Lenovoが、手のひらに収まるほど小さなAI向けミニPC「Lenovo AI Host Mini」を中国で発表しました。容積はわずか0.48リットルで、Appleの「Mac mini」よりもコンパクトです。最大の特徴は、IntelやAMD、Qualcommではなく、中国のCixin(CIX)が手がけるARMチップ「Cixin P1」を中核に据えた点にあります。個人で使うAIコンピューターという、これまでのミニPCとは少し違う立ち位置をうたう1台です。

Mac miniより小さい0.48リットルの筐体

本体サイズは約100×100×48.65mm、重さは約0.373kgとされ、机の隅や棚の上に置いても場所を取りません。容積に直すと0.48リットルで、デスクトップ機の小ささでよく引き合いに出されるMac miniよりもさらに一回り小型です。黒い小さな箱という外観そのものは派手さこそありませんが、その中身がこの製品の主役になっています。

Lenovoはこの端末を、開発者向けの実験機ではなく、一般の消費者が手元でAIを動かすための「パーソナルAIコンピューター」として位置づけています。クラウドに頼らず、手元の小さな箱でAI機能を完結させるという発想です。

中核は中国製ARMチップ「Cixin P1」

採用されたSoC(システムオンチップ)は、6nmプロセスで製造されるARMアーキテクチャの「Cixin P1(CD8180)」です。CPUは12コア構成で、グラフィックスにはArmの新しい「Immortalis-G720」を10コア搭載します。さらにAI処理を担うNPUを組み合わせ、システム全体で45 TOPSというAI演算性能をうたいます。TOPSは1秒あたりに処理できる演算回数(兆回)を表す指標で、数値が大きいほど画像認識や生成AIといった処理を手元でこなしやすくなります。

注目したいのは、Intelのx86でもQualcommやMediaTekのモバイル向けチップでもない、独自のARMチップを選んだ点です。Cixin P1は最近になってARMベースのミニPCで採用例が増えており、MINISFORUMの「MS-R1」やシングルボードコンピューターの「Orange Pi 6」などでも同じ系統のチップが使われています。x86が長く主流だったミニPCの世界に、AIを意識したARMチップという新しい選択肢が出てきた流れの中に、この製品も位置づけられます。

メモリは8GBのLPDDR5-6000、ストレージは256GBのSSDという構成です。数値だけ見れば本格的なワークステーションというより、手軽にローカルAIを試すための入門機といえる内容です。背面には2基のUSB-Cと4基のUSB-A、2.5Gビット対応の有線LAN、そしてHDMI 1.4とDisplayPort 1.4を備え、モニターや周辺機器との接続にも一通り対応します。

「Skill」で機能を足していくソフト基盤

ソフト面では、Ubuntu LinuxにLenovo独自の「Tianxi Claw」というプラットフォームを組み合わせています。利用者はスマートフォンでQRコードを読み取って初期設定を行い、「Skill(スキル)」と呼ばれる機能単位でAIの使い道を追加していく仕組みです。

出荷時点で20以上のスキルが用意され、専用のマーケットプレイスからは8,000を超えるスキルを追加できるとされています。中国国内向けらしく、QQやWeChat、Feishu(飛書)といったサービスとの連携も想定されています。性能面では複数のAIエージェントを同時に動かせるとされ、1台を複数の利用者で分け合うような使い方も視野に入れているようです。スキルを足すほど用途が広がるという設計は、スマートフォンにアプリを入れていく感覚に近いといえます。

価格と発売、海外展開は未定

Lenovo AI Host Miniは、2026年7月1日に中国で発売されます。価格は2,999元(約7万円)で、構成はメモリ8GB・ストレージ256GBの1種類のみとされています。Mac miniに近いサイズ感ながら、価格はそれよりも抑えられている点も話題を呼びそうです。

ただし現時点では中国国内向けの発表にとどまり、海外での展開について公式な案内はありません。ソフト基盤が中国のサービスと密接に結びついているだけに、そのまま国外へ広げるのか、それとも仕様を変えてくるのかは、続報を待つ必要があります。※1人民元=約23.8円換算(2026年6月19日時点)

まとめ

Lenovo AI Host Miniは、Mac miniより小さい0.48リットルの筐体に、中国製のARMチップ「Cixin P1」と45 TOPSのAI性能を詰め込んだパーソナルAIコンピューターです。スキルを追加して機能を広げるソフト基盤や、2,999元(約7万円)という価格設定など、手元でAIを動かす入門機としての性格がはっきり出ています。まずは7月1日に中国で発売され、海外で手に入る日が来るのか、そして同じCixin系チップを使うミニPCがどこまで広がるのかが、次の焦点になりそうです。