Arduino Nanoシリーズの新世代モデル「Arduino Nano R4」が、秋月電子通商など国内の店頭でも手に入りやすくなっています。UNO R4と同じルネサス エレクトロニクス製マイコン「RA4M1」を搭載し、メモリは大幅に増量。USB Type-CコネクターやQwiicコネクターも備え、基板そのものの設計も現代的に生まれ変わりました。本記事では従来Nanoからの進化点と、購入前に知っておきたい注意点を整理します。
8ビットから32ビットへ マイコンとメモリを刷新
最大の変更点はマイコンの刷新です。従来のNano(R3世代)が搭載していた8ビットマイコン「ATmega328P」に代わり、Nano R4にはルネサス エレクトロニクス製の32ビットマイコン「RA4M1」(R7FA4M1AB3CFM)が採用されました。48MHz駆動のArm Cortex-M4コアは浮動小数点演算ユニット(FPU)を内蔵しており、演算性能は8ビット世代から飛躍的に向上しています[2]。
メモリ容量の増加も劇的です。フラッシュメモリは32kBから256kBへ8倍、SRAMは2kBから32kBへ16倍に拡大し、データ保存用に8kBのEEPROMも利用できます[2]。サイズの大きなライブラリや、画像・音声バッファのような大きな配列を扱う処理も余裕を持ってこなせるようになりました。
RA4M1はArduino UNO R4シリーズで使われているものと同じマイコンです。動作電圧も従来Nanoと同じ5Vに揃えられているため、UNO R4向けに書かれたコード資産や、5V前提で設計された既存のNano用アクセサリー・回路をそのまま生かしやすい構成になっています[2]。
USB Type-CとQwiicを搭載 基板は端面スルーホールに
物理的な仕様も大きく変わりました。USB端子は従来のMini-BからUSB Type-Cに変更され、ケーブルの調達やスマートフォンとの共用が容易になりました。さらに基板下端には3.3V駆動のQwiicコネクターを新搭載。市販のQwiic対応センサーやArduino純正のModulinoシリーズを、はんだ付けなしでつなげられます[2]。
基板は約18mm×45mmのNanoサイズを維持しつつ、部品をすべて片面に実装し、ピン穴を「端面スルーホール(キャステレーション)」とした設計が特徴です。ブレッドボードでの試作にピンヘッダーを使えるのはもちろん、表面実装部品のように自作基板へ直接リフローはんだ付けすることもでき、試作から小規模な製品化までを1枚でカバーできます[2]。電源入力(VIN)は6〜21Vと広く、降圧回路を別途用意せずに12V系の機器へ組み込めるのも便利な点です[2]。
なお、秋月電子通商で2,620円(税込)で販売されているモデル(販売コード:131210)はピンヘッダーが付属するものの未実装です。はんだ付けを避けたい場合は、ピンヘッダー実装済みバージョン(販売コード:131211、2,860円)も用意されています[1]。
DAC・オペアンプ・CANも追加 ただし8mA制限と価格には注意
新機能として、A0ピンに接続された12ビットDAC(DAコンバーター)、A1〜A3ピンで使えるオペアンプ、外部トランシーバーと組み合わせて使うCAN通信が加わりました。ADCも最大14ビット分解能に強化され、電池バックアップ(VBATTピン)に対応したリアルタイムクロック(RTC)も内蔵しています[2]。アナログ信号の生成や増幅、車載系で使われるCANバスの実験など、従来は外付け回路が必要だった用途にボード単体で踏み込めるようになりました。
一方で注意したいのがI/Oピンの出力電流です。RA4M1のGPIOが流せる電流は1ピンあたり最大8mAで、20mA程度を目安にできた従来の8ビット世代より小さくなっています。LEDやリレーなど電流を必要とする部品を直結する設計は危険で、トランジスタやMOSFETなどの電流増幅を介して駆動するのが基本になります[2]。公式データシートも、8mAを超えるデバイスを直接接続しないよう明記しています。
価格についても触れておきます。国内ではスイッチサイエンスが2025年7月24日に販売を開始し、秋月電子通商でも同年7月25日から取り扱いが始まりました[1][3]。秋月では2025年12月に2,480円から2,620円へ改定されています[1]。ATmega328Pを搭載したNano互換ボードが数百円で入手できることを考えると、価格の高さは否めません。8ビットで足りる用途なら互換機に分があり、Nano R4が生きるのは、演算性能・メモリ・新搭載のアナログ機能が必要な場面や、正規品の品質と供給安定性を重視する場面と言えるでしょう。
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まとめ
Arduino Nano R4は、32ビット化と256kB/32kBへのメモリ増量、USB Type-C・Qwiic・端面スルーホールという現代的な基板設計、DAC・オペアンプ・CANの追加によって、従来Nanoの「上位互換」と呼べる内容に仕上がっています。一方で、I/Oピンの出力電流は8mAへと小さくなっており、8ビット世代の感覚で周辺回路を組むと思わぬトラブルの原因になります。数百円の互換機と比べれば高価ですが、計算能力やメモリが効くプロジェクトでは有力な選択肢になりそうです。
出典:https://akizukidenshi.com/catalog/g/g131210/
出典:https://docs.arduino.cc/resources/datasheets/ABX00142-datasheet.pdf
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000209.000064534.html
