプションでは10パーセントに下がります[1]。

アプリ内で代替の決済処理を使う場合は、5パーセントの決済処理料金はかかりませんが、App Store手数料はそのまま残ります[2]。外部のウェブサイトへ誘導する場合は、リンクを押してから7日以内の購入に対し、15パーセントのストアサービス手数料がかかります(プログラム参加者などは10パーセント)[1][2]。代替マーケットプレイスで配信されるアプリには、有料アプリを含むデジタル商品・サービスの売上に対して5パーセントのコアテクノロジー手数料(CTC)が課されます[1]。Appleは、これらの新条件のもとでブラジルのデベロッパが支払う手数料は、現在と同額かそれより少なくなると説明しています[1]。

子どもの安全を巡る保護策

Appleは、配信や決済の選択肢が増えることで子どもが新たな脅威にさらされる可能性があるとして、いくつかの保護策を設けています[1]。App Storeの「子ども向け」カテゴリのアプリには、決済を行うウェブサイトへのリンクを含められません。18歳未満のユーザーについては、代替決済を使うApp Storeのアプリに、購入前に保護者の関与を求めるペアレンタルゲートの組み込みが必須となり、決済サイトへのリンク使用も認められません[1]。さらにAppleは、Apple以外での購入を保護者が監視・承認できるよう、新しいAPIの提供にも取り組んでいます[1]。

Appleは、欧州や日本での類似の規制変更により、これまでiOSでは提供できなかった種類のアプリ(同社はポルノアプリを例に挙げています)が利用可能になったと指摘し、こうしたリスクへの警戒もにじませています[1]。

まとめ

ブラジルのiOSは、CADEとの合意を受けて代替アプリマーケットプレイスと外部決済に道を開き、手数料も配信・決済の組み合わせごとに細かく再設定されました。欧州や日本に続く動きであり、規制を背景にApp Storeの「閉じた」仕組みが各国で少しずつ開かれていく流れが、ここでもはっきりと表れています。Appleは利便性の拡大と子どもの安全の両立を強調しており、実際の利用がどこまで広がるかが次の焦点になります。

出典:https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/06/apple-announces-changes-to-ios-in-brazil/

出典:https://9to5mac.com/2026/06/18/apple-announces-major-app-store-changes-for-brazil-including-alternative-app-marketplaces/