Appleは、Apple Intelligenceを基盤とする新世代のSiri「Siri AI」を発表しましたが、欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)への対応で折り合いがつかず、iOS 27とiPadOS 27では、EU域内へのSiri AIの提供を当面見送ると明らかにしました[1]。EU域内ではmacOS 27とvisionOS 27で引き続きSiri AIが提供される一方、iPhone(iOS 27)とiPad(iPadOS 27)に加え、Apple Watch(watchOS 27)でも利用できなくなります[1]。

EUのiPhone・iPadで「Siri AI」がお預けに

Siri AIは、Apple Intelligenceを活用した会話能力の高い新世代のアシスタントです。メッセージやEメール、写真を横断した情報の検索、幅広いトピックへの回答、アプリ上でのアクション実行などに対応します[1]。今回のアナウンスではっきりしたのは、EU域内のiPhone(iOS 27)とiPad(iPadOS 27)では、年内のリリース開始時点でSiri AIを利用できないという点です[1]。

使えなくなるのは、会話の履歴を確認できる専用アプリ、拡張されたビジュアルインテリジェンス、作文のための統合ツール、カメラアプリのSiriモードなど、WWDC26で披露されたSiri AI関連の機能全般です[1]。一方で、同じEU域内でもmacOS 27とvisionOS 27ではSiri AIが提供されます。watchOS 27でSiri AIを使うにはSiri AIを有効にしたiPhoneとのペアリングが必要なため、EU域内ではwatchOS 27でもSiri AIを利用できません[1]。また、EU域内に拠点を置く開発者は、iOS 27・iPadOS 27・watchOS 27向けのSiri AI機能をテストしたり利用したりできなくなります[1]。

Appleが説明する延期の理由

Appleは延期の背景として、DMAに基づく規制当局の要求が、かえってユーザーの安全を脅かすと判断したことを挙げています[1]。同社の説明によると、規制当局の解釈では、Siri AIの提供と同時に、あらゆるバーチャルアシスタントに対して、ユーザーのプライベートデータへの直接アクセスや、インストール済みアプリの制御といった機能を、必要な保護の仕組みなしで開放しなければならなくなるといいます[1]。

こうした無制限に近いアクセスをAIに与えると、AIシステムが乗っ取られた際にパスワードや写真などの個人データが盗まれたり、ユーザーの同意なしに設定が書き換えられたりするリスクがある、とAppleは指摘します。セキュリティ研究者によってこうした手口がすでに実証されているとも述べています[1]。

その対応策として、AppleはほかのアシスタントがSiri AIと同等の機能へ安全にアクセスできるようにする仲介の仕組み「Trusted System Agent」を設計し、18 か月かけて段階的に展開しながらEUでSiri AIを提供する計画を提案したとしています。しかし欧州委員会はこれを受け入れず、Appleが示したどの提案にも同意しなかったと説明しています[1]。ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのクレイグ・フェデリギ氏は、EUのユーザーにSiri AIを届けられないことは非常に残念だとしたうえで、前進に向けて規制当局との協力を続けたいとコメントしています[1]。

そもそもデジタル市場法(DMA)とは

デジタル市場法は、巨大IT企業が市場で持つ強い影響力を抑え、競争を促すことを狙ったEUの規制です。一定規模以上のプラットフォーム事業者を「ゲートキーパー」に指定し、自社サービスの優遇の禁止や、競合する他社サービスとの相互運用(インターオペラビリティ)の確保などを義務づけています。利用者がサービスを自由に選べる状態を保ち、新規参入の事業者にも公平な機会を開くことが、その狙いとされています。

今回の対立点も、まさにこの相互運用の考え方にあります。規制当局の側は、特定の機能を自社だけが使える状態を避け、他社のアシスタントにも同等のアクセスを開くべきだという立場とみられます。これに対しAppleは、その開放のしかたが行きすぎており、結果として利用者の安全を損なうと反論しています。同じ法律をめぐって、競争の公平性を重んじる規制当局と、プライバシーとセキュリティを前面に出すAppleとで、評価が真っ向から食い違っている構図です。

ユーザーへの影響と今後

今回の延期で直接影響を受けるのは、EU加盟27 か国でiPhoneやiPadを使うユーザーです[1]。これらの国では、年内にiOS 27とiPadOS 27が配信されても、目玉機能であるSiri AIは当面使えないことになります。MacやApple Vision ProではSiri AIが利用できるため、複数のデバイスをまたいで使う人にとっては、対応状況がそろわない使いにくさも出てきそうです。

Appleは、安全に提供できる方法を引き続き探るとしながらも、現時点ではiOSとiPadOSでEUにSiri AIを提供する目処は立っていないとしています[1]。規制と安全性の線引きをめぐる対立が解けない限り、EUのiPhoneユーザーがSiri AIに触れられる時期は見通せません。なお、日本を含むEU域外では発表どおりの提供が見込まれ、地域によって体験に差が生まれることになります。

まとめ

Appleは新しいSiri AIを発表する一方で、DMAをめぐる規制当局との対立から、EU域内のiOS 27とiPadOS 27では当面その提供を見送ることになりました[1]。Appleは安全性を理由に掲げ、欧州委員会は競争環境の整備を重視しており、両者の主張はかみ合っていません。新機能をどう進化させるかだけでなく、それをどんなルールのもとで届けるのかという問いを、改めて突きつけた一件と言えそうです。

出典:https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/06/due-to-dma-siri-ai-delayed-in-eu-for-ios-27-and-ipados-27/