FriendlyELECが、45mm角の基板に2系統のギガビットイーサネットとWi-Fi 6を載せたシングルボードコンピューター「NanoPi R28S」を発売しました。価格は20ドル(約3,100円)、CNC加工の金属ケースを含む構成でも29ドル(約4,600円)です。汎用の小型PCではなく、小型ルーターやネットワーク機器の土台に用途を絞った作りになっています。

45mm角・14gという寸法が仕様の一部

基板単体の外形寸法は45×45×1.2mmで、重量は14gです。名刺よりもふた回り小さい面積に、ギガビットイーサネットのポートを2基、USB Type-Cを2基、microSDスロットを詰め込んでいます。基板は8層で、この面積に有線LANを2系統引き回すための構成です。

オプションのCNC加工アルミケースを組み合わせると、外形は49.5×49.5×24mm、重量は77.5gになります。ケースの側面にはユーザー用の「C」ボタンとeMMC書き込み用の「MASK」ボタンが出ており、収めたままファームウェアの操作ができます。

有線2系統に加えてWi-Fi 6とBluetooth 5.3

2つのギガビットイーサネットは、Realtek RTL8211FとRTL8111Hという別々のコントローラーで実装されています。無線側は基板上にWi-Fi 6とBluetooth 5.3のモジュールを搭載します。

有線が2系統あるということは、WAN側とLAN側を分けて使えるという意味です。1系統しか持たない基板では、ルーターやファイアウォールとして使うにはUSB接続のLANアダプターを足すか、VLANで論理的に分けるしかありません。R28Sは最初から物理的に2口を持っているため、そうした回り道が要りません。ここにWi-Fi 6が加わるので、小型の無線ルーターとしても成立します。

映像出力とGPIOヘッダーは持たない

SoCはRockchipのRK3528Aです。ARM Cortex-A53を4コア搭載し、動作周波数は最大1.8GHz、GPUはARM Mali-450です。動画処理はH.265とH.264の4K・60fpsデコードに対応します。

ただし公式のスペック表に映像出力の項目はなく、製品写真にもHDMI端子は見当たりません。デコード性能は数字として載っていても、そのまま映像を出す口が用意されていない構成です。センサーやアクチュエーターを直結するGPIOヘッダーも、公式のスペック表と製品写真の範囲では確認できません。

つまり拡張の余地は、microSDカード、eMMCモジュール、そしてUSB Type-Cのデータ転送に限られます。USB Type-Cは2基あり、片方はeMMCの書き込みと5V電源の入力を兼ね、もう片方はUARTのデバッグコンソール専用です。デバッグ用の口が独立しているのは、この価格帯としては手厚い部分で、ネットワーク設定を壊して画面も出ないという状況からでも復帰できます。

メモリーは1GBのLPDDR4です。デスクトップとして使うには明らかに足りませんが、ルーターやゲートウェイのように常駐プロセスが限られる用途なら現実的な容量です。ストレージはeMMCモジュールに対応し、microSDは128GBまで使えます。

このほか、低消費電力RTC ICのHYM8563TS用に2ピン(1.27/1.25mmピッチ)のバッテリーコネクターを備えます。電源が落ちても時刻を保持できるため、ログのタイムスタンプが必要な機器では効いてきます。LEDは赤のシステム表示が1基とユーザー用の緑が2基、ボタンはユーザー兼用の「C」とeMMC書き込み用の「MASK」です。電源はDC 5V/2A、動作温度は0℃から70℃までとされています。

主なスペック

項目 内容
SoC Rockchip RK3528A(ARM Cortex-A53×4、最大1.8GHz)
GPU ARM Mali-450
動画デコード 4K H.265/H.264 60fps
メモリー 1GB LPDDR4
ストレージ eMMCモジュール対応、microSDスロット1基(最大128GB)
有線LAN ギガビットイーサネット2基(RTL8211F/RTL8111H)
無線 Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3
USB USB Type-C 2.0(eMMC書き込み/5V電源入力)、USB Type-C(UARTデバッグ)
LED システム1基(赤)、ユーザー2基(緑)
ボタン ユーザー/Cボタン、MASKボタン
RTC HYM8563TS用2ピンバッテリーコネクター
電源 DC 5V/2A
動作温度 0℃〜70℃
基板 8層
外形寸法 45×45×1.2mm(ケースなし)/49.5×49.5×24mm(ケース付き)
重量 14g(ケースなし)/77.5g(ケース付き)

OSはFriendlyWrtからProxmox VEまで7種類

FriendlyELECが対応をうたうOSは、Alpine Linux 3.23、Buildroot(Weston/Wayland)、Debian 13 Core、FriendlyWrt 25.12、OpenMediaVault 8.0.6、Proxmox VE 8.2.7、Ubuntu 24.04 Coreの7種類です。カーネルはLinux 6.1 LTS、ブートローダーはU-Boot 2017.09を使います。

このうちFriendlyWrtは、ルーター向けとして広く使われているOpenWrtをFriendlyELECが自社ボード向けに仕上げたものです。R28Sの構成にいちばん素直に合うのはこれで、有線2系統とWi-Fi 6をそのままルーターとして扱えます。NAS向けのOpenMediaVaultや仮想化基盤のProxmox VEまで名前が挙がっているのは、1GBメモリーという条件を考えるとやや意欲的ですが、軽い共有ストレージや検証用の小さな仮想環境を試す分には選択肢になります。

ファームウェアは継続的に更新されるとされており、実際のバージョンは同社のWikiで確認する形になっています。

価格は20ドルから、関税は購入者負担

FriendlyELECの公式ストアでの価格は、1GB RAMのベアボードが20ドル(約3,100円)です。金属ケースとのセットは9ドル(約1,400円)の追加で、合計29ドル(約4,600円)になります。記事執筆時点では在庫ありと表示されています。なお公式ストアには、輸入時の関税は購入者負担と明記されています。

※1米ドル=157円換算(2026年8月4日時点)

20ドルという価格は、汎用のシングルボードコンピューターとしてはかなり安い水準です。ただしその安さは、映像出力とGPIO、そしてメモリー容量を切り落とした結果でもあります。手元で1台のボードを何にでも使い回したい人には向きませんが、自宅のルーターを自作したい、あるいは実験用のネットワーク機器を数台並べたいという目的がはっきりしているなら、この割り切りは素直に効いてきます。

まとめ

NanoPi R28Sは、45×45mmの8層基板にRockchip RK3528Aとギガビットイーサネット2系統、Wi-Fi 6とBluetooth 5.3を載せた20ドルのシングルボードコンピューターです。映像出力とGPIOヘッダーを持たない代わりに、UART専用のデバッグ端子とRTC用バッテリーコネクターを備え、FriendlyWrtを中心とした7種類のOSに対応します。金属ケース込みでも29ドルという価格を見る限り、汎用機ではなく小型ネットワーク機器の土台として選ぶボードです。