NVIDIAは現地時間2026年6月10日、ロボタクシー向けの安全基盤「Halos OS」の詳細を公式ブログで解説しました[1]。安全機能を後から付け足すのではなく、OSの土台から組み込むという設計思想が柱です。あわせてGTC Taipeiでは、UberやFoxconn、VinFastなどがNVIDIAのプラットフォームを使ってロボタクシーを世界各地に展開する新たな協業も発表されています[1]。

世界各地で立ち上がるロボタクシー計画

アプリを開くと「車が到着しました」と通知が来て、乗り込んでも運転席には誰もいない。ロボタクシーが営業する数十の都市では、こうした光景がすでに日常になっています[1]。業界はプロトタイプの実証段階を越えて商用運行のフェーズに入っており、GTC Taipeiでは展開の広がりを示す協業が複数発表されました[1]。

発表された主な取り組みは次の通りです。UberとAutobrainsは、NVIDIA DRIVE Hyperionプラットフォーム上でドイツ・ミュンヘンでのロボタクシープログラムを開始します。Foxconn(鴻海)はNVIDIAとの協業を拡大し、台湾でDRIVE Hyperionを組み合わせたロボタクシー車両の迅速な統合・展開を進めます。ベトナムのVinFastはAutobrainsと組み、DRIVE Hyperionベースのレベル4車両を東南アジア市場に投入する計画です。さらにサウジアラビアのHUMAINがDRIVE Hyperion搭載ロボタクシーの中東展開に取り組んでおり、プラットフォームの足場は世界規模に広がりつつあります[1]。

安全は「後付け」では成立しない 4つの課題

レベル4自動運転の議論は、車両が何を認識しどう判断するかに集中しがちです。ただ、規制当局や認証機関が求めるのはその先で、システム全体が確実に動作し、障害が拡大する前に切り離され、設計上の限界を越えて動作しないことの証明だとNVIDIAは指摘します[1]。

そのうえで、ロボタクシーの安全には4つの課題を同時に解決する必要があるとしています。安全認証可能なOS、安全で標準化されたハードウェア・ソフトウェアインターフェース、検証可能なガードレールの中で動作するAI、そして公道に出る前の大規模な検証の4点です[1]。これらに応えるのが、NVIDIAの包括的な安全システム「NVIDIA Halos」の一部として提供されるHalos OSで、DRIVE Hyperion上に構築された量産対応の安全基盤と位置づけられています[1]。

Halos OSは大きく3つの層で構成されます。土台となる「Halos Core」は次世代のNVIDIA DriveOSにあたり、自動車の機能安全規格ISO 26262のASIL Dに準拠。ハイパーバイザー(仮想化のための特殊なソフトウェア層)によって安全に関わる機能を隔離し、障害が車両制御に波及しない構造になっています。CUDAとTensorRTの安全認証付きサポートに加え、大規模言語モデルを車載で高速実行するためのオープンソースフレームワーク「TensorRT Edge-LLM」も含まれます[1]。

その上の「Halos SDK」は、カメラ・レーダー・LiDARといった形式も周期も異なるセンサー群を扱うための標準ミドルウェア層です。センサー抽象化層により、センサーを追加・交換してもアプリケーション側のコードに影響が波及しない設計で、決定論的なスケジューラーやゼロコピーのプロセス間通信、システムエラー処理フレームワークなど、安全性が求められるソフトウェアに必要な実行基盤を提供します[1]。

最上位の「Halos Applications」は、AIに対する安全ガードレールの層です。挙動の範囲を定義できる決定論的なルールベース機能で構成され、自動緊急ブレーキや車線逸脱警報、死角モニタリングなどを含むNVIDIA DRIVEアクティブセーフティスタックを備えます。説明可能性が重要になるエンドツーエンドAIとの組み合わせも想定されており、思考の連鎖(chain-of-thought)による推論で道路状況を継続的に評価するオープンモデル群「NVIDIA Alpamayo」もここに位置づけられます[1]。

クラウド側の開発・検証基盤「Halos Infra」

車両側だけでなく、クラウド側の検証基盤も用意されています。「Halos Infra」は自動運転AIの学習・シミュレーション・検証を大規模に行うための開発インフラで、最近公開された「Halos Safety Evaluation Framework(SEF)」の土台でもあります。SEFはレベル2の運転支援からレベル4のロボタクシーまで、信頼に足る安全性の論証(セーフティケース)を構築するためのツールとガイドラインを提供するもので、NVIDIA Halos OSの中で生み出された330本超の研究論文と1,000件の特許に裏打ちされているとしています[1]。

Halos Infraは、データセンターでAIスタックを学習させるNVIDIA DGXシステム、シミュレーションと合成データ生成を担うNVIDIA OVX上のOmniverse、車内でリアルタイムのセンサー処理と安全機能を実行する車載コンピューターNVIDIA AGXという、NVIDIAの3コンピューター構成の上で動作します。学習からシミュレーション、車両内での推論まで、開発ライフサイクル全体をHalos OSがカバーする形です[1]。

まとめ

Halos OSは、認証済みのOS基盤・標準化されたインターフェース・AIのガードレール・大規模検証という4つの課題に1つのスタックで応える、ロボタクシー向けの安全基盤です[1]。UberやFoxconn、VinFast、HUMAINといった企業の採用が広がり、ミュンヘンから台湾、東南アジア、中東まで展開が動き出しています。日本ではまだ馴染みの薄いロボタクシーですが、安全を土台から作り込むこうした基盤が普及の速度を左右することになりそうです。

出典: https://blogs.nvidia.com/blog/halos-os-robotaxi-safety/