Metaが、コーディングやエージェント処理に強い新しいAIモデル「Muse Spark 1.1」を公開しました。あわせて外部開発者向けの「Meta Model API」を試験提供し、自社のAIモデルへのアクセスを初めて有料で開放します。低価格を前面に押し出し、OpenAIやAnthropicが先行する開発者向け市場に本格参入する狙いです。
初の有料APIで開発者市場に参入
今回の公開に合わせ、Metaは開発者向けインターフェース「Meta Model API」の試験提供を始めました。これまで一部の提携先に限っていたテストを終え、まずは米国の開発者が自社アプリへの組み込みや他モデルとの出力比較を試せるようになります。利用は当初、新規登録者に20ドル(約3,200円)分の無料クレジットが付き、その後は使った分だけ支払う従量課金へ移る仕組みです。
Metaが自社のAIモデルへのアクセスを有料で提供するのは、今回が初めてです。これまでチップや研究、データセンターに巨額を投じてきた同社にとって、AIを収益へつなげる道筋を描くうえで大きな一歩といえます。
エージェント処理とツール操作に照準
Muse Spark 1.1は、コードの記述やデバッグにとどまらず、外部ツールとの連携や画面操作までこなす「エージェント型」の使い方を前提に設計されています。Metaによると、テキストだけでなく画像や動画も扱えるマルチモーダル対応で、デスクトップ・スマートフォン・ブラウザのそれぞれの画面を操作しながら、時間のかかる作業を最後までやり遂げられるといいます。
扱える文脈の長さは最大100万トークンに達し、処理を複数のサブエージェントに分担させて並行して走らせることもできます。Mark Zuckerberg氏はX(旧Twitter)への投稿で、エージェント性能やツール操作、コンピュータ操作をこのモデル最大の強みに挙げました。実際の利用は、Meta AIアプリとWeb版から「Thinking(思考)」モードとして始められます。
低価格を武器に競合と差別化
料金は、入力が100万トークンあたり1.25ドル(約200円)、出力が同4.25ドル(約690円)に設定されました。これはOpenAIの「GPT-5 mini」やAnthropicの「Claude Haiku 4.5」より高い一方、上位の「Claude Sonnet 4.6」よりは安く、低価格帯と高性能帯のちょうど中間に置かれた形です。
Metaは自社の比較として、Muse Spark 1.1の性能を「GPT-5.5」「Opus 4.8」「Gemini 3.1 Pro」と並べて示し、コーディングやエージェント処理での競争力を訴えています。ただし、これはあくまで社内評価に基づく主張で、第三者による検証はこれからです。市場では、コーディング用途で実際にClaudeやCodexに肩を並べられるなら、MetaがAIモデルを有料の開発者向けツールへ結び付ける明確な道筋が見えてくる、との見方も出ています。
※1米ドル=162円換算(2026年7月13日時点)
Llama後継としてサービス全体へ
Muse Sparkは、Metaが昨年立ち上げた「Superintelligence(超知能)」チームが手がけるモデルで、初代は今年4月に登場しました。今回のMuse Spark 1.1はその第2弾にあたります。Metaは今後、WhatsAppやInstagram、Facebook、自社のスマートグラスなどで現在使われている「Llama」系モデルを、Muse Sparkへ順次置き換えていく方針です。
公開の2日前には、同じSuperintelligenceチームが開発したMeta初の画像生成モデル「Muse Image」も発表されました。消費者向けのチャットボットにとどまらず、開発者や制作者、企業までを視野に入れたモデル群をそろえつつあります。背景には、Zuckerberg氏が掲げる「個人の超知能(personal superintelligence)」という構想があります。
まとめ
Muse Spark 1.1の公開と有料APIの開放は、Metaが本格的に開発者向けAI市場へ乗り出す転換点といえます。100万トークンの長い文脈やエージェント処理を強みに、低価格でOpenAIやAnthropicへ挑む構図です。性能の主張が第三者の検証で裏付けられるか、そして実際の開発現場でどこまで使われていくかが、今後の焦点になりそうです。
