屋根材そのものが発電するTeslaの「Solar Roof(ソーラールーフ)」について、認定施工業者への供給が打ち切られたとの報道が海外で相次いでいます。一方でTeslaからの公式発表はなく、製品ページは本記事の執筆時点でも生きたまま注文ボタンが並んでいます。発表から約10年、目標には遠く届かなかった製品に何が起きているのかを整理します。

※1ドル159円換算

施工業者への供給停止という形で伝わった

今回の話は、Teslaが記者会見や公式ブログで打ち切りを宣言した、という種類のものではありません。伝えられている内容は、認定を受けた第三者の施工業者に対して、ソーラールーフ用のタイルを今後は発注できないとTeslaが通知した、というものです。今後供給されるのは従来型の太陽光パネルのみになるとされています。

複数の海外メディアが同じ趣旨で報じていますが、いずれも社内関係者や施工業者側の証言に依拠しています。製品として採算が取れないという社内判断があった、という説明も出ていますが、Tesla自身がその理由を語ったわけではありません。この記事を書いている2026年8月24日の時点で、Teslaからの公式なアナウンスは確認できません。

公式サイトには依然としてソーラールーフが残っている

報道では、Teslaの製品ページが太陽光パネルのページへ転送されるようになったとも伝えられました。ただし筆者が実際に確認したところ、Solar Roofの製品ページはそのまま表示され、「Order Now」のボタンも、オンラインで屋根の設計を始める導線も残っていました。バーチャル相談の予約リンクも生きています。

ページに掲載されているスペックも従来どおりです。発電するガラス製ソーラータイルは1枚あたり72W、タイルと発電量の保証は25年、耐風・耐火・耐雹の等級はいずれも最上位(Class F/Class A/Class 4)で、施工可能な勾配は2:12以上と記載されています。ガラスタイルと鋼製タイルを組み合わせ、蓄電池のPowerwallとセットで導入する構成も説明されたままです。

つまり現状は、供給網の末端では終了が伝えられている一方、消費者向けの窓口は開いたままという、ちぐはぐな状態です。地域や表示のタイミングによって見え方が違う可能性もあり、今後Teslaが正式に整理する可能性は残っています。

週1,000棟という目標と、実際の数字

ソーラールーフは2016年10月、ハリウッドの撮影所を使ったイベントでイーロン・マスク氏が披露しました。その数週間後、Teslaの株主は太陽光発電会社SolarCityの買収を承認しています。買収額は約26億ドル(約4,130億円)でした。屋根一体型の太陽光という絵は、この買収を株主に納得させる材料としても機能しました。

その後マスク氏は、週に1,000棟のペースで生産・施工すると繰り返し語ってきました。しかし調査会社Wood Mackenzieの推計によれば、実際のピーク時でも施工は週21〜32棟程度にとどまり、米国での累計施工数は約7年間で3,000棟ほどだったとされています。目標との差は95パーセント以上です。Teslaは2024年初めに四半期報告からソーラールーフの施工実績の内訳を出すのをやめており、製品としての存在感は数年前から薄れていました。

価格をめぐる訴訟も尾を引いた

普及が進まなかった理由のひとつが価格です。当初は、新しい屋根と太陽光パネルを別々に導入するより安く済むという打ち出し方をしていましたが、実際の見積もりはその水準から大きく外れました。2021年には契約済みの顧客に対しても値上げが行われ、これが集団訴訟に発展します。訴訟は2023年に600万ドル(約9億5,000万円)で和解しました。

屋根としての耐久性と発電設備としての性能を両立させる難しさ、施工に手間がかかること、屋根の形状や日陰の影響を受けやすいことなど、構造的なハードルも重なりました。結果として、価格にあまり敏感でない高額住宅でしか成立しにくい製品になっていた、という見方が有力です。

事業の軸は通常の太陽光パネルへ

Teslaのエネルギー事業そのものが縮んでいるわけではありません。公式サイトによれば、同社は累計で約48万棟の屋根に4.0GW近い太陽光発電を施工し、累計発電量は25.0TWhを超えています。この数字の大半は、タイルではなく通常の太陽光パネルによるものです。

屋根一体型という発想自体が否定されたわけでもありません。同種のソーラーシングル(屋根材型太陽光)は他社からも複数登場しており、住宅に太陽光を載せる選択肢は以前より広がっています。ソーラールーフがつまずいたのは、コンセプトではなく採算と施工の現実だった、と見るのが妥当でしょう。

まとめ

ソーラールーフをめぐる今回の話は、施工業者への供給停止という形で外側から伝わってきたもので、Teslaの公式発表はまだありません。製品ページも注文導線も残っており、状況は宙ぶらりんです。ただ、週1,000棟の目標に対して7年で約3,000棟という実績、値上げをめぐる訴訟、四半期報告からの姿消しといった経緯を並べると、この製品が細っていたこと自体は数年前から見えていました。正式な説明が出るかどうかが次の焦点になります。