Anthropicが8月20日、Claude Platformのコンピュータ操作ツールを正式提供に切り替え、あわせて新しいブラウザ操作ツールを公開しました。同じタイミングでSkills APIとFiles APIも一般提供に移っています。スクリーンショットを見てクリックするだけだったエージェントが、ページの構造そのものを読んで要素を指定できるようになりました。APIを持たない業務システムの自動化に、また一歩近づいた形です。

座標を当てにいくのをやめた

コンピュータ操作ツールは、Claudeに画面のスクリーンショットを渡し、人がキーボードの前でやるのと同じようにクリック・入力・スクロールをさせる仕組みです。自動化を前提に作られていないアプリケーションでも動かせるのが強みでした。

今回追加されたブラウザ操作ツールは、この考え方をWebに寄せたものです。デスクトップ全体ではなくブラウザのビューポートの中だけを対象にし、識別子は browser_toolset_20260801 が与えられています。アプリケーション側が用意したブラウザをClaudeが操作する、クライアント側のツールセットという位置づけです。

決定的に違うのは、画面の見た目だけを頼りにしない点です。スクリーンショットに加えてページ自体を読み、アクセシビリティツリー、要素、フォーム、タブといった構造情報を受け取ります。その上で「画面のこの位置」ではなく「このフィールド」「このボタン」を名指しして操作します。要素の参照に加え、フォーム入力、タブの管理、ダウンロードの報告、そして明示的に許可した場合のみ有効になるファイルアップロードが用意されました。

ピクセルから座標を推定する方式は、レイアウトが少しずれただけで的を外します。構造を読めるようになったことで、そのもろさが減るという理屈です。

1ターンに複数アクション、医療分野の規制にも対応

正式版のコンピュータ操作ツールは computer_toolset_20260801 として提供され、ベータヘッダーの指定が不要になりました。

実務で効きそうなのは、1ターンに複数のアクションをまとめて実行できるようになった点です。従来はモデルを1回呼び出すごとに1アクションしか進められませんでした。往復が減れば、そのぶん所要時間もモデル呼び出しの回数も落ちます。拡大表示のzoomは既定で有効になり、configs を使えばツールごとに設定を分けられます。

対応モデルはClaude Fable 5、Claude Mythos 5、Claude Opus 5、Claude Sonnet 5、Claude Opus 4.8です。加えて、コンピュータ操作はBAA(事業提携契約)のもとでHIPAA規制の対象となるワークロードにも使えるようになりました。医療や保険の現場でエージェントを走らせたい事業者にとっては、ここが実装可否の分かれ目になります。

既存のベータ版の統合はそのまま動き続けるため、移行は自分のペースで進められます。ただしリクエストの形とツールの扱い方は変わるので、そのままヘッダーだけ外して済む話ではありません。

スキルとファイルを外に置く

同時に正式版となったSkills APIとFiles APIは、エージェントに「自社のやり方」と「自社の書類」を持たせるための仕組みです。

スキルは、指示・スクリプト・テンプレートをまとめたフォルダで、タスクがそれを必要としたときにだけ読み込まれます。Skills APIは /v1/skills で提供され、自作のスキルをアップロードしてバージョン管理し、任意のリクエストに紐づけられます。実行はClaude側のコード実行サンドボックスで行われるため、利用者が実行環境を用意する必要はありません。

Files APIは、エージェントが読み書きする書類の置き場です。PDFや表計算を一度アップロードしておけば、以降はIDで参照するだけで済み、毎回本文を送り直さずに済みます。正式版では自動的な有効期限の設定が加わり、レート上限は5倍、保存容量は組織あたり1TBに引き上げられました。

提供先も広がっています。Skills APIとFiles APIはMicrosoft Foundry経由でも利用でき、更新されたコンピュータ操作とブラウザ操作はGoogle CloudのVertex AIに近く提供されるとしています。

32分の処理が13分になった事例

Anthropicは導入事例として、医療・保険領域でエージェントを運用するAsteroidの数字を挙げています。同社のResearch EngineerであるDavide Locatelli氏によれば、最も長いクレーム処理のワークフローは32分から13分へ短縮され、検証したすべてのワークフローでタスクあたりのコストが約30パーセント下がり、完了率は100パーセントに達したとのことです。しかもプロンプトには手を入れていないとしています。

APIを持たない基幹システムを画面越しに操作せざるを得ない現場では、往復の削減がそのまま所要時間に跳ね返ります。この数字は、1ターン複数アクションの効き方を素直に示していると言えそうです。

Skills API側では、Boxが銀行向けの用途を挙げています。同社のManaging Director of BankingであるMatthew Midson氏は、与信の考え方と承認済みのメモ書式をスキルとして固め、Box内にある財務諸表や案件書類に適用して、アナリストのレビュー用に根拠付きの与信メモを生成させる例を紹介しています。ワークフローごとに一から作らずに済む、という整理です。

まとめ

コンピュータ操作、ブラウザ操作、Skills API、Files APIがClaude Platformで正式提供に入りました。新登場のブラウザ操作ツールはページの構造を読んで要素を名指しできるため、座標推定に頼る従来の弱点が薄まります。コンピュータ操作は1ターンに複数アクションを実行でき、HIPAA規制のワークロードにも対応しました。実際の導入では処理時間が半分以下、コストが約3割減という報告も出ています。