パリを拠点とするスマートリングメーカーCircularが2026年9月3日、ベルリンで開幕したIFA 2026に合わせて次世代機「Circular Ring 3 Pro」と「Circular Ring 3 Slim」を発表しました。2機種に共通する目玉は、NFCによる非接触決済と、指の上で震えて知らせるバイブレーションを初めて同時に載せたことです。上位のProには心電図(ECG)や血圧の傾向表示、非侵襲の血糖インサイトが入り、電池持ちは最長12日に伸びました。予約受付は2026年12月に始まり、価格もその時点で公表される予定です。出荷は2027年初頭が見込まれています。
健康計測と決済を1つのリングに載せる
スマートリングは各社が健康計測を競ってきた領域ですが、決済機能まで組み込んだ製品はこれまで限られていました。Circularの共同創業者でCEOのAmaury Kosman氏は、決済は大手リングメーカーがいずれも狙ってきた機能だとしたうえで、健康計測と決済を1つのリングで両立させたのは自社が世界で初めてだと認識している、と述べています。
決済はNFCを使った非接触方式で、VisaとMastercardのカードに対応します。スマートフォンやスマートウォッチのタッチ決済と同じ仕組みを、指輪の側面で行うイメージです。ただし、どの国や地域のどの銀行・カード発行会社で使えるかといった細かな対応範囲はまだ示されておらず、日本国内での決済対応や販売についても現時点で発表はありません。
バイブレーションについては、前モデルのRing 2でいったん省かれた機能が復活した形です。Kosman氏は、Ring 2の開発時点では新たに加えた心電図の回路と振動モーターを同居させる技術がなかったと説明し、利用者からの要望を受けてRing 3で両立にこぎつけたとしています。振動は音を出さずに起こす目覚まし、服薬のリマインダー、心拍数や心拍リズムが普段の範囲を外れたときの通知、呼吸法のガイドなどに使われます。血圧や血糖の変化を指先の振動で受け取れる点は、通知をスマートフォンや腕時計の画面に頼る他社製品との違いになりそうです。
Ring 3 Pro:心電図と血圧トレンド、非侵襲の血糖インサイトまで
Ring 3 Proは、幅6.8mm、厚さ2.78mm、重さはサイズにより3〜4gです。現行のRing 2の幅7.8mmと比べると約1mm細くなった一方、厚さは2.78mmとRing 2の2.65mmよりわずかに増えています。Kosman氏はProのサイズ感をRing 2とほぼ同じだと説明しています。外観のデザインはRing 2の流れを引き継いでいます。センサー面では心拍数、心拍変動(HRV)、血中酸素(SpO2)、皮膚温、睡眠、活動量といった基本項目に加え、単一誘導の心電図を搭載します。心房細動(AFib)の兆候を検出するECGソフトウェアは米FDAの認可を受けているとCircularは説明しています。
さらにProには、血圧の傾向表示と、光学センサーから推定する非侵襲の血糖インサイトが入ります。Circularはこの血糖インサイトを健康管理向けのウェルネス情報と位置づけており、診断や治療に使うものではないとしています。アプリ内でどのような形で数値や傾向が表示されるかはまだ明らかにされていません。
もう1つの大きな改良が電池です。Ring 2の最長7日から、Ring 3 Proでは最長12日に伸びました。充電は無線方式で、充電ケースを併用すればさらに5〜6回ぶんの充電を持ち歩けるとされています。
Ring 3 Slim:心電図を省いて薄さと軽さを優先
Ring 3 Slimは、幅5.9mm、厚さ2.35mm、重さはサイズにより1.9〜3gと、Proより一段小さく軽い設計です。Kosman氏は、機能を詰め込むほどリングは大きくなるが市場はより細身の形を求めていると述べ、Slimではリングを大きくする唯一の要因だった心電図だけを省いたと説明しています。振動、NFC決済、心拍数や睡眠などの基本的な健康計測は残しています。血圧の傾向表示はPro専用ですが、Circularの比較表では血糖の傾向推定はSlimにも記載されています。電池持ちは最長10日で、こちらもRing 2より長くなっています。
比較対象になるのは、今年発売されたOura Ring 5です。Oura Ring 5の幅は約6.09mm、厚さは約2.28mmで、Ring 3 Slimはこれに近い寸法に収まっています。細身のジュエリーに見せながら健康計測を続けるという方向性は、スマートリング各社の共通の流れになっており、Circularもそこに合わせてきたと言えます。
2機種の共通仕様と料金の考え方
2機種はいずれもチタン系の金属ボディで、5ATM(水深50m相当)の防水に対応します。サイズは米国規格の6〜14号、カラーはゴールド、シルバー、ローズゴールド、ブラックの4色で、これはRing 2と同じ展開です。アプリはiOSとAndroidに対応し、計測データはアプリ内のAIアシスタント「Kira」が平易な言葉で解説します。
料金体系については、Kosman氏が本体の基本機能はこれまで通りサブスクリプションなしで使えると明言しています。一方で、新たに加わる血圧と血糖の機能は、利用者が任意で加入する有料サブスクリプションの対象になります。サブスクリプションの具体的な条件は、12月の予約開始時に価格と合わせて公表される見込みです。参考として、現行のRing 2は公式サイトで299ドル(約4万6,000円)で販売されており、こちらも強制的な月額課金はありません。※1ドル155円換算
競合と、残る課題
2026年はスマートリング市場の競争が一気に激しくなった年です。Oura Ring 5とRingConn Gen 3が相次いで登場し、SAMSUNGもGalaxy Ring 2の投入を認めています。Ouraは血糖の把握にDexcomの別売センサーを組み合わせる方式を採り、RingConn Gen 3は振動通知を備えるなど、各社が部分的に似た機能を持ちますが、決済・振動・心電図・血糖インサイトを1つのリングにまとめた製品はまだ見当たりません。
一方で、Circularには乗り越えるべき課題もあります。海外メディアによるRing 2のレビューでは、ハードウェアより先にアプリの同期の安定性や機能の完成度が指摘されており、Ring 3ではソフトウェア面の改善が評価を左右しそうです。また、カフを使わず光学センサーから血圧の変化を捉える技術は、Appleが腕時計で高血圧の兆候通知を始めるなど、大手でもようやく実用段階に入ったところです。リング型でどこまで信頼できる傾向が得られるかは、実機が出てから検証されることになります。予約開始は12月、出荷は2027年初頭と、手元に届くまでにはまだ時間があります。
まとめ
CircularがIFA 2026で発表したRing 3 ProとRing 3 Slimは、NFC決済とバイブレーションを共通で備え、Proには心電図、血圧トレンド、非侵襲の血糖インサイトが加わったスマートリングです。電池持ちはProが最長12日、Slimが最長10日で、前モデルの7日から大きく伸びました。本体の基本機能はサブスクリプション不要ですが、血圧と血糖の機能は任意の有料サブスクリプションになります。予約受付と価格発表は2026年12月、出荷は2027年初頭の予定で、日本での展開は現時点で未発表です。
