OpenAIは、自社のAIエージェント「Codex」が仕事に与える経済的な可能性を測った経済研究の論文を公開しました[1]。論文の主眼は、AIの使い方が単発のやり取りから、長い時間をかけて任せる「委任型」の作業へと移りつつあるという変化です。OpenAI社内では、いまやほぼすべての部門がCodexを主力のAIツールとして使うようになり、その利用は法務や採用といった非技術部門にまで広がっています。
エージェントが変える「仕事の単位」
論文がまず示すのは、エージェント型AIによって知識労働の単位そのものが変わったという見方です。従来のチャットボットとのやり取りは、短く完結したものが中心でした。一方でエージェントは、ツールの呼び出しや外部環境とのやり取りを自分で組み立てながら、数分から数時間にわたって独立して動き続け、解決へ向けて試行錯誤を繰り返します[1]。OpenAIはこの特性から、エージェントが仕事のための最も強力なAIツールになりつつあると位置づけています。
Codexは、OpenAIが2025年に一般公開したソフトウェア開発支援のAIエージェントです[2]。より高性能なモデルや新機能を取り込むにつれて、こなせる作業の幅を広げてきました。
社内では「ChatGPTからCodexへ」が進む
OpenAIは、この変化を社内で目の当たりにしてきたと説明します。Codexの一般公開から数か月間は、社内でも引き続きChatGPTが標準のAIツールでした。2025年8月までは、平均的な社員がCodexに割く割合は出力トークン全体の10パーセント未満にとどまっていました[1]。
それが今では様変わりしています。エンジニアリング部門が先行し、法務・財務・採用といった部門も2026年4月ごろにCodexの利用が過半を超えました。平均的な社員で見ると、出力トークンの85パーセント超がCodex経由になっています。利用量の多い人ほどCodexを使う傾向があるため、社内全体に占める比率はさらに高く、週あたりの出力トークンの99.8パーセントがCodexによるものだといいます[1]。エンジニアに限れば、出力トークンの99パーセントをChatGPTではなくCodexで生み出している計算です。
長く、難しい作業を任せる方向へ
利用の中身も、短いやり取りから難度の高い長時間の作業へと移っています。論文によると、Codexへの依頼のうち約4分の1が、人間なら1時間以上かかる作業に相当するとしています[1]。
個人ユーザーを対象にした推計では、2026年5月までに、人の手で30分以上かかると見積もられる依頼を少なくとも1回出した人が80.6パーセント、1時間以上が70.2パーセントに達しました。8時間以上に相当する依頼をした人も25.6パーセントに上っています[1]。さらに2026年6月時点では、利用量が上位1パーセントに入る社内ユーザーが、複数のエージェントを並行して走らせ、1日あたり60時間分を超えるCodexの作業を日常的に生み出しているといいます[1]。
非開発者の利用が急拡大
もう一つの特徴は、開発者以外への広がりです。Codexはもともとコーディング向けの道具として始まりましたが、一般的な知識労働へと用途が広がるなかで、非開発者の利用が開発者を上回るペースで伸びました。2025年8月以降、非開発者の利用者は個人で137倍、組織で189倍、OpenAI社内で12倍に増えたとしています[1]。
部門ごとの利用の濃さも増しています。2026年6月時点の利用量の中央値は、2025年11月と比べてリサーチ部門が56倍、カスタマーサポートが32倍、エンジニアリングが27倍に拡大し、法務も13倍に伸びました[1]。OpenAIは、業務部門の社員がCodexで行った作業のうち4分の1超がエンジニアリングやコーディングだったとし、エージェントが職務の境界を越えて隣接する仕事に踏み出すコストを下げていると分析しています[1]。
データの読み方には留意も必要
OpenAIは、こうした変化が、業務の進め方を見直す企業、価値の高まるスキルを見極めようとする働き手、労働市場への影響を理解しようとする政策担当者や研究者にとって意味を持つと述べています[1]。
一方で、今回の数値はOpenAI自身の利用実態に基づく自社データである点には留意が必要です。作業時間の見積もりは大規模言語モデルによる判定で推計したもので、論文自身も正確な値ではなく方向性を示すものとして扱うべきだと注記しています。個人利用に関する分析も、ユーザーの0.1パーセントを無作為抽出した範囲に基づくものです[1]。
まとめ
OpenAIの論文は、AIの主役がチャットボットから、自分で長時間動くエージェントへと移りつつある様子を、社内外の利用データで描き出しました。社内では全部門でCodexが主力ツールとなり、非開発者の利用も急速に広がっています。ただし数値は自社データであり、作業時間の推計にも幅があるため、結論は方向性として捉えるのが妥当でしょう。エージェントが仕事の「単位」をどこまで押し広げるかは、これからの働き方を占ううえで見逃せない論点になりそうです。
出典:https://openai.com/index/how-agents-are-transforming-work
