Anthropicが米国時間7月7日、AI作業環境「Claude Cowork」のWeb版とモバイル版(iOS/Android)の提供開始を発表しました。これまでデスクトップアプリ専用だったCoworkが複数デバイスに広がり、パソコンで始めたタスクの進み具合をスマホから確認したり、端末をすべて閉じた状態でもAIが作業を続けたりできるようになります。ベータ版はMaxプランの利用者から順次展開され、対象プランは今後拡大される予定です。
端末を閉じてもタスクが走り続ける
今回のアップデートの柱は3つあります。1つ目はセッションのデバイス間同期です。デスクで開始した作業の途中経過を移動中にスマホでチェックし、完成した成果物を別の端末から取り出す、といった使い方ができます。
2つ目は、手元の端末が1台もオンラインでなくてもタスクが進むバックグラウンド実行です。作業はサーバー側で走るため、アプリを完全に閉じても処理は止まりません。実行時刻を指定したスケジュール実行にも対応しており、たとえば月曜朝6時に顧客ミーティングの準備を仕込んでおけば、Claudeがメールのやり取りや議事録、最近のニュースを整理してブリーフィング資料を組み立て、フォローアップメールの下書きまで済ませておいてくれます。利用者はコーヒーを飲みながら結果を確認するだけです。
3つ目は、人間の判断が必要な場面での確認通知です。Claudeが作業中に判断に迷うポイントに行き当たると、その質問がスマホに届きます。Anthropicは、利用者がレビューして承認するまで成果物が確定することはないと説明しており、自律的に動くAIに対して人間が最終決定権を持つ設計を強調しています。
ベータはMaxプランから、デスクトップ版が引き続き最上位
ベータ版は数週間かけてMaxプランの利用者から順次提供され、その後ほかのプランにも広がる計画です。なお、ローカルファイルやブラウザーへのアクセスといったフル機能を備えるのは引き続きデスクトップ版で、Web版とモバイル版はそれを補完する位置付けになります。とはいえ、会社のIT部門の方針でアプリのインストールが制限されている環境でも、Web版ならブラウザーから利用できるため、職場での導入ハードルは大きく下がりそうです。
あわせてインターフェースも整理され、WebとデスクトップではチャットとCoworkが1つのホーム画面に統合されました。プロジェクトや成果物は両モードをまたいで引き継がれます。また、利用促進策として、Coworkの利用上限を2倍にする措置が8月5日まで延長されています。
利用データが示す「仕事のまわりの仕事」
今回の発表にあわせて、Anthropicは興味深い利用実態も公開しました。5月11日から31日にかけて、60万を超える組織から抽出した約120万件の匿名化セッションを分類したところ、最も多かった用途はソフトウェア開発ではなく、業務プロセス・オペレーション系の作業で、全体の33.4パーセントを占めたそうです。散らばった進捗情報を1本のレポートにまとめる、オンボーディング用のチェックリストを作る、スプレッドシートを突き合わせる、といった作業がここに含まれます。
2位はドラフトやスライド資料、提案書などを作るコンテンツ作成・コピーライティングで16.4パーセント。この上位2カテゴリーだけで全体のほぼ半分に達します。一方、ソフトウェア開発はわずか8.7パーセントにとどまり、以下、DevOps・インフラが7パーセント、リサーチが6.4パーセント、データ分析が5.8パーセント、文書処理・抽出が4.1パーセント、営業関連業務が4パーセントと続きます。
Anthropicはこうした用途を「仕事のまわりの仕事(the work around the work)」と表現しています。ステータス報告の作成や資料の下ごしらえのように、誰の職務記述書にも明記されていないのに、あらゆる部署で発生してプロジェクトを前に進めるために欠かせない作業のことです。弁護士が法的判断は自分で行いつつ書類の整形をCoworkに任せる、採用担当者が面接フィードバックの集約をAIに任せて候補者との対話に時間を使う、といった例が紹介されており、専門性そのものではなく、その周辺の雑務をAIが引き受けるという構図が浮かび上がります。
まとめ
Claude CoworkのWeb・モバイル対応により、デスクトップに縛られていたAIエージェントが、デバイスを問わず作業を続けられる存在に進化しました。セッション同期、サーバー側でのバックグラウンド実行、スマホへの承認通知という3つの新機能は、いずれも「AIに任せて人間は確認する」という働き方を後押しするものです。利用データが示すように、Coworkの主戦場はコーディングではなく日常業務の下支えであり、エンジニア以外の働き手にとってもAIエージェントが身近になる一歩と言えそうです。ベータはMaxプランから順次提供中で、利用上限2倍の措置は8月5日まで延長されています。
