Claudeを開発するAnthropicが、評価額2兆ドル超を視野に新規株式公開の準備を進めていると報じられています。調達規模はSpaceXが記録した史上最大のIPOに並ぶか、それを上回る見通しとされ、正式な届出は8月末にも行われる可能性があります。5年前に設立された企業が、公開市場で史上最大の値付けを求めることになります。

※1ドル159円換算(2026年8月21日時点)

SpaceXの記録を超えるかどうかが焦点

Bloombergは関係者の話として、Anthropicが自社のIPO規模をSpaceXの水準に合わせるか、それを超える形で設計していると伝えました。SpaceXは初回の株式売出しで750億ドル(約11兆9,000億円)を調達し、追加売出しのオーバーアロットメントを行使した後の総額は862億ドル(約13兆7,000億円)に達しています。これが現時点で記録に残る最大のIPOです。

評価額の目標として語られているのが2兆ドル(約318兆円)という数字です。関係者の想定にはさらに上振れするシナリオもあるとされ、Financial Timesは3兆ドル(約477兆円)に届く試算にも触れています。市場環境次第で内容は変わりうるとされており、現時点では確定した条件ではありません。

同社は6月にForm S-1の登録届出書を非公開でSECへ提出したことを自ら公表しています。当時の想定評価額は1兆ドル(約159兆円)近くでした。わずか2カ月ほどで、狙う水準が倍になった計算です。

売上10兆円ペースと、4兆円を超える赤字

この評価額を支えているのは売上の伸びです。第2四半期の暫定売上高は115億ドル(約1兆8,000億円)を超え、前年同期の7億8,700万ドル(約1,250億円)から10倍以上に膨らみました。7月末時点の年換算売上高は650億ドル(約10兆3,000億円)に達しています。

一方で、フロンティアモデルを開発し続けるコストは相応に重くのしかかっています。2025年通期の純損失は約420億ドル(約6兆7,000億円)で、前年の83億ドル(約1兆3,000億円)からおよそ5倍に拡大しました。ただし第2四半期には調整後の営業利益が黒字に転じており、売上が積み上がれば採算が改善する余地はあるという見方につながっています。

資金調達の履歴も派手です。同社は5月に9,650億ドル(約153兆円)の評価額で650億ドル(約10兆3,000億円)を調達しました。3月に1,220億ドル(約19兆4,000億円)を調達して8,520億ドル(約135兆円)と評価されたOpenAIを、この時点で上回っています。

主幹事と、創業者の議決権をどう残すか

引受にはMorgan Stanley、Goldman Sachs、JPMorgan Chaseが関わっているとされ、参加する金融機関はさらに増える可能性があります。公開申請の前には、100億ドル(約1兆6,000億円)規模を目標としていたリボルビング・クレジット・ファシリティを、目標を上回る水準で確定させる見込みです。

注目されているのが議決権の設計です。同社はCEOのDario Amodei氏と共同創業者に強い議決権を与える種類株の導入を検討していると伝えられています。Amodei氏の持ち分はおよそ2パーセントとされており、持ち株比率だけでは上場後の経営の主導権を保てません。安全性の方針や開発ペースを外部株主の圧力から切り離しておきたいのであれば、議決権の設計は避けて通れない論点になります。

公開市場が値付けするのは「これから」の部分

生成AIの盛り上がりが続いた数年間、モデルを開発する企業そのものに投資できるのは未公開株の世界に限られていました。Anthropicの上場は、その扉を公開市場の投資家に開くことになります。

同社は今後3年で数百億ドル規模になりうる計算資源の契約をSpaceXと結んでいるとされ、必要な資本の桁は年々上がっています。チップ、データセンター、電力を確保し続けるには、上場による資金調達は財務上の選択肢というより前提条件に近づいています。

米国のIPO市場そのものも記録的な年になっています。8月19日までの調達総額は1,606億ドル(約25兆5,000億円)に達し、2021年に記録した1,952億ドル(約31兆円)に迫っています。SpaceXを超える規模の案件が1件加わるだけで、この記録は塗り替わる計算です。

なお、OpenAIは2027年の上場を検討していると報じられており、両社ともすでに非公開での申請を済ませています。先に公開市場の評価を受けるのがどちらになるかで、業界の見え方は変わってきます。

2兆ドルという数字が問うのは、Claudeが今上げている売上ではありません。これから広がるAI経済のうち、どれだけをAnthropicが取り込めるのか。その見立てに公開市場が値段を付けられるかどうかが、この案件の本質だと言えます。

まとめ

Anthropicは評価額2兆ドル超を視野に、SpaceXの記録を超える規模のIPOを準備していると報じられました。年換算売上高650億ドルという急成長の裏で2025年には約420億ドルの純損失を計上しており、収益性はこれからの課題です。正式な届出は8月末にも行われる可能性があり、市場環境次第で条件は動きます。公開市場がAIの将来にどこまで値を付けるのか、その試金石になりそうです。