ECOVACSがベルリンで開催中のIFA 2026で、ロボット掃除機の新しい旗艦モデルDEEBOT X12S OmniCycloneを公開しました。ゴミ捨て用の紙パックを一切使わない基地局と、住まいの状況を読み取って週単位の掃除計画を自分で組み立てるAIエージェントAGENT YIKO 3.0を組み合わせた点が中心にあります。英国での希望小売価格は1,199ポンド(約25万円)で、9月9日から販売されます。

紙パックを使わない「OmniCyclone」基地局

X12Sの名前の後半にあるOmniCycloneは、基地局の仕組みを指しています。従来のこの種の製品は、本体から吸い出したゴミを使い捨ての紙パックにためる方式が主流でした。X12Sが採用するPureCyclone 2.0は、遠心分離でゴミを圧縮して受け皿にためるため、紙パックそのものが必要ありません。ECOVACSは5年間で最大25枚分の紙パックが不要になると説明しています。

基地局は水回りの手入れも受け持ちます。最高100度の熱水を32個のノズルから直接送り込んでモップローラーを洗い、二層のスクレーパーで汚水と残りかすをかき出します。汚水タンクの自動洗浄と加熱、洗浄トレーの高圧すすぎ、風路の自動乾燥まで含めて、利用者が手を入れる場面を減らす設計です。

27センチのローラーと、汚れを溶かしてから拭く仕組み

床拭きはOZMO ROLLER 3.0が担当します。ローラーの長さは約27センチで、前の世代より50パーセント長くなりました。4,000パスカルの圧力をかけながら毎分220回転で回し、32方向からの加圧給水でローラー自体を洗い続けるため、汚れを別の場所へ広げにくくなります。マイクロファイバーの採用と合わせて、床に残る水分は一般的な繊維ローラー比で約67パーセント減るとしています。

乾いてこびりついた汚れには、FocusJetという別のアプローチが用意されています。しょうゆやコーヒーの跡のような手ごわい汚れに対して、水と洗浄液を十字に噴射して15秒から30秒ほど置き、緩んだところをローラーで拭き取ります。キッチンのように汚れやすい場所は音声で指示でき、ペットの足跡が付いた範囲をアプリ上で指定することもできます。

カーペットに乗ると、ローラーが約1.5センチ持ち上がり、新設のカバーが下りて繊維との接触を遮ります。吸引側はBLAST技術による53エアワットの新型モーターで、前世代比で60パーセント以上強い吸引力になりました。カーペットに押し付けながら吸い込む構造と130パーセント厚くしたブラシの組み合わせで、ダニの除去率は最大95.45パーセントとしています。

週の掃除計画を自分で立てる「AGENT YIKO 3.0」

今回の目玉は、掃除の段取りそのものを任せられるAGENT YIKO 3.0です。大規模言語モデルを使って間取りや生活習慣、これまでの好みを読み取り、エージェントモードでは掃除の進め方を自分で設計します。AIスケジュール清掃モードでは、指示を出さなくても1週間分の計画を作って実行し、環境や生活リズムの変化に合わせて内容を組み替えます。

好みの伝え方も、その都度の音声でよくなりました。話しかけられた内容を理解したうえで、長く覚えておくべき好みなのか、その場限りの指示なのかを本体側が判断します。初期設定や軽いトラブルの対処も、手順を追って案内する役目を引き受けます。

走行と認識も更新されました。直径約7.6センチの駆動輪で高さ約2.5センチの段差を越え、連続する段差なら約4センチまで対応します。本体の高さは約9.8センチに収まり、家具の下へ入り込めます。障害物の判断はAIVI 3D 4.0が担当し、椅子の脚や台のように形のはっきりした対象へは近づいて端まで掃除し、ペットや配線のように危険な対象へは距離を取ります。端の掃除はTruEdge 3.0が受け持ち、エアクッションで浮かせたローラーを約2.6センチ伸ばして幅木の奥まで届かせます。

価格と発売時期

英国では9月9日にDEEBOT X12S OmniCycloneが1,199ポンド(約25万円)で発売されます。同じ日に、40,000パスカルの吸引力と厚さ95ミリの薄型設計を持つDEEBOT T90 MAX PRO OMNIが549ポンド(約12万円)、窓拭きロボットのWINBOT W2S PRO OMNIが529ポンド(約11万円)で並びます。27センチの自動洗浄ローラーを備えたDEEBOT T90S PRO OMNIは9月24日、699ポンド(約15万円)です。いずれもAmazonやArgos、Currys、Veryといった小売店を通じて販売されます。米国ではECOVACSの公式ストアで999.99ドル(約15万5,000円)の価格が付いています。

※為替レート(2026年9月4日時点):1英ポンド=211円、1米ドル=155円

ECOVACSはIFAの会場で、2027年に向けた製品も先に見せています。芝刈りロボットのGOAT T-Seriesと、プール清掃ロボットのULTRAMARINE L1 PROの2機種で、床から窓、庭、プールへと守備範囲を広げる方向がうかがえます。会期は9月8日までで、展示はホール9のブース113にあります。なお同社の製品は約180の市場、3,800万世帯で使われており、Forbes Asiaから家庭用ロボット分野の世界首位ブランドとして紹介されています。日本での取り扱いは、この記事の時点で発表されていません。

まとめ

DEEBOT X12S OmniCycloneは、紙パックという消耗品を基地局の設計そのもので不要にし、掃除の計画づくりまでAIに預けるという2つの引き算をまとめた製品です。27センチのローラーや53エアワットの吸引といった数字も伸びていますが、実際に効いてくるのは、ゴミ捨ての買い足しと「今日はどこを掃除させるか」を考える手間が減る部分でしょう。英国と米国が先行するため、国内での展開を待つ形になります。