Anker傘下のオーディオブランドSoundcoreが、完全ワイヤレスイヤホンの新モデル「Liberty 5 Pro」と「Liberty 5 Pro Max」を発表しました。2機種はAnkerが共同開発した新チップ「THUS AIチップ」を初めて搭載した製品で、上位のPro Maxは充電ケースに1.78インチの有機ELタッチ画面を備え、スマートフォンなしで会議を録音してAIに文字起こしまで任せられます。価格はProが169.99ドル(約2万7,000円)、Pro Maxが229.99ドル(約3万7,000円)です。
2機種の違いと共通点
今回登場したのは、標準モデルのLiberty 5 Proと、上位モデルのLiberty 5 Pro Maxの2つです。イヤホン本体やノイズキャンセリング、駆動時間といった中身は両機種で共通しており、違いは充電ケースにあります。Liberty 5 Proのケースには0.96インチのTFTタッチ画面が、Pro Maxには1.78インチの有機ELタッチ画面が載り、画面の大きさと後述するAI機能の幅で差を付けています。
両機種とも、合計10個のセンサー(8個のマイクと、頭蓋骨の振動を拾う2個の骨伝導センサー)を備え、新しい「Adaptive ANC 4.0」と呼ばれるノイズキャンセリングに対応します。
通話の声をきれいに保つ「THUS AIチップ」
2機種の心臓部となるのが、新搭載のTHUS AIチップです。Soundcoreはこのチップが何のためにあるのかを具体的に説明しています。チップは10個のセンサー群と組み合わさり、ニューラルネットワーク型のAIモデルを使って、通話中に周囲の騒音から自分の声だけを抜き出します。
特徴は、外側のマイクが拾う音に加えて、骨伝導センサーが頭蓋骨を伝わる声の振動を捉える点です。2系統の入力をAIが突き合わせることで、にぎやかな街中や喫茶店、あるいは小声で話す静かな部屋でも、相手に届く声をクリアに保てるとしています。
通話品質については、標準モデルのLiberty 5 Proが2026年4月に、完全ワイヤレスイヤホンの客観テストによる音声品質スコア(G-MOS)でギネス世界記録に認定されています。Pro MaxはProと同じイヤホン本体を使うため、同等の通話性能を備えます。
1秒間に38万回調整する「Adaptive ANC 4.0」
ノイズキャンセリングも刷新されました。Adaptive ANC 4.0は8個のマイクを使い、周囲の音を1秒あたり最大38万4,000回という細かさで処理して、打ち消し方を環境に合わせてリアルタイムに調整します。1つの設定に固定せず、移動中に状況が変わっても追従し続ける仕組みです。
打ち消す対象は、飛行機やバスの低い駆動音、オフィスの話し声、街中のざわめきなど幅広く想定しています。Soundcoreは前モデルのLiberty 4 Proと比べて最大2倍深く騒音を抑えられるとしており、効果は特にエンジン音やエアコンの音といった低音域で出やすいと見られます。周囲の音を取り込む外音取り込みモードや、再生を止めずに短時間だけ会話できる機能もそろえています。
主役は会議を録音できる「スマートケース」
今回の目玉は、Pro Maxのケースに載った1.78インチの有機ELタッチ画面です。Soundcoreはこれを「AIノートテイカーを備えた世界初のスマート画面付きイヤホン」と表現しています。
使い方はこうです。ケースに内蔵したマイクで会議や講義、インタビューといった対面の音声を録音し、Soundcoreアプリと連携して文字起こしを作成し、発言者を区別し、やるべきこと(アクションアイテム)を要点とともに抽出します。スマートフォンを部屋に持ち込まなくても、ケース単体で録音できる点が新しいところです。録音できるのはその場の対面の音声に限られ、オンライン会議やビデオ通話、電話の音声は対象外です。
AIによる会議の記録ツールは、これまでスマートフォンのアプリや、別に持ち歩く専用機が主流でした。それを普段から持ち歩く充電ケースに載せることで、「わざわざ用意するもの」から「すでにポケットにあるもの」へと位置づけが変わります。文字起こしは月120分まで無料で使え、より多く使う場合は月1,200分の有料プラン(月15.99ドル、約2,600円など)や無制限プランも選べる、サブスクリプション方式になっています。
音質はHearID 5.0とLDACで底上げ
音楽再生では、両機種ともアプリで簡単な聴力テストを行い、個人向けのイコライザー設定を作る「HearID 5.0」に対応します。SoundcoreはこのほかにAIによる音質補正も用意し、Bluetoothの圧縮で失われがちな音の情報を最大65パーセントまで復元できるとしています。これはメーカー側の主張で、聴感での検証は難しい部分です。
より分かりやすいのは、ハイレゾ相当のワイヤレス伝送に対応するコーデック「LDAC」をAndroid端末で使える点です。iPhoneではLDACは利用できませんが、Bluetooth 6.1のAAC接続に対応し、最大3台の機器に同時接続できるマルチポイントやAppleの「探す」にも対応するため、日常使いには十分そろっています。
音声操作とAI翻訳にも対応
THUS AIチップは音声操作も担います。両機種とも20種類の音声コマンドに対応し、応答時間は0.91秒とうたっています。スマートフォンを取り出したり、イヤホンを2回叩いて反応を待ったりせずに操作できる点が狙いです。
AI翻訳にも対応し、Pro Maxではイヤホン越しでも、ケースの画面上でも翻訳を実行できます。
バッテリーと価格
駆動時間は、ノイズキャンセリングをオンにした状態でイヤホン単体で最大6.5時間、充電ケースと合わせて最大28時間(音量50パーセント時)です。防塵・防水はIP55相当で、ほこりやあらゆる方向からの水の噴流に耐えるため、運動中や雨の中でも使えますが、水泳には向きません。
価格はLiberty 5 Proが169.99ドル(約2万7,000円)、Liberty 5 Pro Maxが229.99ドル(約3万7,000円)で、いずれも2026年5月21日からSoundcoreの公式サイトやAmazon.com、BestBuy.comで販売されています。米国では30日間の返品保証付きで試せる「Try Before You Buy」も用意されます。※1ドル=161円換算(2026年6月22日時点)
まとめ
Liberty 5 Pro Maxは、充電ケースに有機EL画面とAIノートテイカーを載せ、スマートフォンなしで会議を録音・文字起こしできる点が最大の特徴です。新搭載のTHUS AIチップ、骨伝導センサーを含む10個のセンサー、1秒に最大38万回調整するAdaptive ANC 4.0、ギネス世界記録の通話品質といった要素を備えます。会議や多言語での会話が日常的にある人にはPro Maxのケースが効いてきますが、そうでなければ同じイヤホン本体とノイズキャンセリングを安く手に入れられるLiberty 5 Proも有力な選択肢になりそうです。
