AIデータセンターを手がける米Crusoeが、30億ドル(約4,700億円)を調達し、企業価値が300億ドル(約4兆7,000億円)に達したとBloombergが報じました。10か月前の調達時は100億ドルで、評価額は3倍に膨らんだ計算です。直前には金融のJane Streetと130億ドル規模のクラウド契約を結んだと伝えられており、今回の資金調達はその流れを受けたものとみられます。
※1ドル156円換算(2026年9月上旬時点)
10か月で評価額が3倍に
今回のラウンドはAtreides ManagementとValor Equity Partnersが共同で主導し、アブダビの政府系ファンドMubadala傘下の資産運用会社Mubadala Capitalも参加したと報じられています。
Crusoeが前回の調達を公表したのは2025年10月で、シリーズEとして13億8,000万ドル(約2,200億円)を集め、その時点の評価額は100億ドル(約1兆6,000億円)でした。そこから1年も経たずに3倍です。AI向けの計算資源を実際に建てて動かせる事業者が、それだけ品薄だということでもあります。
効いたのはJane Streetとの5年契約
評価額を押し上げた直接の材料として挙げられているのが、クオンツ取引で知られるJane Streetとの契約です。GPUとAI基盤を5年にわたって供給する内容で、規模はおよそ130億ドル(約2兆円)とされます。
顔ぶれとしては目を引く組み合わせです。これまでCrusoeの計算資源を使ってきたのはMeta、Microsoft、OpenAI、Oracleといった、AIモデルそのものを作る側の企業でした。そこに金融のトレーディング会社が同じ規模感で並んだことになります。学習用の大型クラスタを求める顧客層が、AI企業の外へ広がり始めている兆しと読むこともできそうです。
出発点はフレアガスのマイニングだった
Crusoeの設立は2018年で、当時の事業は油田で燃やして捨てられていた随伴ガス(フレアガス)を使った暗号資産マイニングでした。捨てられるエネルギーを計算に回すという発想はそのままに、対象を暗号資産からAIへ切り替えたのが今の姿です。
現在の主力は、ハイパースケール規模のデータセンター開発と、自社クラウドの提供です。同社は2026年6月時点で、データセンターとクラウドを合わせた契約済みのAI基盤容量が5ギガワットに近づいていると公表しています。3月にはMicrosoftのAI基盤を支える900メガワット級のキャンパスをテキサス州アビリーンに、7月には同州チルドレスでLancium社と1ギガワットのキャンパスを立ち上げると発表しました。
電力の手当てを自前で進める
AIデータセンターの制約は、いまや土地でも半導体でもなく電力です。Crusoeがこの1年で公表してきた提携も、そこに集中しています。
3月にはForm Energyと鉄空気電池12ギガワット時分の契約を、6月にはBergen Engines(Bergen Engines AS)と約750メガワットの発電設備に関する契約を結びました。7月にはON.energyと組んでデータセンター向けの無停電電源を5ギガワット規模で展開する計画を明らかにし、さらに小型原子炉を手がけるAalo Atomicsとは、原子力で動くAIファクトリーの実現を目指す提携を発表しています。発電と蓄電と冷却をまとめて抱え込む構えで、クラウド事業者というより電力会社に近い動き方です。
IPOの観測も出ている
資金調達と並行して、株式公開の観測も出ています。Axiosは8月、CrusoeがGoldman SachsやMorgan Stanleyを含む投資銀行と接触し、近い時期の上場について話し合ったと伝えました。ただしCrusoe自身が上場計画を公式に発表したわけではなく、現時点では報道の域を出ません。
まとめ
Crusoeは30億ドルを調達し、評価額は300億ドルに達したと報じられました。Jane Streetとの130億ドル規模の契約が直前にあり、10か月で評価額は3倍になっています。フレアガスのマイニングから始まった会社が、いまはギガワット単位の電力を押さえる側に回りました。AIの計算需要がどこまで伸びるかは読み切れませんが、少なくとも足元では、電力を確保できる事業者にお金が集中しています。
