Anthropicが2026年6月12日(米国時間)、米政府からの指令を受け、最上位AIモデル「Claude Fable 5」と「Claude Mythos 5」へのアクセスを全顧客に対して停止しました。国家安全保障上の権限に基づく輸出管理指令で、外国籍者の利用を止めるよう求めるものです。同社はこれに準拠する一方、措置の根拠には異議を唱えています[1]。

米政府が外国籍者へのアクセス停止を指令

Anthropicによると、指令は米国東部時間の6月12日午後5時21分に届きました。内容は、国家安全保障上の権限を理由に、米国内外を問わずすべての外国籍者によるFable 5とMythos 5へのアクセスを停止するよう求めるものです。対象には外国籍のAnthropic従業員も含まれます[1]。

外国籍者だけを切り分けて遮断することは技術的に難しいため、同社は「指令に確実に準拠するには、両モデルを全顧客に対して即座に無効化するしかない」と判断しました。なお、ほかのAnthropicモデルへのアクセスには影響しないとしています[1]。指令は米商務省から発出されたと報じられています[2]。

Fable 5は、Opusの上位に位置づけられる「Mythos級」モデルを一般向けに開放したもので、2026年6月上旬に提供が始まったばかりでした。今回の措置で、提供開始から間もない主力モデルが一時的に市場から姿を消す形となります[1]。

焦点は「脱獄」をめぐる懸念

Anthropicは、指令の書面には具体的な安全保障上の懸念が示されていなかったと説明しています。同社の理解では、政府はFable 5の安全対策を回避する「脱獄(ジェイルブレイク)」の手法を把握したと考えているとのことです[1]。

同社は、この手法のデモを確認したとしたうえで、それによって特定されたのは「以前から知られていた軽微な脆弱性がわずかに見つかった程度」であり、いずれも比較的単純なものだったと述べています。さらに、こうした脆弱性は回避手法を使わなくても、他社の公開モデルでも発見できるとし、引き合いとしてOpenAIの「GPT-5.5」を挙げています[1]。

Fable 5には、サイバーセキュリティや生物・化学分野などのリスクが高いリクエストを検知すると、本体ではなく次点の「Claude Opus 4.8」が応答する分類器が組み込まれています。Anthropicは、提供開始前に米政府やイギリスのAI安全研究所(UK AISI)、複数の第三者機関とともに計数千時間のレッドチーム(攻撃側に立った検証)を実施し、安全対策全体を広く無効化する「ユニバーサルな脱獄」はこれまで誰も発見できていないと主張しています[1]。

Anthropicは「狭い脆弱性でのリコールは過剰」と反論

Anthropicは指令に従ってアクセスを削除する一方で、その判断には明確に反対する姿勢を示しました。同社は、完全な脱獄耐性を備えたモデルは現時点でどの提供事業者にも実現できておらず、いずれユニバーサルな脱獄が見つかる可能性はモデル公開時から明言してきた、と説明しています。そのうえで多層防御(defense in depth)の戦略を採り、脱獄を狭い範囲にとどめるか、実行コストを高くし、監視によって素早く検知・遮断する設計にしてきたとしています[1]。

そのため同社は、「狭く限定的な脱獄が見つかったことを理由に、数億人に提供されている商用モデルをリコールすべきだとは考えない」と述べています。仮にこの基準が業界全体に適用されれば、すべてのフロンティアモデル提供事業者で新規モデルの展開が事実上止まりかねない、というのが同社の見方です[1]。

同時にAnthropicは、政府が不安全な展開を差し止める権限を持つこと自体は支持するとしつつ、その権限は「透明で公正、明確かつ技術的事実に基づく法的手続き」の一部として行使されるべきで、今回の措置はその原則に沿っていないと指摘しました[1]。

影響と今後

今回の停止により、Fable 5とMythos 5を利用していた顧客は、当面これらのモデルを使えなくなります。Anthropicは顧客への影響を謝罪したうえで、「これは誤解だと考えており、できるだけ早くアクセスを復旧させるべく取り組んでいる」とし、今後24時間以内にさらに詳細を共有する方針を示しました[1]。BloombergやCNBCなど複数のメディアも、同社が政府指令に従ってモデルを無効化したと報じています[2]。

まとめ

Anthropicは米政府の輸出管理指令を受け、外国籍者の利用停止を求められたことから、Fable 5とMythos 5を全顧客向けに無効化しました。政府側は「脱獄」をめぐる懸念があるとされますが、Anthropicは見つかったのは軽微で既知の脆弱性にとどまり、商用モデルのリコールには当たらないと反論しています。同社は指令には準拠しつつ、判断の根拠と手続きには異議を唱えており、早期の復旧を目指すとしています。

出典:https://www.anthropic.com/news/fable-mythos-access

出典:https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-06-13/anthropic-says-us-limits-foreign-access-to-fable-5-mythos-5