米ニューヨーク州ロチェスターのCasanaが、家庭用の便座型バイタルモニター「Smart Seat」を発売しました。既存の便座と交換して座るだけで、心拍数や血中酸素飽和度、血圧の傾向などを記録します。身に着けるものも充電するものもなく、価格は初年度のサービス込みで199ドル(約3万3000円)です。

※1ドル=約164円換算(2026年7月24日時点)

座るだけで測れる項目

Smart Seatが記録するのは、心拍数、心拍変動、血中酸素飽和度(SpO2)、呼吸数、血圧のトレンド、そして立ち上がるときの力を見るSit-to-Stand Powerです。座ってから2分以内に読み取りが終わり、専用アプリ「Smart Seat Companion App」に日々の変化が並びます。

数値は絶対値の良し悪しではなく、利用者自身の平常値を基準にしたトレンドとして表示されます。普段と違う動きが出たときに知らせる、という設計です。Casanaは毎日使う必要はなく、週に数回座れば傾向はつかめるとしています。

スマートウォッチやスマートリングとの一番の違いは、利用者側が何も意識しなくてよい点でしょう。手首に巻き忘れることも、寝る前に充電を思い出すこともありません。習慣を変えなくてもデータがたまるという発想が、この製品の中心にあります。

3種類のセンサーを便座に埋め込む

便座の内部には3種類のセンサーが組み込まれています。単一誘導の心電図(ECG)、光の反射で血流を捉える光電容積脈波(PPG)、そしてロードセルから得る心臓の振動波形(BCG)です。この3つを組み合わせることで、腕帯やクリップを使わずに複数のバイタルを推定します。

カメラとマイクは搭載していません。取得したデータは暗号化され、家族や医師と共有するかどうかは利用者が選べます。生体情報から個人を識別する仕組みを備えており、1台で最大5人までを自動で見分けます。

電池は2年もつ設計で、取り付けは数分で終わるとしています。Wi-Fiに接続してアプリと連携する形です。

価格と提供条件

価格は199ドルで、本体と初年度のサービス利用料が含まれます。送料は無料、保証は1年、30日間の返金保証が付きます。2年目以降はサービスが月額課金に移行し、公式サイトでは月9.99ドル(約1,600円)と案内されています。発表時のプレスリリースでは月約19.99ドル(約3,300円)と記載されていたため、料金は発売にあわせて見直されたとみられます。7月の発売分は数量限定です。

取り付けは米国で標準的な2ボルト式で、対応するのは細長い形状(elongated)の便器のみです。日本国内での販売は現時点で案内されていません。

注意点もあります。Smart Seatはあくまで一般的な健康状態を見るウェルネス機器で、診断や治療を目的とした医療機器ではありません。Casanaは、妊娠中の人、18歳未満、体重が90ポンド(約41kg)未満または350ポンド(約159kg)超の人、持続性の不整脈がある人、ペースメーカーを使用している人については、対象として想定していない、あるいは検証していないとしています。

10年以上の研究から生まれた製品

Casanaは10年以上前、創業者のNick Conn氏がロチェスター工科大学(RIT)で博士研究に取り組んでいた時期に始まりました。同社によると、これまでに5,000人を超える被験者を対象とした臨床研究を積み上げ、20件以上の特許を出願しています。今回のSmart Seatは、動脈ラインを用いた研究で精度を検証したとしています。

同社は2023年に、心拍数とSpO2を測る「Heart Seat」を投入していました。今回はそこから測定項目を広げ、一般消費者向けに価格を下げた形です。Casanaは、2026年1月に米食品医薬品局(FDA)が低リスク機器について示した新しいガイダンスが、家庭でのウェルネス目的のバイタル測定に明確な規制上の余地をもたらしたと説明しています。

出資者にはGeneral Catalyst、Matrix、Morningside、Outsiders、Kaiser Permanente、そして便座で世界最大手のBemisが名を連ねます。製造はロチェスターで行われ、CEOのOlivia Lew氏は「10年以上かけて、利用者に何も求めない製品を作った」と述べています。

高齢の家族の様子を離れて見守りたい、という需要は日本でも小さくありません。毎日必ず使う場所に測定機能を潜り込ませるという着眼点は、ウェアラブルが取りこぼしてきた層に届く可能性があります。

まとめ

Casanaの「Smart Seat」は、便座を交換するだけで心拍数や血中酸素飽和度、血圧トレンドなどを記録する家庭用のウェルネス機器です。ECG・PPG・BCGの3センサーを内蔵し、座ってから2分以内に測定を終え、最大5人を自動識別します。価格は初年度サービス込みで199ドル、2年目以降は公式サイトの案内で月9.99ドルです。細長い便器と米国標準の取り付け方式が前提で、国内販売は未定ですが、身に着けない健康管理という方向性は今後の家庭内ヘルスケアの一つの形になりそうです。