Apple Silicon 搭載のMacになっても、「WindowsアプリをMacで使いたい」というニーズはやはり存在していて、そんな時に役に立つのが UTM や VMware Fusion のような仮想化アプリです。
本記事では代表的な3つの仮想化アプリ「UTM」「Parallels Desktop」「VMware Fusion」を実際に試し、それぞれ比較してみました。

全アプリで共通するのは、入れ子になった仮想マシン(Hyper-V)は使用出来ないこと(記事執筆時点)と、Windowsのライセンスは別途用意する必要があるということです。

  1. ARM版 Windows を使うなら VMware Fusion が最適。古いOSを使うならUTM一択。パフォーマンスを求めるなら有料の Parallels が一番おすすめです。

UTM (無料)

公式サイト(ダウンロード):https://mac.getutm.app

オープンソースで、x86/x64のOSを実行可能

UTMは、QEMUをベースに作成されているオープンソースのアプリです。

Appleの仮想化フレームワークを使用して、ARM64版ならWindowsやUbuntuなどをネイティブに迫る速度で実行することができます。

実行速度は遅いものの、x86/x64 アーキテクチャにも対応しているので、Windows XP , 2000, 98 といった古いOSもインストールできるのがUTM最大の利点です。

OSのインストールは手動で行う

一部の仮想マシンにはARM版 Windows 11のISOファイルを自動でダウンロードしてくれる機能がありますが、UTMの場合は自分で用意する必要があり、インストールは手動で行う必要があります。
ただ、ダウンロードやインストールはそれほど難しい作業ではないため、多少の知識があれば問題ありません。

パフォーマンスは他の2つと比べて少々劣る傾向があり、用途としてはLinux/Windowsアプリのテストや、レガシー環境の保存に向いています。

脱獄不要で使える iPad OS/iOS 版の「UTM SE」もある

iPad/iOS の App Store から「UTM SE」という超低速バージョンがインストール出来るようになっていて、Macが無くても手持ちのiPad/iPhoneでWindowsを動かすことが一応可能になっています。

しかし、このSEバージョンはとんでもなく遅いため、残念ながらWindows 11 が使えるレベルのものではなく、たとえ最新のiPad Proであってもまったく実用的ではありません。

SEではなく、JITが使えるバージョンのUTMがあり、そちらをインストールするとパフォーマンスは良くなるものの、JITを利用するためにMacと有線で接続する必要があるなど、こちらも実用するには厳しい状態です。

Parallels Desktop (有料)

公式サイト(ダウンロード):https://www.parallels.com/jp/

Parallels Desktop Standard 1年間サブスク版|ダウンロード版

性能重視ならこれ。macOSとWindowsの融合度が高い

仮想化アプリの中で、個人的に最も完成度が高いと言えるのが Parallels Desktop です。

有料サブスクですが、14日間試用できます。定期的に公式でセールしたり、AmazonでUSBメモリとのセット販売がされていたり、学割もあるので、最低 5,000円台から購入することも可能です。

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macOSの画面上にWindowsアプリを直接表示できる「Coherenceモード」など、Macとの統合性が高く、なによりパフォーマンスが高いのが特徴です。

Windows 11 のインストールは全て自動化されていて、ボタンを押して少し待つだけでWindowsのデスクトップ画面まで到達します。Parallelsが正式にサポートするエディションはWindows 11 Pro以上のため、自動インストールではPro版がインストールされます。

3Dアクセラレーションにも対応し、DirectX 11.1 と OpenGL 3.3 をサポートしています。
使ってみると、3つの仮想化アプリの中で画面の動きが一番滑らかで、なんと軽い3Dゲームも遊べます。(3DゲームはCrossOverを要検討)Standard Editionではメモリ8GB、vCPU 4コアの制限があるため、ゲーム用途ならPro Editionをお勧めします。

サスペンドからの復帰も高速なので、さすが有料といった感じです。

Windowsだけでなく、Linux/macOSもインストール可能

Parallelsでは、macOS上でmacOSを起動することが出来ます。macOS自体は多少の制限(Coherenceモードが使えない、ホスト間とのドラッグ アンド ドロップが出来ない)はありますが、簡単にmacOSの仮想マシンが作成できる点は良いですね。

VMware Fusion (個人は無料)

公式サイト(ダウンロード ※要登録):https://support.broadcom.com/group/ecx/productdownloads?subfamily=VMware%20Fusion&freeDownloads=true

安定性と実用的なパフォーマンスを発揮

VMware Fusionは、個人利用に限り無料で利用可能です。
ただし、ダウンロードにはVMwareアカウントの登録や住所情報の入力が必要となるため、導入の手軽さではやや劣ります。

VMware Fusionの特徴は、Parallelsと比べてやや控えめながらも安定したパフォーマンスを発揮する点です。普段使いであれば問題なく使用可能です。Parallels同様、Windows 11 ARM版のISOファイルを自動ダウンロードする機能があり、インストールもスピーディ。

設定画面からCPUコアやメモリを自由に割り当てることができるため、ParallelsのStandard Editionと比較するとスペックの自由度は高くなります。

3Dグラフィックスの高速化機能ではDirectX 11に対応し、グラフィックスメモリは最大 8192MB まで割り当て可能です。ただし、パフォーマンスはParallelsの圧勝。

まとめ:どれがいい?

ツールUTMParallelsVMware Fusion
料金無料有料無料(個人利用)
パフォーマンス⚪︎
割当コア数(最大)実質制限無し4 / 32実質制限無し
割当メモリ数(最大)256GB 以上8GB / 128GB128GB
Windows 11 VM作成速度⚪︎
3Dアクセラレーション×⚪︎
ARM64 VM⚪︎⚪︎⚪︎
x86/x64 VM⚪︎××
macOS VM⚪︎⚪︎×
  • UTM:Linuxも含めて自由な環境を手に入れたい中・上級者
  • Parallels:快適なWindows環境を求めるゲーム・ビジネス用途のユーザー
  • VMware Fusion:無料で高性能な仮想環境を手に入れたい開発者や検証目的のユーザー